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米政府の意向で巡航ミサイル400発を購入する意味を日本政府は理解しているのか
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202302280000/
2023.02.28 櫻井ジャーナル
岸田文雄首相は2月27日、衆院予算委員会でアメリカの亜音速巡航ミサイル「トマホーク」の購入予定数を400発だと語った。トマホークは核弾頭を搭載できる兵器で、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートル。中国の軍事施設や工業地帯を破壊することが目的だろう。
言うまでもなく、トマホークの購入はアメリカの戦略に基づくもの。アメリカの対外政策を決めているネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後の1992年2月、DPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。「唯一の超大国」になったアメリカは他国に配慮することなく単独で好き勝手に行動できる時代が来たと考えたのだ。
そのドクトリンは第1の目的を「新たなライバル」の出現を阻止することだとしている。旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、東南アジアにアメリカを敵視する勢力が現れることを許さないというわけだ。言うまでもなく、日本がアメリカのライバルになることも許されない。その上でアメリカの戦争マシーンの一部になるということだ。
その時の国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツだ。そのウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから、DPGは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
そのドクトリンに基づき、ジョセイフ・ナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。日本に対し、アメリカの戦争マシーンの一部になれという命令だろうが、当時の日本にはその道を歩こうとしない政治家もいたようだ。
そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)た。その10日後には警察庁の國松孝次長官が狙撃されている。8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載された。
結局、日本は戦争への道を歩み始め、自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成させる予定だ。
アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。
日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。
極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。
政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めていると昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。
日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。
こうした当初の計画では準備が間に合わない事情がアメリカに生じ、トマホークを購入することにしたのだろう。
岸田政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定し、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額し、「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。その決定を「手土産」にしてアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領と1月13日に会談している。
日本政府が言う「敵基地」には軍事基地のほか工業地帯やインフラも含まれている。今年2月22日に来日した中国の孫衛東外務次官らは山田重夫外務審議官らと会談した際、日本の軍事関連3文書を問題にしているというが、当然だろう。
日本を戦争へと駆り立てているアメリカのネオコンはウクライナで戦争を仕掛けた。2013年11月のことだが、その理由は10年の大統領選挙でウクライナの東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチが勝利したことにある。アメリカへ従属しないと判断、ネオ・ナチを使ってクーデターを実行したのだ。
クーデター派は東部や南部を支配するためにネオ・ナチの武装集団や軍などを動かし、オデッサなどでは反クーデター派の住民が虐殺しているが、クリミアはいち早くロシアの保護下へ入る。ドンバスでは武装した住民が抵抗を始め、内戦になった。この内戦で勝利するため、アメリカ/NATOはクーデター体制の軍事力を増強する必要があり、そこでドイツやフランスを仲介役とする「ミンスク合意」が調印されたわけだ。
この合意が時間稼ぎにすぎなかったことは昨年12月7日にアンゲラ・メルケル元独首相が認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。
しかし、クーデター体制への軍事的なテコ入れは成功しなかった。ロシア政府が小規模な介入に留めたにもかかわらず、アメリカ/NATOが支援するキエフ政権の敗北は避けられない。要衝バフムート(アルチョモフスク)ではウクライナ軍部隊がロシア軍部隊に包囲されつつある。ジョー・バイデン政権はロシアの力を完全に見誤った。彼らは情報操作で人びとに幻影を見せ、操ってきたが、彼ら自身もその幻影に騙されたようだ。
現在、追い詰められたバイデン政権は核兵器をちらつかせてロシア政府を脅しているが、軍事技術や生産力でロシアがアメリカより優っていることがウクライナでの戦闘で明確になった。すでに南オセチアやシリアでアメリカ/NATO軍よりロシア軍が強いことは判明していたが、経済面でもロシアが優位にあることが判明したのだ。アメリカはロシアに対し、必死に経済攻撃を仕掛けてきたが、アメリカの支配下にあるIMFの評価でも、ダメージはドイツやイギリスより小さい。
ウクライナでの敗北が決定的になったアメリカ/NATOは東アジアへ「転進」するつもりかもしれないが、日本だけで中国とロシアに勝てるとは思えない。中国やロシアとのビジネスを放棄して日本の経済を維持することは難しいだろう。いや、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」で近い将来、日本は滅ぶかもしれない。
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