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日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ 特別寄稿
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/299714
2022/01/10 日刊ゲンダイ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
今年は過去にないほど先行きが見通せません。考えられる最も恐ろしいシナリオについてお話ししましょう。
世界中で突如としてインフレが再来しています。米FRB(連邦準備制度理事会)はこのインフレを一時的な現象と見るのをやめ、本格的な対応にシフトし始めました。英も利上げに踏み切り、EUもおおむね同様の方向です。それに対し、全く違う世界にいるのが日本。グローバルな展開からデカップリング(分離)してしまった日本に、これから何が起きるのか。とても気がかりですが、いよいよ日本経済がミイラ化する恐れがあると思います。
日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス(国外脱出)が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です。
それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。
そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです。
賃上げしない大企業には懲罰を
「聞く力」=朝令暮改というフワフワ男のアホダノミクス(岸田首相)に対応力があるとは思えません。軟弱男に任せてはおけないと、自民党内の強硬派や、あるいは日本維新の会あたりが強権発動に動くかもしれません。
あたかも戦間期における軍部のようなヤカラが出てきて、厳しい経済運営をテコに、「軟弱なことを言っている場合じゃない」と憲法改正の議論も進んでいく。21世紀の2.26事件のような空恐ろしさを覚えるシナリオです。縁起でもありませんが、これを極論だと笑っているのは危うい。最悪シナリオを何としても避ける知恵が求められます。
まずは賃金が上がらないという閉塞状況からの脱却が急務でしょう。しかし、アホダノミクスの賃上げ政策はいただけない。「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです。もっと思い切った歯切れのいい政策を打ち出すべきなのです。
はやりのSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境、社会、ガバナンス重視の投資)では、「まともな賃金を払う」ことが重要なアジェンダになっています。これを盾に取って企業に賃上げを求めるという手もあるでしょう。賃上げをしなければ投資家に敬遠されたり、企業イメージがダウンしたりしますよ、という形で脅しをかけるのです。そうでもしないと、なかなか歪んだ経済実態をあるべき姿に戻していくことは難しいでしょう。異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません。
浜矩子 同志社大学教授
1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、主席研究員を経て、2002年から現職。「2015年日本経済景気大失速の年になる!」(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。
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