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石原慎太郎は成熟を拒絶した「永遠の中2病」 軽薄さを三島由紀夫も見抜いていた それでもバカとは戦え
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/300916
2022/02/05 日刊ゲンダイ
石原慎太郎氏(右)は若い頃の自分を橋下徹氏に重ねていたのだろう(C)日刊ゲンダイ
作家の石原慎太郎が亡くなった。享年89。間違いなく戦後を代表する人物だったと思う。もちろん、悪い意味において。石原は保守でも右翼でもない。石原自身も「僕そんな右じゃない。真ん中よりちょっと左ですよ」と述べているが、戦後民主主義の敵対者という世間のイメージとは逆に、戦後社会の屈折した「気分」にひたすら迎合してきたポピュリストだったのだと思う。
数々の差別発言や暴言も「大衆の汚い本音を代弁するオレってカッコいい」といった自己愛に基づくもので、思想的な裏打ちがあるわけでもない。差別主義者というより「かまってちゃん」。社会の常識、建前にケンカを売ることで注目されたかったのだと思う。
アメリカが嫌い、中国が嫌い、皇室が嫌い、官僚が嫌い……。口を開けば、改革、変革、中央支配体制の打倒と騒ぎたてる。要するに強者、権威、既存の体制に反発することで、大衆の無責任な改革気分に訴えかけてきた。こうした姿勢は文壇デビュー作「太陽の季節」から一貫している。
一方、人間としては支離滅裂だ。「それ(天皇制)は笑止だ。それは全く無意味だ」「天皇が国家の象徴などという言い分は、もう半世紀すれば、彼が現人神だと言う言い分と同じ程笑止で理の通らぬたわごとだということになる、と言うより問題にもされなくなる、と僕は信じる」などと皇室を罵倒し続け、旭日大綬章の受章が決まれば「そんなね、涙を流して夜も眠れずありがたいもんじゃないよ」とニヤけながら、ちゃっかりと受け取る。
こうした石原の軽薄さを見抜いていたのが三島由紀夫だ。
「氏は本当に走っているというよりは、半ばすべっているのである」(「石原慎太郎氏」)。石原が安全な立場、つまり自民党内部で党の批判を繰り返すことについても「貴兄の言葉にも苦渋がなさすぎます。男子の言としては軽すぎます」(「士道について」)と批判した。石原の最大の特徴は、この言葉の軽さだ。
大統領制を唱えていた橋下徹に入れ込んだのも若いころの自分に重ね合わせたからだろう。「僕は橋下君を首相にしたい」「彼は革命家になれる」「若い頃のヒットラーにそっくりだ」
石原は最期まで成熟を拒絶した。「永遠の少年」というより「永遠の中2病」と言ったほうが適切だろう。
適菜収 作家
近著に「日本人は豚になる」「ナショナリズムを理解できないバカ」など。著書40冊以上。購読者参加型メルマガ「適菜収のメールマガジン」も始動。詳細は適菜収のメールマガジンへ。
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