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2021年12月7日 17時30分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/147378
第11回アガサ・クリスティー賞の大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』が、12月の刊行から増刷を重ねるなど、話題を呼んでいる。第2次世界大戦における旧ソ連軍の女性狙撃兵たちの視点から過酷な戦場を描いた、骨太のデビュー長編だ。著者の逢坂冬馬あいさかとうまさん(36)は「特殊な人たちは出さないようにした。普通の人たちが殺戮さつりくに明け暮れるようになる過程を追体験する作業だった」と執筆の苦労を語る。
◆「特異な存在、描くべきだと思った」
同作の主人公は、旧ソ連の小村に生まれた少女セラフィマ。侵攻してきたナチス・ドイツ軍に、母を含む村人たちを虐殺され、復讐ふくしゅうのため戦地に赴くことを決意する。女性兵士を題材とした理由については「各国とも兵力の枯渇に直面しながら、組織だって女性兵士を投入した国はソ連だけ。極めて特異な存在なのに、日本の小説ではほぼ書かれてこなかった。描きたい、描くべきだと思った」。
狙撃兵という兵科の特殊性にも着目した。「技術の発達で、現代の戦争は直接的に人を殺すというプロセスを遠ざけることが可能になった。しかし狙撃兵は必ず相手を直接見て狙い、死ぬところまで確認しなければならない。『戦争は殺し合い』という本質と直結した兵科」と指摘する。
◆アガサ・クリスティー賞を満点受賞
多数の資料に基づいて構築された、迫真の戦場描写には胸がふさがる。理想主義者だった少女は、物語の進行とともに優秀な兵士へと変わっていく。一方で、部隊内の女性同士の連帯(シスターフッド)を大きなテーマとして打ち出した点はユニークだ。選考でも「優れた現代小説」「まったく新しい戦争小説」と評価され、同賞では初めて、選考委員全員が満点を付けての受賞となった。
その点を逢坂さんは「非常に意識した」という。「若い女性が銃を取って戦うということがフェティシズムの対象になってはならない。ホモソーシャルの塊のような軍隊の中で、女性たちが連帯して戦う物語にすると決めた。それによって主題もラストもはっきりした」。史実と虚構のバランス、衝撃的な結末に至るまですべて計算ずくというから、その手腕は新人離れしている。
◆「大嫌いな暴力」と向き合う
20代前半から、会社勤めのかたわら年1作ほどのペースで小説を執筆。投稿してもなかなか芽が出なかったが、「初めて実際の戦争をテーマにした」という本作で飛躍を果たした。今後の執筆方針について聞かれ、こう語った。「ジャンルは変わっても、暴力というものが出てくると思う。それは自分が暴力を大嫌いだから。描くことで嫌いな理由が分解でき、内実のようなものに肉薄できると考えています」
早川書房・2090円。(樋口薫)
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