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大ロシア復活を夢見るプーチン ウクライナ侵攻と1938年のナチスの各地への侵攻は似ている 三枝成彰の中高年革命
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/302118
2022/03/05 日刊ゲンダイ
プーチン大統領(C)ロイター/POOL
1938年、ナチスはドイツ系移民の多く住むチェコスロバキアのズデーテン地方(現在のチェコ)に侵攻した。翌39年、ナチスはポーランドに、そしてフランスに相次いで侵攻した。チェコやポーランド在住のドイツ系移民の保護が建前だったが、目的は第1次大戦の敗戦で失った領土を取り戻し、「大ドイツ」の名誉を回復するためだった。そのとき国際社会は徹底的に非難したが、止めることをしなかった。それがナチスの増長を促し、その後の各国への侵攻を許したともいえる。
今回のウクライナ侵攻と、ナチスの各地への侵攻はよく似ている。プーチンは30年前の民主化で著しく弱体化したロシアを、かつての「大ロシア」に戻したいのだろう。1991年のバルト3国および連邦構成国15のうち14カ国の独立を経て、ロシアの人口は2億8000万人から半減して約1億5000万人になった。ワルシャワ条約機構は解散(ソ連を含む6カ国。東独は90年の統一でNATOに編入)、GDPも半減して世界11位だ。
強い指導者、強い国──20世紀初頭に世界を席巻した力への志向が、100年後の現代にも蔓延(まんえん)し、ファシズムを呼び起こしている。元共産圏のロシアと現在も共産主義の中国もファシズム化している。
アメリカも一概にロシアを非難できない。9.11テロの後、大量破壊兵器保有の疑いでイラクに戦争を仕掛け、フセインを殺した。9.11自体、当時のG・W・ブッシュ政権の陰謀で起きたともいわれる。
フセインが原油取引の決済をドルからユーロに変えようとしたのが理由だともいわれ、ドルの権威を守りイラクを悪者にすべく周到に準備され実行された“自作自演”だという見方もあり、多くの人が事件の不自然さを指摘している。この一連の出来事は「自由の国」ですら自国の利益のためには他国民の自由と主権を踏みにじるのだと世界に知らしめた。
大国が小国を力で圧倒して従わせるのが20世紀以前の世界では当たり前だった。21世紀の世界はそこから脱却しかかっているが、今回の侵攻でいまだにロシアは古い価値観のままでいることが示された。
ウクライナの国民はモンゴルの血をひくともいわれるコサックの末裔(まつえい)だ。勇猛果敢で独立自治を重んじ他国の干渉には簡単に屈服しない。プーチンはその強さを受け継ぐウクライナの人々を、かつての同胞だからと見くびりすぎた。
日本も彼らと戦った経験がある。1905年の日露戦争中の奉天(現在の瀋陽)で、露軍10万のコサック兵に対し秋山好古少将率いるわずか8000の支隊が立ち向かい、善戦してこれを退けた。司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」にも描かれた。
プーチンは、ウクライナを勝ち取って“男”になりたいのだろう。しかし、いま世界から求められる理想の男子は昔ながらのマッチョではなく、中性的で美しい優男だ。世の中の変化を彼は理解せず、相変わらず肉体を誇示したり男らしさをアピールしている。その時代錯誤が「大ロシア」復活への志向と重なったのだろう。
小国が大国に打ち勝った例は他にもある。フィンランドが1939年から44年まで2度にわたりソ連の大軍の侵攻を受け、領土の一部を失ったが、国の存続は保たれたのだ。
ウクライナは長い間ロシアの一部で、その関係性は日本の本土と沖縄よりも濃かった。それが独立するのは体の一部を切り離されるようでプーチンには耐え難かったのだろう。だがもはやそれが通る世の中ではないことを彼は読み違えた。
ウクライナの人たちはどうか命を大切にしてほしい。ひと月、耐え抜いていただければ必ず世界は動き、ロシアを退けることができる。
もう力の時代ではない。必ず事態は好転する。
三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。
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