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2024年9月11日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/353337
東京電力は10日、福島第1原発2号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の微量採取にようやく着手できた。これを回収して分析し、本格的な取り出しに向けた「一歩」としたい考え。ただ、先日の着手失敗の遠因にもなった建屋内の高い放射線が立ちはだかり、微量でも回収は容易ではなく、想定通りにいくかは分からない。1〜3号機に大量に堆積するすべてのデブリとなれば、難航は明らかだ。(荒井六貴、山下葉月)
◆ミスの原因は「被ばく防ぐ重装備」
「少しでも作業員の被ばくを抑えるようにしたい」。デブリ採取に伴う作業員の被ばくについて東京電力の担当者はそう説明した。
採取装置がある現場は格納容器に近く、毎時数ミリシーベルトあるとされ、線量が高い。採取するデブリは耳かき1杯程度の3グラム以下の予定だが、高い放射線を出すことが予想される。
準備段階のパイプの配置ミスで8月22日に着手できなかった背景には、高線量もあった。作業員の被ばくを避けるため、短時間で準備を終えようとし、確認を怠った。放射性物質の取り込みを防ぐ全面マスクを着ける重装備で、パイプに記された順番を示す数字が見えにくかった。
◆パイプ押し込みは「60人が交代で」
できる限り遠隔操作を取り入れる一方で、人手に頼る作業がある。装置を格納容器まで伸ばすためのパイプの押し込みや、デブリ採取後の容器の回収だ。
東京電力によると、着手初日は、ミスの反省を踏まえて東京電力社員も立ち会い、作業員を含め80人超が作業に当たった。うち約60人が装置がある高線量の現場に入り、被ばくを分散させるため、交代でパイプを押し込んでいった。
計画では、1人の被ばく線量を1日2.5ミリシーベルト以下と設定。連日ぎりぎりまで被ばくすると、法定限度の1年50ミリシーベルトに近づき、別の作業に加われなくなる恐れがある。そのため、線量計で1.2ミリシーベルトを警告するアラームが鳴ると同時に退避するようにする。
◆本格取り出し計画は「検討段階」
1号機の建屋を覆うカバー設置作業が1日0.9ミリシーベルトで設定されていることから、採取は廃炉作業の中でも極めて困難な現場だということが分かる。放射線との闘いは厳しい。
1〜3号機に堆積するデブリは計880トンに上ると推計されている。これを本格的に取り出す計画は、検討段階にとどまる。
東電によると、微量採取は作業員が格納容器の側面にたどりつきやすい2号機が選ばれた。一方、本格取り出しは、建屋内の線量が比較的低いことや破損状況などから3号機からを想定する。
取り出し方法として、廃炉計画を立てている原子力損害賠償・廃炉等支援機構と東電は、
(1)気中工法
(2)冠水工法
(3)充塡(じゅうてん)固化工法
―の3案を示している。
◆3つの工法、それぞれに難点
(1)は格納容器の上部や側面から装置を差し込んで取り出す。しかし、放射線を遮れないため、多種多様な遠隔操作装置が必要になる。
(2)は建屋を構造物で覆い、水で満たし取り出す方法。水で放射線を抑えられるが、構造物設置に難点がある。
(3)は充塡材でデブリを固めて線量を低減させ、格納容器上部から遠隔で削り取る。充塡材の開発や充塡方法に課題がある。
機構の山名元理事長は7月の原子力規制委員会の会合に出席し、現状は(1)と(3)の組み合わせで検討していると説明した。その上で「原子炉内部の状況の十分な理解が前提で、内部調査の加速が重要」と述べた。
裏を返せば、事故から13年たっても格納容器内の状況をつかみきれていないということだ。「廃炉まで30〜40年」と掲げても、肝になるデブリ取り出しの実現は見通せず、果てしない道のりが待っている。
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