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※2024年12月24日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年12月24日 日刊ゲンダイ2面
スケールメリットばかりを強調(左から日産自動車の内田誠社長、ホンダの三部敏宏社長、三菱自動車の加藤隆雄社長)/(C)共同通信社
日産とホンダの経営統合が発表されたが、シャープを買収した台湾の鴻海が日産を狙い、経産省が慌てて動いたという解説は、どこの企業にも当てはまる。今や、円安で大バーゲンセールの日本企業はどこに狙われてもおかしくないが、それでも円安放置の政府・日銀の無策に暗澹。
◇ ◇ ◇
実現すれば世界3位の巨大自動車グループが誕生する。ホンダと日産自動車は23日、経営統合に向けた基本合意書を締結。本格協議入りを正式発表した。新設する持ち株会社の傘下にそれぞれの会社を収める形で経営統合を進め、来年6月の最終合意と、翌2026年8月の持ち株会社上場を目指す。
両社は高度成長期から日本を代表する自動車メーカーとして世界各地の市場でしのぎを削ってきたライバル同士。手を組めば世界販売台数でトヨタ自動車、独フォルクスワーゲングループに次ぐ3位に浮上する。
23日の記者会見で、日産の内田誠社長は「スケールメリットはこれまで以上に大きな武器となる」と強調したが、新たな“ガリバー”の誕生には危うさが付きまとう。
日本メーカーが培ってきたエンジン技術の強みで販売台数を競い合えた時代は、とうに終わった。今や技術競争の「軸」はEV(電気自動車)や車載OSなどソフトウエアの開発に移行。次世代の車に欠かせない新たな分野で、日産もホンダも苦境にあえいでいるのだ。
調査会社マークラインズによると、世界のEV販売(今年1〜10月)で日産のシェアは1.3%、ホンダは0.5%。両社を合わせても2%に満たない。米テスラ(17.5%)や中国BYD(16.5%)など新興メーカーに大きく後れを取り、「技術大国ニッポン」はもはや見る影もない。
ましてや日産はEVの販売不振とHV(ハイブリッド車)の投入ゼロがたたり、北米や中国での収益が悪化。11月7日の中間決算は前年比9割超の減益で、従業員9000人と2割の生産能力の削減という大リストラ計画を公表したばかり。トップの内田社長自身、中間決算発表の場で「稼げる車がない」とこぼすほどで、未曽有の経営不振に陥り「一人負け」の様相である。
ヨボヨボの古参レスラー同士のタッグ
ホンダとの統合協議で、新たな持ち株会社の社長はホンダが指名する役員から選び、役員の過半数もホンダが押さえるという。ホンダの三部敏宏社長は「(日産の)救済ではない」と否定したが、統合協議はホンダ主導による日産救済の意味合いも強い。
加えて統合協議を急いだ背景には、業界再編を狙う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の存在がある。電子機器などの製造を請け負うサービスの世界最大手。米アップル社の「iPhone」の受託生産で知られる。昨年の売上高は約29.5兆円。16年には経営が悪化したシャープを買収した。
鴻海は19年に新たな収益の柱のひとつとしてEV事業参入を表明。元日産幹部を責任者に招き、日産買収を水面下で狙っているとささやかれてきた。実際、日産に株式取得を打診したが同意を得られず、筆頭株主である仏ルノーと交渉していると報じられている。
腐っても鯛じゃないが、EV後発組の鴻海にすれば日産のノウハウは喉から手が出るほど欲しいのだろう。記録的な円安進行で日本株の割安感が高まっていればなおさらだ。また、鴻海の生産拠点は中国に集中し、経済安全保障の観点から経産省内には抵抗感があり、慌てて日産救済を主導したとの解説も出回っている。
しかし日産とホンダの経営統合が実現しても、例えるなら総合格闘技全盛の時代にヨボヨボの古参レスラー同士がタッグを組み、無謀な試合に挑むようなものではないか。かつては世界に名を馳せた「弱者」連合こそが、名ばかり「世界3位」の真の実力である。
競争に勝てない現状を物語るスピード不足
日本の衰退に拍車をかけるだけなのに、官邸の圧力に屈したのか(日銀の植田和男総裁)/(C)日刊ゲンダイ
「仮に経営統合が実現しても、とてもうまくいくとは思えません」とは、企業のM&Aに詳しい経済ジャーナリストの井上学氏だ。こう続けた。
「90年代後半から2000年代にかけ、独ダイムラー・ベンツと米クライスラーの『世紀の合併』など世界の自動車メーカーは業界再編の大波にのまれましたが、企業規模が大きくなるほど失敗に終わっています。スケールを大きくしても売り上げに直結しないのが定説。むしろ、両社の社風が違いすぎるのは、大きなネックとなり得る。ホンダの自由な気質と日産の官僚気質は『水と油』。今のホンダには日産を救済できるほどの余力もありません。鴻海による買収阻止のため、経産省主導で性急な統合協議を始めたのであれば、弱者連合の共倒れリスクを高めるだけです」
その時こそ鴻海には好機到来。さらに大きくなった日本の自動車メーカーを買収できると手ぐすねではないか。
「鴻海にすれば日産の技術さえ手に入れば十分で、スケールメリットは求めていないでしょう。ずうたいの大きな企業ほど、扱いに困るだけですから。今回の統合協議に向けた覚書には『別のパートナーと提携議論をした場合に1000億円のペナルティーを科す』との特別条項が盛り込まれたともいわれていますが、鴻海にすれば1000億円なんて『はした金』。本気で日産を取りにかかれば、安値の罰金分を負担してでも平気で横やりを入れてくるはず。それにしても、持ち株会社の上場を『26年8月』に目指すスピード感のなさにはア然とします。モタモタしているうちに『物言う株主』たちの格好の餌食となりかねません。日本の自動車業界が想定を上回るスピードで変化する国際競争に太刀打ちできない現状を物語っています」(井上学氏=前出)
ポピュリズムに毒された「官製円安」
日産・ホンダの経営統合協議は、衰退する日本の象徴でしかない。日本経済を支える最後の砦だった自動車産業も恐らく日の丸半導体と同じ道を歩むのだろう。問題は今や日本企業は大バーゲンセール。どこもかしこも買収の恐れがあることだ。日米両国の株式指標を比べれば一目瞭然である。
23日の東証プライムの時価総額は約950兆円。一方、米企業の時価総額トップはアップル社で約3.8兆ドル、2位エヌビディア社は約3.3兆ドルほどだ。円換算で約597兆円と約518兆円となり、合計は約1115兆円。東証プライム上場1640社が束になっても米国の上位2社の時価総額に到底、かなわないのだ。
平成バブル華やかなりし頃、世界の時価総額トップ10にNTTや当時の都市銀行などが名を連ねたのは、もう教科書レベルの話だ。現在、世界の上位100社にランクインする日本企業はトヨタ自動車1社のみ。その上、1ドル=150円台後半の円安傾向が収まらない限り、ドル建てでみた日本企業の価値はどんどん格安となる。
セブン&アイ・ホールディングスも今、カナダのコンビニ世界大手「アリマンタシォン・クシュタール」から買収提案を受け、てんてこ舞いだが、日本の大手企業はいつ外資の“魔の手”に狙われてもおかしくないのだ。経済評論家の斎藤満氏はこう指摘する。
「円安は物価高で国民生活が苦しくなるだけでなく、国内企業が外資に安く買い叩かれるリスクも高めます。長年、日本のメーカーが培ってきた技術をいとも簡単に奪われかねません。それなのに、植田日銀は今月も利上げを見送り。円安が一段と加速しました。植田総裁は利上げの準備を着々と進めていましたが、どうやら国内の政治圧力で潰されたようです。利上げをすれば『中小企業が困る』『住宅ローンを抱える人が困る』と、選挙目当てのポピュリズムに毒された官邸内の一部政治家が待ったをかけたのでしょう。この『官製円安』で金利がつかない状況が続けば、行き場を失った大量のマネーが海外へ流出し、国内投資に回らなくなる。日本の衰退に拍車をかけますが、政府も新NISA拡充で資金流出に加担しているのだから、暗澹たる思いになります」
政府・日銀の無策は、まさに売国的である。
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