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マツダ、SUV市場への殴り込み戦略…CX-5の大胆変更に透ける、期待度の高さ
https://biz-journal.jp/2022/01/post_272333.html
2022.01.07 05:50 文=木下隆之/レーシングドライバー Business Journal
マツダ・新CX-5
日本全国にとどまらず、世界各地でSUV(スポーツ用多目的車)が隆盛なのは明らか。となれば、豊富なラインナップを揃える主要メーカーのほとんどが、売れ筋のSUVをカタログに揃えるのも道理だ。
たとえば、国内最高級ブランドであるレクサスにおける最多量販モデルは「RX」だという。大きなボディをユラユラと走らせる。お世辞にも安価とはいえない高級なモデルが次々と売れていく。続いて人気なのは「NX」。メーカーによって事情はさまざまとはいうものの、SUVが儲け頭であることに違いはない。おのずとSUVの開発に力を入れることになる。当然、マツダも同じ戦略だ。
今回、マツダは主力モデルであるSUVに大きくメスを入れた。その年ごとに最新の技術を盛り込む戦略を推し進めているマツダは2021年末、「CX-5」の年次改良モデルを発表。販売戦略的に鮮度を保つためのカンフル剤とはいうものの、マイナーチェンジの域を超えた大胆な変更が僕を驚かせたのである。
デザイン的な意匠変更はささやかなものだ。フロントライト周りが切れ長な印象になり、マツダのデザイン的思想としている「引き算の美学」を進めた。慌ただしいキャラクターラインを減らすことで、塊感を演出。筆遊びではなく、鍛造の美学ともいえるデザインになった。だが、それは先代を横に並べて見比べて初めてわかる程度の変更である。
ただし、マイナーチェンジとしては異例なことに、ボディ剛性にも手を加えた。設計し、開発し、その図面を基に工場のラインに流す大量生産技術において、ボディに手を加えるのは生半可な努力ではない。それをやってのけたのだから、マツダのCX-5への期待度の高さが想像できるというものだ。
シートの取り付け剛性にも手を加えている。特に不具合があったわけではないシートなどに細工をする姿勢を見ても、本当にマツダは実直なメーカーだと思う。つまり、印象をガラリと変える細工をせずに、人目につかない裏の部分に力を込めたのである。
■マツダ、CX-5の販売戦略とは
販売戦略的にいえば、この手法はすぐにCX-5の販売をブレイクさせる効果にはならないだろう。だが、乗ってみればそれは明らかで、走りの質感の高さを意識できる。乗らず嫌いの人に訴求する効果は薄くても、仮に一度でもステアリングを握ってもらえれば虜にできる、そんな手法なのだ。謹厳実直なマツダらしい。
ただ、マツダとしては珍しく、ライフスタイルの提案をした。CX-5に高品質で都会的なイメージを与えてきた「エクスクルーシブモード」に加え、ドライバーの気持ちの昂りを期待したアクティブな「スポーツアピアランス」と、都会と自然を行き来するに相応わしい「フィールドジャーニー」を設定したのである。
特に印象的なのは、アクティブなアウトドアシーンを色濃く演出した「フィールド・ジャーニー」の躍動感である。車輪が浮いてしまうような荒地での踏破性を高める細工がなされている。道なき道を突き進むほどタフなモデルではないが、野山を求めてドライブする姿が想像しやすい。洗練度が強いCX-5で泥遊びをすることなど、これまでは想像できなかった。つまり、CX-5で新たな扉を開こうとしたのだ。
うがった見方をすれば、SUVがセダンの市場を奪おうとしているだけではなく、市場が多様化してきていることの表れだ。リソースが限られているマツダが、人気のCX-5の個性を分散させようというわけである。
群雄割拠のSUV市場に乗り込んだCX-5への期待度は高い。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)
●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。
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