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トルコ:親密国造反、米に大誤算 「北からの攻撃」再検討  [毎日新聞] 【「エルドアン党首の指導力にも疑問符が付けられた格好」だって、対米危機と米軍駐留問題を絶妙な政治・外交手法で回避しているのだから、トルコ国内の称賛の的になるだろう − 世界は見えたままの単純さで動いているわけではない −】
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/1358.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 03 日 00:59:23:


 トルコ国会は1日、対イラク戦に向けた米軍駐留承認案を否決し、着々と開戦準備を進める米軍に強いブレーキをかけた。北大西洋条約機構(NATO)の一員であり、イスラム教国でもあるトルコが、米国に「ノー」を突き付けた意味は重い。トルコ政府が早い時期に修正案を提示し、最終的に国会承認を得たとしても、3月中旬の攻撃開始をめざす米国は、「北からの攻撃」の練り直しを迫られそうだ。 【ワシントン中島哲夫、アンカラ山科武司】

 トルコ国会が対イラク戦に向けた米軍駐留承認案を否決したことで、密接だった米・トルコ関係に亀裂が生じかねない事態となった。ギュル首相は修正案提出の意向を示唆したが、与党・公正発展党(AKP)の100人近い議員が造反して「駐留反対」に回っただけに、修正案の審議にも曲折が予想される。絶大な人気を背景に同党を率いてきたエルドアン党首の指導力にも、疑問符が付けられた格好だ。

 00年11月、02年2月と2度の金融危機に見舞われたトルコ経済は、依然深刻で、IMF(国際通貨基金)の支援なしには立ち行かない状況にある。米国からの経済支援がなければ、IMFが融資見直しの検討を始めるのは避けられず、経済面からも、米軍駐留承認という対米協力は当たり前とみられていた。それが国会の否決で、一転して不透明な状況となった。

 イスラム穏健派を中心とした与党AKPは、前政権の経済政策を批判し、低所得者に加えて中道層の支持も獲得、昨年11月に政権を掌握した。市長としてイスタンブール市の構造改革に成功したエルドアン党首のカリスマ的人気もあって、盤石の体制を誇っていた。

 今回の対米協力問題でもエルドアン党首は、先月下旬に国会への提案が具体化するまでは、強い世論の反発を考慮して協力問題に言及せず、あくまでも「平和的解決」だけを唱え続けた。

 2月下旬になってようやく協力の重要性を訴え始め、「党で政府案に同意した場合には一致して協力する必要がある」と、党内の結束を呼びかけるようになった。

 国会審議を、事実上の最高意思決定機関である国家安全保障会議(2月28日開催)後に設定したのも、同会議で対米協力の「お墨付き」を改めてもらうことで、「自党は悪者にならずに済む」(外交筋)との計算があったとみられている。

 結果は裏目に出てしまったが、エルドアン党首は否決後、「全く民主的な結果だ」と語るにとどめた。ギュル首相が国会に修正案を提出する場合、駐留米軍の規模縮小や米国の経済支援増額を含めた「懐柔策」が必要になりそうだ。しかし、修正案を提出するにしても、米国との協議や国会内での根回しが必要で、早期承認は容易ではないとの見方も強い。

 米国務省の報道担当官の一人は「トルコ側に説明を求め、最終決定の結果を待つ」と語り、再度の採決による米軍駐留承認への期待を示した。しかし、3月中旬のイラク攻撃開始を準備する米国にとって、トルコ国会の否決は大きな誤算であり、作戦計画の大幅な修正を余儀なくされる可能性もある。

 米国は、イラク北辺のトルコと南のクウェートからフセイン政権を挟撃する作戦を立て、兵力6万2000人と300機以上の作戦機の駐留許可をトルコに要請、見返りに巨額の経済支援を提示していた。国会承認を当て込んで、戦車などを満載した米輸送船がトルコ沿海で待機、一部の装備は既に陸揚げが始まっているという。

 フライシャー米大統領報道官は最近、トルコが米側要請を拒否しても米軍には他の対策があると述べていた。ロイター通信によると、イラク北部のクルド人支配地域には、米軍輸送機の発着に使える滑走路が多数あり、これらを使って陸上部隊を送り込む代案があるという。

 しかし、大規模部隊を迅速に空輸するのは不可能で、短期間のうちにフセイン政権の壊滅をめざす作戦に支障が出るのは避けられないだろう。

 米主要紙によると、フランクス中東軍司令官は、トルコ沖に待機している20隻以上の艦船をスエズ運河経由でペルシャ湾岸に移動させる代替案も検討している。その場合、クウェートなどに運んだ装備をイラク北部に空輸する必要があるため、作戦計画に大きな負担が生じそうだ。

 北大西洋条約機構(NATO)の一員であるトルコは、イラクの飛行禁止空域を監視する米英軍機の基地使用を容認してきたが、イラク攻撃については国内で反対論が高まっている。トルコが最終的に米軍駐留を認める可能性もあるとはいえ、今回の国会の「ノー」は、米側の読みの甘さを示したとの見方が強い。

 また、イラクが国連決議違反とされた弾道ミサイル「アルサムード2」の廃棄を始めたことも、対イラク戦を急ぐ米国にとっては「逆風」になっている。ブッシュ大統領は、時間稼ぎの「欺まん作戦」と決め付けていたが、イラクが順調にミサイル廃棄を進める限り、「査察は効果を上げており、戦争を急ぐ必要はない」という国際的な反戦世論が勢いづくのは確実だ。

[毎日新聞3月3日] ( 2003-03-03-00:03 )


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