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終わらないウクライナ侵攻のウラで、世界第4位の「武器大国」をねらう、韓国・ユン大統領の「虎視眈々」…「東西の武器庫」と化した朝鮮半島/現代ビジネス
池畑 修平 によるストーリー
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E7%B5%82%E3%82%8F%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E4%BE%B5%E6%94%BB%E3%81%AE%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%81%A7-%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%AC%AC4%E4%BD%8D%E3%81%AE-%E6%AD%A6%E5%99%A8%E5%A4%A7%E5%9B%BD-%E3%82%92%E3%81%AD%E3%82%89%E3%81%86-%E9%9F%93%E5%9B%BD-%E3%83%A6%E3%83%B3%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E3%81%AE-%E8%99%8E%E8%A6%96%E7%9C%88%E3%80%85-%E6%9D%B1%E8%A5%BF%E3%81%AE%E6%AD%A6%E5%99%A8%E5%BA%AB-%E3%81%A8%E5%8C%96%E3%81%97%E3%81%9F%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E5%8D%8A%E5%B3%B6/ar-AA1k6RzY?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=724dfd98ca994a4e9e0c61680ac7aa6e&ei=16
294億ドルの商談規模
10月下旬、韓国・ソウル近郊にある軍用空港で開催された「ソウルADEX」を取材した。隔年で開かれる韓国最大の航空宇宙・防衛産業展示会だ。
滑走路には戦闘機をはじめ、軍用ヘリコプター、戦車、自走砲、ミサイルなどがズラリと並び、屋内のブースでは韓国の防衛装備品メーカーが派手な演出で自社の最新兵器類を展示していた。
韓国軍将校や国防省当局者はもちろん、在韓米軍兵士たちや様々な国の軍幹部ら、それに欧米の防衛産業関係者などで会場内はどこもごった返していた。
私自身は初めて訪れたので過去のADEXとの比較ができなかったのだが、韓国の防衛産業に詳しいキャノングローバル戦略研究所の伊藤弘太郎主任研究員は「以前より格段に参加者が多く、熱気に驚きました」と話す。
前回の2021年はコロナ禍ということに加えて、文在寅政権が北朝鮮を刺激したくないからと在韓米軍のプレゼンスをできるだけ抑えたため、盛り上がりに欠けていたという。それが、今回は米韓同盟を非常に重視する尹錫悦政権なだけに、在韓米軍の装備がかなり集結することになり、それも会場を盛り上げていたと伊藤氏は指摘する。
時おり、韓国空軍が誇るアクロバット飛行隊「ブラックイーグルス」の曲芸飛行などジェット戦闘機が空中から噴き出す轟音が響く中、ブースの随所では防衛装備品の商談が行われた。
主催者のまとめでは、今回の参加企業は35の国や地域の550社。前回の28の国・地域、440社からかなりの増加だ。そして、6日間の会期中、受注商談の規模は294億ドル(約4兆4000億円)、実際にまとまった契約は総額で60億ドル(約9000億円)を超えたという。こちらも前回を大きく上回る。
韓国の防衛装備品の開発業界、通称「K防衛産業」は、活況を呈しているのだ。
完全に逆転した、南北間の「軍事バランス」
「ソウルADEX」の盛り上がりは、しかし、韓国が滅亡する瀬戸際まで追い込まれた痛恨に原点がある。1950年に勃発した朝鮮戦争だ。
朝鮮半島が荒土と化すことになった背景には、南北間の圧倒的な戦力差があった。当時、北朝鮮はソ連から提供されたT−34戦車などで強大な火力を有していたのに対し、アメリカは韓国に兵器らしい兵器をほとんど渡していなかった。その戦力差が、金日成に「今なら勝てる」と思わせたのだ。「侵攻への誘惑」といえる。
歴史に「もし」はない、というのは常套句だが、個人的には「もし」を想像することで教訓が見えるようにも思える。
もし1950年当時、アメリカがそれなりの戦力を韓国に供与していたなら、金日成が南侵を躊躇した可能性は高い。そこから得られる教訓は「戦力バランスが大きく一方に偏っている状態は戦争を誘発する」であり、裏返せば「双方で抑止力が均衡していると戦争は起きにくくなる」ということ。
朝鮮戦争で国がなくなる寸前まで追い込まれた韓国は、1953年の休戦後、いかに軍事力を高めるかが至上命題となった。
朴正煕大統領が強い反対論を押し切って日本との国交正常化に踏み切り、それによって得られた経済援助を土台に国力を高めた中で、日本との協力で製鉄所が建設されたのは、韓国が自ら兵器を製造するうえで大きな役割を果たした。
今や、通常戦力において南北間の軍事バランスは完全に逆転した。ADEXでも韓国の半導体産業をフルに活用した最新兵器が並び、どの開発担当者に話を聞いても「世界に通じる性能です」と自信に満ちた答えが返ってきた。
そこに在韓米軍の戦力が合わさっているわけで、北朝鮮は通常戦力では歯が立たない。だからこそ、北朝鮮は核開発に突っ走ったともいえる。「戦力バランスが大きく一方に偏っている状態は戦争を誘発する」のは、1950年に攻めこんだ自分たちが一番よく知っているのだ。
もちろん、米韓に北朝鮮を侵略する意図はないが、北朝鮮が再び「妙な考え」を抱かないようにするため、韓国の防衛産業は技術革新に余念がない。
キーワードは「無人」と「ドローンキラー」
今回の各種展示から見えてきた「K防衛産業」のポイントを、前出の伊藤氏は2つほどあげる。無人での走行・飛行・航行と、ドローンの脅威を無力化する技術の進展だ。
確かに、多くの企業がスクリーンに映し出していた将来の戦場イメージでは、無人の兵器や移動手段が所狭しと動き回っていた。離島など足場が悪い環境を想定した無人の装甲車や兵員輸送車は実物が展示され、また、将来に向けたコンセプトモデルの中にはドローンなどの無人機専用の空母までもあった。
有人の兵器システムに無人のシステムを組み合わせて運用するコンセプトの構築に韓国はいち早く乗り出している。
こうした有人と無人の組み合わせに関して、韓国軍は自衛隊の数年先をいっていると伊藤氏は指摘する。
一方、「ドローンキラー」とは簡単にいえば、妨害電波を出すなどしてドローンの飛行を狂わせる機器類を備えた兵器だ。今回、戦車や装甲車の上部にそうした機器を備えたタイプが目立つ場所に展示され、担当者たちは戦場の「ゲームチェンジャー」と呼ばれるドローンを無力化できるとアピールしていた。
実は、こちらはやや韓国軍の「失態」に依るところが大きい。昨年12月、北朝鮮からドローン5機が軍事境界線を越えて韓国上空に侵入した。
韓国軍は戦闘機にヘリを飛ばして射撃を繰り広げたものの、撃墜できずに取り逃がしてしまったのだ。5機のうち1機はソウルのすぐ近くまで飛行し、仁川と金浦の両空港では離発着が1時間停止するという騒ぎに発展。
報告を受けた尹錫悦大統領は激怒し、抜本的な対応策をまとめろと指示した。その苦い経験を踏まえて、ADEXではドローンの無力化と、逆に自分たちのドローン部隊を運用することに関した各種のシステムが展示されることなった。
世界4位の「武器輸出大国」を目指す
ADEXの開会式で挨拶に立った尹錫悦大統領は、自身のうしろに並べられた戦闘機や自走砲など10種類も指し示しながらそれぞれの名称を述べ、世界に売り込むことに意欲を示した。
いわく、大統領自身が「1号営業社員になり、防衛産業企業の輸出促進のために努力する」と。大統領になるまでは検事一筋だったが、外国を訪問した際のトップセールスに力を入れるというわけだ。
そして、世界第4位の防衛装備品輸出大国になることを目指す」とも述べたが、これについて「それほど売れるのか?」と驚く方も多いであろう。
世界の軍備を分析しているSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によれば、22年までの5年間にわたる武器輸出シェアで、韓国は世界9位。1位はアメリカの約4割が断トツで、2位にロシア、3位にフランスと続く。
この3ヵ国がいわば武器輸出のビッグ・スリーで、上位5ヵ国が輸出全体の4分の3を占めているものの、「K防衛産業」の相手は東南アジアから中東、南米と幅広く、4位は無茶な目標ではないようだ。
一方、私は会場で複数の「K防衛産業」関係者から「日本との共同開発や自衛隊向けの輸出にも関心が高まっている」という話を聞いた。
少し前までの冷え込んだ日韓関係を考えたら隔世の感がある。日本の防衛装備品メーカーの社員たちもADEXに来ていた。日本は防衛力の強化を掲げてはいるものの調達コストの高騰に悩んでいる。技術的に簡単な話ではないかもしれないが、コストパフォーマンスの側面から韓国企業との協力という選択肢は考慮に値するように思える。
ウクライナをめぐる、韓国側の悩み
ここまで韓国の防衛産業が好調なことを紹介したが、尹政権は悩ましさにも見舞われている。ロシアのウクライナ侵攻を機に欧米から「K防衛産業」への引き合いが急増したものの、どこまで応じるのかという問題だ。
例えば、ポーランド。同国はNATO(北大西洋条約機構)の中でもとりわけ積極的にウクライナを支援し、戦闘機やドイツ製の最新鋭戦車レオパルト2などを提供してきた。その分、自国の戦力が心もたなくなったのだ。
ポーランド政府は補充を急いで調達する先として韓国に目を向け、昨年7月、K9自走砲672両を含む総額137億ドルもの契約を締結した。韓国としては史上最大の武器売却契約だ。
しかも、672両のK9のうち、はじめは韓国が輸出するものの、のちに300両はポーランドでのライセンス製造になるという。つまり、次はメイド・イン・ポーランドのK9がさらに欧州を席巻することに期待がかかっているというわけだ。
ポーランドのK9がまずどこに配備されるかというと、ロシアの飛び地カリーニングラードと接する地帯。「ロシアの侵攻はウクライナにとどまらないのではないか」という警戒感が東欧でひしひしと高まっていることを象徴している。ここまでは、「ロシアの脅威を食い止めるため」ということで異論は少ない。
難しい判断を迫られたのが同盟国アメリカへの砲弾輸出だ。ウクライナでの戦争が消耗戦の様相を呈する中、アメリカがウクライナに提供する砲弾の数が増え続けた結果、アメリカの在庫がかなり減ってしまったのだ。
そこで、バイデン政権は、NATO標準でK9も撃つ155ミリ砲弾を韓国に求めた。
しかし、尹政権は、直接ウクライナに兵器を送ることは控えてきた。紛争当事国に殺傷兵器の供与はしない、という方針に加えて、地政学的にロシアとの関係にも配慮せざるを得ないという事情もある。
今年2月24日、ロシアの侵攻開始から1年に合わせて多くの国が改めてプーチン大統領を糾弾する声明を出した中、韓国の声明には「ロシア」という国名すら入らなかった。だが、結局のところ、そうしたロシアへの配慮よりも同盟国アメリカからの支援要請を重視する方向へと舵を切り、五月雨式に155ミリ砲弾を輸出あるいは貸与し始める。
昨年11月、韓国が10万発をアメリカに輸出したのは確認されたが、それ以後、メディアでは様々な情報が飛び交うようになったものの、真相は分からなくなってきている。
例えば、今年5月にはアメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙が「韓国が極秘の取り決めによってアメリカ経由で数十万発の砲弾をウクライナに送る」と報じたが、韓国政府はこの報道について「不正確な部分がある」としつつ全面否定はしなかった。
直接的か間接的かは分からないものの、できるだけ目立たないよう腐心されながら、ウクライナが自国を守る戦いに韓国の砲弾が「活用」されているのは間違いなさそうだ。
このように、ポーランドやアメリカをはじめとする西側陣営を「K防衛産業」が支え出したのに対し、対峙する北朝鮮がロシアに砲弾を提供していることも明るみに出ている。
自国を守る側への合法的な輸出(韓国)と、侵攻した国への国連安保理制裁破りの輸出(北朝鮮)とを、同列に語るべきではないと思う。ただ、外形的にみれば、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに朝鮮半島が東西両陣営の「武器庫」となりつつある。ADEXの盛況もまた、朝鮮戦争がいまだに法的には終わっていないという厳しい現実の、一つの表れといえる。
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