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米国政府の露国に対する経済戦争は機能せず、金融システムへの信頼度が低下
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2023.02.27 櫻井ジャーナル
ロシア軍がウクライナ領を昨年2月24日にミサイルなどで攻撃を始めた後、アメリカ政府はロシアの中央銀行が国外に保有する資産約3000億ドルを凍結した。アメリカ政府は敵対する国に対して似たような経済的な攻撃を仕掛け、成功してきた。そこでロシアも「制裁」によって経済がダメージを受けると考えたようだが、今のところロシア社会に変化は見られない。ロシア政府はアメリカ側のこうした「制裁」を予期し、準備してきたのだ。
アメリカがこれまで支配的な地位を維持できた要因のひとつは基軸通貨であるドルを発行する特権を持っていたからだが、それにとどまらず金融システムそのものをアメリカやイギリスの金融界が支配してきたことも無視できない。
昔から富豪は資産を地下に隠してきた。かつてはスイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギー、モナコなどが租税回避地として有名だったが、1970年代にロンドンの金融界がオフショア市場のネットワークを築いてから状況は変わった。
そのネットワークはかつての大英帝国をつなぎ、ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランドなどが含まれている。しかも信託の仕組みが取り入れられているため、管理人以外は誰が所有者なのかを知ることができないことになっている。
オフショア市場へ資産を隠す人の中には投資家、企業家、政治家、官僚、犯罪者などが含まれているだろうが、情報機関は資金の流れを把握しているようだ。アメリカやイギリスの情報機関は米英の金融機関と緊密な関係にあるので当然だが、ロシアなどの情報機関もつかんでいる可能性が高い。
昨年7月、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はユーリ・チカンチン連邦財務監視庁長官と会談、外国の巨大医薬品メーカーからロシアの医療関連機関の幹部へ多額の資金が渡っていることを問題にしている。連邦財務監視庁はFSB(連邦安全保障局)と共同で医療世界におけるカネのやりとりを止めさせるために調査を始めたとされていた。
ロシアの法律には違反していないようだが、こうした慣習が医療システムを損なうことは間違いない。医薬品メーカーの利益を優先することは医療機関の利益につながり、適切な治療が行われないこのになる可能性があるからだ。そうしたカネの一部もオフショア市場へ流れ込んでいるだろう。勿論、ロシア以外の国でも似たようなカネの動きはあるはずだ。
しかし、機密性の高いオフショア市場には利用者にとって不都合な点もある。ネットワークを動かしている勢力がその気になれば、そのカネを消すことも可能だからだ。アメリカ政府の口座凍結で青ざめているロシア人や中国人がいるかもしれないが、アメリカ政府の経済攻撃はアメリカの金融システムに対する信頼度を下げたはずだ。
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