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春闘の大規模な賃上げ要請
物価の上昇を上回る賃金上昇をお願いしたいと岸田首相が言い、大企業や有力企業がこぞって賃上げするらしい。
それは果たして日本経済を好転させるだろうか。大いなる疑問だ。
普通ならこのような政策を非難しなければならない経済学者がもはや日本にはいない。
日本の経済学者のほとんどは、デフレ下での生産量増大政策に取り付かれ、それが完全に失敗し、低賃金化すると、今度はそれが企業が賃上げしないからだと、企業に責任を押し付けているありさまだからだ。
企業はその経済政策に従っただけであり、そのために賃金を上げられなかったのである。
恐らく政治家は、経済が好転しない理由を、今回の春闘で賃金が上がらなかった事にし、自分たちの失敗を隠す算段であろう。
そして賃金の引き上げ要請は、自由主義経済をないがしろにする暴挙であり、見えざる手による自動調節機能を麻痺させ、資源配分を片寄らせることになる。
もはや自民党は、自由主義経済を守る政党ではなくなったのである。
この上さらに最低賃金を千円以上に引き上げる事を模索しているらしいが、もはやただ選挙で野党に勝つことだけが目標になっており、国民を奈落におとしめる政策をどんどん実行し始めている。
国民もまた、目の前にぶら下がったあめ玉にすがりつかなければならないほど貧窮している。
さて本題に入ろう。あくまで企業への要請となっているが、強制的に賃金を上昇させるとどうなるか、を経済学的にみていこう。
強制的な賃金上昇は、企業にとって確実に製造コストのアップとなる。そして労働者の労働意欲を上げるため、労働量が増えることになる。それは生産力の増強を意味する。
以前から指摘している通り、生産量に対して消費が不足しているデフレ下の生産量増強は、低付加価値化をもたらし、企業のさらなるリストラを推し進める原動力になる。低賃金化は、景気対策を生産者側の生産力増強に片寄った事でもたらされているのだ。
それでは賃金上昇分がどの程度消費に回り、企業の売り上げにつながるのだろうか。
プライマリーバランスとかで、年々上げてきた社会保険料、所得税、10%の消費税などの国民負担増で、今や江戸時代並と言われる重税である。公共料金や間接税もばかにならない。
10%の賃上げをしても、5公5民としても、手取りは5%である。しかも将来への不安などからくる貯蓄率の高さから、消費に回るのは、そんなに多くはないだろう。
そのため今回の賃上げ要請も、所得線の角度を上昇させ、インフレスパイラルを引き起こすほどの効果はないだろう。
それは構造的な変革を催す津波のようなものではなく、一時的に高まる高潮であり、すぐに後戻りするものになる。それは不安定なもので、たやすく下方へシフトしやすいものである。
結局時間が経つにつれ賃金上昇より、企業の撤退、縮小、廃業倒産が上回り、企業も消費者も逼迫し、より縮小した経済に移行して行くことになる。
デフレ下の労働曲線は、右下がりであり、労働力の増大は、賃金の低下を意味する。賃上げ要請の最終結果は賃金低下になって収まるのである。逆説のパラドックスが成立する。
デフレ下の賃金引き上げ強制は、壮大な産業撲滅策であり、デフレの行き着く先は産業の墓場である。日本の産業は大きく損なわれることだろう。
強制的な賃上げが、消費を増やし経済を好転させると思わせるような民衆への飴玉政策が、日本経済を破綻させて行くのだ。
一言主
https://siawaseninarou.blog.so-net.ne.jp/
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
参照のこと。
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