http://www.asyura2.com/21/kokusai31/msg/618.html
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4月24日にフランスで大統領選の決選投票が行われる。現職のマクロンと、右翼
(保守派)のルペンとの二択だ。5年に一度の仏大統領は、前回の2017年もマク
ロンとルペンが決選投票に臨み、66%対34%でマクロンが圧勝した。だが今回は接
戦だ。4月14-15日時点の世論調査ではマクロン43%、ルペン41%。マクロンの優勢
が2ポイントしかなく、有権者の16%が未決定だった。
http://www.politico.com/news/2022/04/08/white-house-putin-paris-00024054
The White House is freaked out that Putin's next big win could be in Paris
今回の仏大統領選は10人が立候補し、4月10日の1回目の投票で、マクロン26%、
ルペン23%、左翼のメランション17%の3人が10%以上の得票を得て、マクロンとル
ペンの決選投票になった。前回2017年は、1回目の得票の3位以下の候補(中道右
派のフィヨン20%、メランション19%)の支持票の大半が決選投票でマクロンに入
ったので、マクロンが圧勝した。だが今回は、1回目でメランションを支持した
人に対する世論調査の結果として、決選投票でマクロン支持が28%、ルペン支持
が26%となっていて拮抗している。
http://www.zerohedge.com/political/le-pen-closing-gap-french-election-polls-macron-smears-opponent-over-putin-links
With Le Pen Closing Gap In French Election Polls, Macron Smears Opponent As Russian Sympathizer
メランション自身が「決選投票でルペンに入れるな」と支持者に言っているので、
それに従う左翼は反ルペン票を消極的にマクロンに入れる。それ以外の左翼は
メランションの言いつけに従わず、ルペンの貧困対策など経済政策が左翼と似て
いるので決選投票で積極的にルペンに入れる。2017年の前回選挙で初当選したマ
クロンは、中道左派として振る舞っていたので左翼からも支持され当選した。し
かし、大統領としての政策はむしろ中道右派的だった。しかもマクロンの経済政
策の多くがうまくいかなかったので、左翼は裏切られたと思っている。今回の決
選投票は、ルペンに入れる左翼が増える。
http://www.zerohedge.com/political/they-all-do-it
"But They All Do It..."
仏有権者の全体で、マクロン票の中には右翼を嫌う反ルペン票(消極票)が多い。
対照的に、ルペン票の中には政策を支持する積極票が多い。支持者に占める熱心
な人の割合は、マクロン54%、ルペン64%だ。当日の天候や社会情勢などの影響
で全体的な投票率が低いほど積極票が多くなり、ルペンが有利になる。投票率が
高くても接戦になり、マクロンが勝っても辛勝になる。
http://sputniknews.com/20220419/inflation-crime--ukraine-crisis-what-could-bring-macron-down-and-pave-the-way-for-le-pen-1094891756.html
Inflation, Crime & Ukraine Crisis: What Could Bring Macron Down and Pave the Way for Le Pen?
4月20日にはマクロンとルペンのテレビ討論会が行われた。2017年の前回大統領
選では、決選投票前のテレビ討論会でルペンがマクロンより明らかに劣勢になり、
それが決選投票でのルペン惨敗の一因になったとされている。しかし今回の討論
会では、ルペンがロシアの銀行から選挙資金を借りていたこと(いつもの誹謗)
をマクロンが蒸し返したのに対し、ルペンが「それはフランスの銀行が(エリー
ト支配を崩そうとするルペンへの妨害策として)選挙資金を貸さない不当行為を
したから、仕方なく外国銀行から借りただけだ」という趣旨をうまく返答して
マクロンを苛立たせるなど、2017年よりかなり健闘した。選挙戦全体で、ルペン
は「ロシアは大国なのだから協調関係を維持するのが良い」と言う半面、「中露
の結束は脅威だ」と言ったりしてバランスをとっている。
http://www.msn.com/en-us/news/world/marine-le-pen-avoids-debate-debacle-in-race-to-oust-unpopular-macron/ar-AAWqn75
Marine Le Pen Avoids Debate Debacle in Race to Oust Unpopular Macron
http://www.france24.com/en/france/20220420-live-macron-and-le-pen-face-off-in-debate-ahead-of-french-presidential-run-off
Macron and Le Pen clash on Russia, economy in feisty debate ahead of presidential run-off
ルペンは親ロシア・親プーチンの傾向がある。米国が数年前からロシア敵視の戦
略をとって欧州にも強要し、マスコミなどがロシア敵視のプロパガンダで欧州を
席巻するなかで、ルペン=ロシアの傀儡=売国奴という図式がマスコミ権威筋や
左翼のなかで定着してきた。しかし今回の選挙に際してルペンは「ロシアの傀儡」
という印象をかなり払拭している。4月14-15日の世論調査で「ルペンは親露す
ぎるか」という問いに対し、はい43%、いいえ45%だった。また同じ調査で、ロシ
アのウクライナ侵攻が今の最大の懸念要因だと答えた人は7%(マクロン支持者だ
けだと11%)しかおらず、フランスにとっての最大の脅威は何かという問に対し
ても、テロ33%、中国22%の順で、ロシアは第3位の20%だった。マスコミがロシア
の脅威をいくら誇張しても、フランスの市民はそれに乗せられていない。ルペン
をロシアと結びつけて非難する上からの策略も効果が落ちている。
http://www.express.co.uk/news/politics/1596852/French-election-marine-le-pen-emmanuel-macron-poll-latest
French election: Le Pen may be on verge of shock win with horror undecided stat for Macron
https://www.france24.com/en/live-news/20220413-france-s-le-pen-wants-nato-russia-rapprochement
France's Le Pen wants NATO-Russia 'rapprochement'
人々の懸念は、ロシアやウクライナでなく、ひどくなるインフレ(庶民の生活苦)
や、貧富格差の拡大、コロナ対策の愚策な都市閉鎖が続いたことによる経済破綻
であり、それらはマクロンの経済政策の失敗とみなされている(それらは先進諸
国全体の傾向で、どこの国で誰がやってもうまくいかないが)。マクロンの経済
政策への評価は、賛成37%、反対59%だ。今の最大の懸念要因はインフレによる
生活苦だと答えた人が54%いた(ルペン支持者だけだと69%)。「フランスは正し
い方向に進んでいるか」という問いに対し、いる38%、いない62%だった。マクロ
ンは2017年の大統領選で、エリート支配を壊して、正しい方向に進んでいないフ
ランスを方向転換して良くすると宣言して当選した。しかし就任後のマクロンは
エリート支配に絡め取られ、事態を変えられなかった。
フランスの貧困層から見るとマクロンは、庶民の現実がわかっていないエリート
な官僚機構を象徴する存在になっている。フランスにはもっと過激にエリート支
配に対抗する指導者が必要だ。そういう流れで右翼のルペンが有権者に注目され
ている。北アフリカや中東からの移民・経済難民を安直に受け入れすぎてあふれ
ている移民問題でも、移民に寛容な中道派が国民に失望されている。エリートが
主導する中道の右派と左派は、安い労働力が増えるという資本家的な隠れた意図
から、人権擁護を口実に移民を入れてきた。もっと左にいる左翼も、人権擁護の
立場から移民に寛容だった。しかしフランスだけでなく西欧全体が、不用意に移
民を受け入れすぎて大失敗しており、ほとんどの人がそれに怒っている。移民受
け入れに明確に反対している右翼の支持が増えるのは自然な流れだ。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-10697795/Shock-Emmanuel-Macron-new-poll-predicts-Marine-Le-Pen-sneak-surprise-victory.html
Shock for Emmanuel Macron as new poll predicts Marine Le Pen could sneak a surprise victory in French election
ルペンは「極右」とレッテル貼りされている。「極右」は印象として「テロリス
ト」「過激派」に近い響きであり、この呼び方自体が誹謗中傷を含んでいる。実
際のルペンは「保守的なポピュリズム政治家」だ。米国のトランプに近い。トラ
ンプは、二大政党制(エリート主導の2政党しか認めない体制)の右側の共和党
から当選したが、大統領の4年間とその後の展開を通じてトランプは共和党のエ
リート主導体制を破壊し、共和党を自分が主導する保守的なポピュリズム政党に
変質させた。米国のエリート支配を破壊したトランプは、エリート支配の一機能
であるマスコミ権威筋から猛然と攻撃・誹謗中傷され、2020年の大統領選で民主
党側から不正をやられて落選させられた。だが、その後もトランプは保守的な人
々から強く支持され、「トランプ党」と化した共和党と合わせ、今年の中間選挙
(議会選挙)と2024年の大統領選で返り咲きそうな勢いだ。
https://technofog.substack.com/p/the-unstated-scandal-the-cia-collected
The Unstated Scandal: The CIA Collected Info On President Trump
https://tanakanews.com/210513GOP.htm
米国政治ダイナミズムの蘇生
ルペンも大統領に当選した場合、トランプと似たような展開をEU全体に引き起こ
す。米国でも欧州でも、エリート主導の中道右派・左派の政治勢力は、移民問題、
貧富格差、インフレ、コロナ対策、ウクライナ戦争(ロシア敵視)などの諸問題
で(諜報界の隠れ多極主義=米覇権自滅派から仕組まれて)連続して失敗せられ
ている。トランプやルペンなどの保守派のポピュリスト指導者が出てきてエリー
ト支配体制を潰しにかかるのはまっとうな流れだ。
https://tanakanews.com/211226corona.htm
コロナ帝国の頓珍漢な支配が強まり自滅する欧米
https://tanakanews.com/220326russia.htm
ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧
エリート側は猛反撃する。エリート支配体制の一部である官僚機構(検察や捜査
機関)は、トランプやルペンらポピュリスト政治家にロシアゲートに象徴される
犯罪の濡れ衣をかける。ルペンも、すでにEUから横領の容疑をかけられている。
マスコミ権威筋は、トランプやルペンを危険人物として描き、大統領として不適
格だと客観報道を装った誹謗中傷を流し続けて潰そうとする。世論調査も不正に
操作される。エリート側はルペン勝利を全力で阻止しようとするだろうから、今
回の仏大統領選でも、もしかすると選挙不正でマクロンの勝ちになるかもしれな
い。そこまでやれない場合、スキャンダルが用意されたりする。
http://www.strategic-culture.org/news/2022/04/11/be-prepared-for-smear-campaign-against-le-pen-whose-ideas-threaten-the-eu-as-we-know-it/
Be Prepared for a Smear Campaign Against Le Pen Whose Ideas Threaten the EU as We Know It
インフレや貧富格差の是正は、誰がやってもうまくいかない。ポピュリストがや
っても失敗する。「ポピュリズムは人気取りでしかない」というエリート側や左
翼の指摘は、その点であたっている。しかし、重要な点はそこでない。大事なこ
とは、エリートの代理人が失敗して落選し、ポピュリストが当選して、その後に
仕掛けられたスキャンダルなどの妨害工作を乗り越えて何年も政権を握ることで、
それまでのエリート支配の構造がはっきり暴露されていくことだ。エリート支配
の構造がうまく露呈すれば、もうエリート支配の構造に戻れなくなり、巨悪の
不正がやれなくなる。トランプは1期4年しかやれなかったが、米国の諜報界や
軍産マスコミ権威筋の不正な構造がけっこう露呈した(それをマスコミが報じな
いので皆が知るところになっていないが、私はけっこう分析した)。ルペンが仏
大統領になると、これまで見えていかなったEU中枢の構造的なインチキさが見え
るようになるかもしれない。
https://tanakanews.com/180724trump.htm
軍産の世界支配を壊すトランプ
https://tanakanews.com/180807intelli.php
軍産複合体を歴史から解析する
https://tanakanews.com/191227scandals.htm
米英諜報界内部の暗闘としてのトランプのスキャンダル
EUの捜査当局は4月19日、ルペンが欧州議会の議員だった2004年ごろに資金を横
領した疑いで捜査していると発表した。EUは、決選投票の5日前に18年前の疑惑
を急に蒸し返してきた。これは明らかに、EUがルペン当選の可能性を高いと考え、
エリート支配機構であるEUの脅威になりそうなので妨害策を打つことにしたもの
だ。ルペン当選の可能性が高いのだ。しかし捜査開始の宣言は、フランスでルペ
ンの得票を減らす効果をもたらすものなのか??。私から見るとかなり疑問だ。
フランスで、ルペンが嫌いな人は「やっぱりルペンは悪いやつだ」と思うだろう。
しかし彼らはもともとルペンに入れないので関係ない。ルペンが好きな人の多く
は、もともとEUが嫌いだ。今回の捜査開始を知って、EUが脅威に感じてルペン
当選を妨害しようとしている、EUは許せない、絶対にルペンを当選させる、絶
対投票に行くぞ、とルペン好きは思う。EUの妨害策は見かけと裏腹に、ルペンの
得票を増やしている。
https://summit.news/2022/04/18/eu-exhumes-18-year-old-embezzlement-charges-to-derail-le-pen-presidential-bid/
EU Exhumes 18 Year Old Embezzlement Charges To Derail Le Pen Presidential Bid
・・・とか言いつつも私は、決選投票でルペンが勝つ可能性が高いと言い切れな
い。接戦になるのは確かだ。ルペンが勝ちそうも感じもするが、選挙は水ものな
ので、どちらが勝つかはわからない。今回の題名は「ルペンが勝ちそう」でなく
「勝つかも」にしておいた。山勘としては「勝ちそう」だ。欧州全域で、ルペン
やオルバンに象徴される保守派のポピュリストが優勢になる傾向が続いているの
も確かだ。今回でなくても、ルペンやその系統の勢力が、フランスなど全欧各地
で勝っていくようになる。
http://kirkegaard.substack.com/p/forecasts-for-the-2022-french-election
Forecasts for the 2022 French election
欧州では4月4日にハンガリーで議会総選挙が行われ、右翼で現職のオルバン首相
の与党フィデス(市民同盟)が一院制議会の6割を占めて圧勝し、4期目に入っ
た。オルバンの勝利は、保守ポピュリズムが欧州で台頭している流れを示した。
オルバンのハンガリーはロシア敵視を拒否しており、重要事項で全会一致が原則
のEUは、対露制裁などのロシア敵視策でハンガリーに拒否権を発動され、決定不
能に陥っている。ハンガリーは東欧の小国だが、フランスはドイツと並ぶ大国だ。
世界の5大国(国連安保理常任理事国、P5)の一つでもある。フランスでルペン
が勝つことは、トランプの台頭と並ぶ、国際政治の大転換となる。EUは対露制裁
をやれなくなる。対露制裁の天然ガス輸入禁止が実施されると経済が崩壊する
ドイツなどは、ルペンの当選をひそかに期待しているかもしれない。
http://www.revolver.news/2022/04/debunking-the-lying-press-why-hungary-is-more-of-a-democracy-than-the-us/
Debunking the Lying Press: Why Hungary Is More of a “Democracy” Than the US
http://www.zerohedge.com/political/latest-humiliation-pollsters-hungarys-pro-putin-pm-orban-wins-avalanche-re-election
Pollsters Humiliated As 2 Pro-Putin Parties Win Avalanche Victories In European Elections
ルペンが勝ったらどうなるかは、勝ってから分析することにする。ルペンはNATO
の軍事部門から離脱するが、EUからは抜けず、むしろEUを混乱させる。フランス
は1966年から2009年までNATOの軍事部門に入っていなかった。ルペンはフラン
スをその状態に戻す。ルペンは「石油ガス輸入停止などの対露制裁は、ロシアを
打撃せず、欧州の経済を自滅させるだけのハラキリ戦略なので反対だ」と言って
おり、もし当選したらEUの対露制裁策を潰しにかかる。マクロン勝利なら、これ
までと同じ冴えないエリート支配の延長になる。
https://www.politico.eu/article/le-pen-vows-to-keep-russia-close-to-prevent-an-alliance-with-china/
Le Pen vows to keep Russia close to prevent an alliance with China
http://tass.com/economy/1440759
Blocking Russian oil, gas imports would mean hara-kiri for Europe, says Le Pen
https://www.argusmedia.com/en/news/2323996-french-election-could-make-or-break-eu-russia-oil-ban
French election could make or break EU Russia oil ban
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/220422LePen.htm
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