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侮れぬ自民党の力示した総裁選
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2021年9月29日 植草一秀の『知られざる真実』
9月29日に投票日を迎えた自民党の党首選。 勝利したのは岸田文雄氏だった。 党員票382票、議員票382票で行われた1回目の投票結果は以下の通り。 岸田文雄 国会議員票146票 党員票110票 合計256票 河野太郎 国会議員票 86票 党員票169票 合計255票 高市早苗 国会議員票114票 党員票 74票 合計188票 野田聖子 国会議員票 34票 党員票 29票 合計 63票 1回目の選挙で過半数に達した候補はいなかった。 1回目の投票でトップに躍り出たのは岸田文雄氏だった。 過半数を確保した候補がいなかったため、上位2者で決選投票が行われた。 投票は47都道府県1票ずつの党員票47票と国会議員票382票で行われた。 投票結果は以下の通り。 岸田文雄 国会議員票249票 都道府県票 8票 合計257票 河野太郎 国会議員票131票 都道府県票39票 合計170票 この結果、岸田文雄氏が自民党総裁に就任し,10月4日に召集される臨時国会で第100代内閣総理大臣に就任する見通し。 メディアは河野太郎人気をはやし立てたが河野太郎氏は大差で敗北した。 河野太郎氏は、国民は自分を総理に選出すると嘯(うそぶ)いていたが、国民の多数は河野氏敗北、岸田氏選出の結果を歓迎していると思われる。 所詮は自民党の党首選であり、誰が選出されても大転換は起こらない。 しかし、各候補に差異がないわけではなかった。 重要な二つの視点がある。 第一は経済政策路線。 2001年以降、自民党の経済政策路線の中核に新自由主義が置かれた。 大資本の利益を極大化すること、そのために労働者への分配を極限まで圧縮すること。 大資本のための経済政策運営が強行された。 その結果として、日本は世界有数の格差大国に成り下がり、年越し派遣村のような惨事が繰り返された。 これに対する基本路線が福祉国家路線。 最適資源配分よりも所得再分配を重視する考え方と表現することもできる。 自民党政治の二大潮流である清話会(旧福田派)と平成研(旧田中派)はそれぞれが新自由主義経済政策と福祉国家経済政策を代表する政策集団だ。 大平正芳氏の系列である宏池会は平成研に近い考え方を示してきた。 今回総裁選で新自由主義経済政策路線を提示していたのが河野太郎氏と高市早苗氏。 これに対して岸田文雄氏と野田聖子氏は福祉国家経済政策の主張を示していた。 第二の視点は人格。 首相の条件として最重要であるのが「人格」。 人格面で最重要であるのが「公私の分別」。 安倍・菅内閣の最大特徴は「私の優先」だった。 「公」よりも「私」を優先する。 森友・加計・桜疑惑は、すべて安倍氏が政治に「私」を持ち込んだもの。 菅氏も「公」の視点ではなく「私情」を軸に官僚人事を壟断した。 為政者に求められる最重要の資質が高邁な精神性、公の優先である。 この人間性、人格面での比較をすれば、岸田文雄氏と野田聖子氏の評価が高かったと言える。 岸田氏は経済政策における「新自由主義からの脱却」を明示した。 2001年以降、鳩山内閣の1年を除き20年間にわたって日本の経済政策の中核に位置付けられてきた「新自由主義経済政策」の路線に修正が加えられる可能性がある。 また、安倍・菅内閣と比較して、人格面での優位が岸田氏に認められた。 問題は自民党の私優先路線派の3A=安倍・麻生・甘利の影響力を排除できるのかどうか。 この点を注視する必要がある。 しかし、自民党は4人の候補者のなかでは最適な人物を党代表に選出したと言える。 岸田内閣の下で実施される次の衆院総選挙は野党にとって非常に厳しいものになる。 野党は謙虚に低迷を反省し、総選挙に対する取り組みを一気に加速しなければならない。 |
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