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中小企業の春闘“満開”ははかなし…「背伸び賃上げ」が廃業&倒産リスクを高める
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/320798
2023/03/31 日刊ゲンダイ
大企業は満額回答が相次いだが…(代表撮影)
満開の桜はいつまで持つのか。日本商工会議所が全国の中小企業6013社を対象に実施したアンケート調査(2月1〜28日・有効回答3308社)によると、23年度に賃上げを実施するとの回答が58.2%に上った。前年の45.8%から大幅アップ。大企業の積極姿勢が波及したようにみえるが、内実は脆弱だ。
■深刻な人手不足
中小企業の賃上げを促したのは深刻な人手不足。64.3%が人手について「不足している」と答え、前年同期から3.6ポイント増えた。賃上げの理由も「従業員のモチベーション向上」(77.7%)が最多で、「人材の確保・採用」(58.8%)が続く。賃金アップで今いる従業員をつなぎ留め、新たな人材確保を図ろうとしていることがうかがえる。
問題は、賃上げに業績が伴っていないことだ。商工会議所の担当者は「足元の人材の確保・定着、物価上昇を受けて、業績の改善がみられない中での賃上げを予定している企業が約6割を占めます。経済の好循環に向けて持続的な賃上げを実現していくためには、景気対策や円滑な価格転嫁への支援等を求める声が多くあります」(アンケートを実施した産業政策第二部)と答えた。
業績の裏付けがなく、多くの中小企業は“背伸び”をして賃金を引き上げざるを得ないのだ。岸田首相が強調する「持続的な賃上げ」にはほど遠い。
この先も業績が好転しなければ、賃金アップ分が重荷になり、経営は悪化。また、賃上げを継続できなければ人材確保も怪しくなる。そんな事情で中小企業の廃業・倒産が多発してもおかしくない。
「大企業の引き抜きが、人手不足を深刻にしている面があります。取引先の中小企業の従業員に厚遇を示し『ウチに来ないか』と誘うのです。誘われれば喜んで転職するケースが多い。大企業に評価されるような“エース級”がいなくなれば、中小企業側は大打撃です」(経済ジャーナリスト・井上学氏)
そもそも中小企業の業績がパッとしないのは、取引先の大企業がコスト上昇分に見合った価格転嫁を十分に認めないからだ。
満額回答ラッシュの春闘に浮かれているのは大企業の社員だけ。中小企業の満開の桜はすぐ散る運命なのか。
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