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※紙面抜粋
※2023年3月31日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
閣議決定「安全保障3文書」、何もクリアになっていない(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
2023年度予算も、年度末までに処理しなければ国民生活に影響を与える「日切れ法案」も、混乱なく成立。前半国会はシャンシャンで終わった。
30日は後半国会の重要法案の一つ、60年超の原発の運転を可能とする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が衆院本会議で審議入りしたが、永田町はすっかり選挙モード。すでに選挙戦に突入している知事ら首長選に加え、31日は41の道府県議選が告示。この後、区市町村の首長選や議員選に加え、衆参5補欠選挙も告示される。会期末までの早期解散の観測も消えず、浮足立った雰囲気の中、後半国会も空疎に時間だけが過ぎていくのだろうか。
1月23日に通常国会が召集されて2カ月強の間、国会審議はずっと低調で、正直、物足りない。衆院で議論が白熱した場面は、あったのかどうかすら思い出せない。参院では、放送法の解釈が当時の安倍首相官邸の圧力により歪められた疑いのある総務省文書が大問題となったが、当時の総務相だった高市経済安保相の「捏造」発言で議論はどんどん本筋からそれてしまった。
参院予算委員会での野党の質問は高市に集中し、岸田首相は涼しい顔。放送法の解釈変更は、憲法の表現の自由を脅かす重大事なのに、高市個人の問題に“矮小化”され、予定通りに審議日程は進んだ。国会承認のない岸田のウクライナ電撃訪問もたいして議題にならず、逆に岸田内閣の支持率が軒並み上昇。自民党内から「高市さんがMVP」との声が上がるほどだった。
首相と防衛相こそ“お花畑”の議論
原発の運転延長に新増設、防衛政策の大転換、そして増税……。今国会は、この国の将来を左右する重要テーマが目白押しだ。それなのに、こんなふがいない国会が続いていいわけがない。
とりわけ重大なのが、岸田内閣が昨年末に閣議決定した「安全保障3文書」の改定だ。「反撃能力」と言い換えた敵基地攻撃能力の保有は、国際法違反の「先制攻撃」とみなされかねず、戦後の日本が国是としてきた専守防衛を逸脱する。徹底的な議論があってしかるべきなのに、岸田は「専守防衛は堅持」と強弁するだけで、いまだ真正面から答弁しない。
「閣議決定の次は国会での説明義務があるのに、問題点は何もクリアされていません。敵基地攻撃能力の保有が専守防衛と相反しないのかどうかはもちろんのこと、敵が攻撃に『着手』したとはどういうことなのか。野党が質問しても岸田首相は説明しない。さらには、3文書に明記されていないものの自民党が主張していた、『敵の指揮命令系統』への攻撃が含まれるのかどうかについても明確にしない。岸田首相は『相手に手の内を明かすことになる』と言って、説明を避ける。要は、議論を詰めていくと憲法問題になるので、曖昧にしているのです。それでいて、岸田首相や浜田防衛相は敵基地攻撃能力を持てば、相手がひるんでミサイル攻撃を止めるので安全になる、と主張する。そんな大ざっぱな考え方は“お花畑”の議論。通用しません」(防衛ジャーナリスト・半田滋氏)
5年間で43兆円という防衛費大増額は、23年度が初年度にあたる。予算が成立したことで、「3文書」改定を含めた戦後日本の国防大転換は、マトモな議論なきまま既定路線として進んでいる。
この先、国会では「防衛力強化資金」新設のための特別措置法案の審議が行われることになるが、果たして、防衛力強化ありきの財源論に移ってしまっていいのか。そもそも今、軍拡が必要なのか、という本質的な議論は置き去りである。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「岸田首相は『平和国家としての日本の歩みは不変』と繰り返します。不変ならば、専守防衛を逸脱する敵基地攻撃能力の保有はおかしいでしょう。先制攻撃の真珠湾攻撃とどこが違うのか。憲法9条のある日本が、憲法改正の手続きを踏まないで平和国家から戦争国家へ転換することは、私に言わせれば『改憲クーデター』です。本当にこれでいいのか。GDP比2%にまで防衛費を拡大することが何を意味するのか。与野党が真正面から討論しなければいけない」
専守防衛を逸脱する防衛力強化は「地域の問題」
支持率上昇ですっかり有頂天の岸田は、4月23日までの衆参の補選や統一選で、ますます“有権者買収”のようなバラマキ政策とリップサービスを繰り出すのだろう。
すでに物価高対策として、低所得世帯向けの3万円や子ども1人あたり5万円の支給を閣議決定。「異次元の少子化対策」でも、児童手当の所得制限撤廃と高校卒業までの延長、子育て世帯への住宅優遇、小中学校の給食費無償化の検討、出産費用の公的医療保険適用の将来的検討など、自民、公明両党に配慮したあれやこれやのメニューが、たたき台に盛り込まれる。
だが、選挙目的のエサに、有権者は騙されてはいけない。物価高対策や少子化対策は大事だが、いま最も問われているのは、岸田政権が進める軍拡への審判だ。憲法破壊の加速化と国防の大転換に何一つ説明をしようとしない横暴政治を国民は許すのかどうか、である。
ここで黙っていたら白紙委任したことになる。地方選とはいえ、国民の意思を突きつけなければ「戦争する国」へと一直線だ。
軍拡の結果の脅威が地方と無関係ではないことは、南西諸島の離島の現状を見ればよく分かる。
3月17日に陸上自衛隊の新たな駐屯地が開設された沖縄県の石垣島。中国を念頭にした防衛体制強化の一環だが、地元では自衛隊部隊の配備で、住民が紛争の巻き添えになるとの懸念が出ている。石垣市は自公系市長が舵取りをしているが、それでも昨年12月に市議会が「反撃能力を持つミサイル配備を容認できない」と訴える意見書を可決した。
自衛隊基地があると、むしろ危険
前出の半田滋氏が言う。
「さまざまな地方の講演に呼ばれますが、沖縄が再び戦場になるのではないか、との不安の声は多い。元々、石垣島の自衛隊基地新設は、専守防衛のためでした。地元は自衛隊が来てくれれば安全、と思っていた。しかし、いまや台湾有事を想定した最前線とされ、自衛隊基地があることで、むしろ危なくなってしまいました。鹿児島県の馬毛島も米軍機の離発着訓練の移転先になる。つまり、岸田政権が進める防衛力強化というのは『地域の問題』なのです。地方選挙は国政選挙の鏡。戦争を推進する勢力を勝たせれば、国政もそうなるということを、有権者は肝に銘じるべきです」
九州、沖縄だけの問題じゃない。導入中止となったイージス・アショアの配備計画で、秋田市が大揺れになったことを思い出してほしい。軍拡を進めれば抑止力で安全になる、という考え方はまやかしだ。
防衛省は敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルの保管場所について「決定しても公表しない」方針。地域住民の承諾のないまま、台湾有事を想定してどんどん配備されていく。
安倍政権以来の国会軽視が加速し、岸田もそれが当たり前になっているから、口では「丁寧な説明」と繰り返しながらも、実際は説明する気などないし、説明しなければならないとも思っていない。国会軽視とは国民軽視。国民がナメられている、ということだ。
補選と統一選の結果は、今後の岸田政権の運営に少なからず影響する。岸田は内心不安だから、党内に檄を飛ばし、引き締めるために解散風も使う。衆参5補選では、和歌山1区や参院大分で自民が取りこぼす可能性も出ている。
マトモな国民が与党に鉄槌を下さなければ、国民軽視の政治は決して変わらない。
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