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【イラク南部バスラで小倉孝保、和田浩明】苦痛に顔をゆがめて泣き叫ぶ赤ちゃん。息も絶え絶えに一点を見つめる少女――。湾岸戦争(91年)で米軍が使用した劣化ウラン弾によるとみられる被害が最も大きいイラク南部バスラの病院は11年以上たった今も戦場のようだ。国連経済制裁のため薬も十分に届かない。米が準備を進める新たな攻撃が、こうした悲劇に追い打ちをかけるのは間違いない。
16日午後、市内を流れる川を望むバスラ教育病院。包帯が巻かれたカラール君(9)の額に、父親のモハメドさん(50)はいとおしげにキスを繰り返した。脳腫瘍(しゅよう)の手術を終えたばかりのカラール君は、同市ハルサ地区出身。劣化ウラン弾によるとみられるがん患者が多発している地域という。
カラール君は医者になるのが夢の小学生だった。得意な学科は国語。元気な毎日を送っていたカラール君が頭痛を訴えるようになり、脳腫瘍(しゅよう)と診断されたのは1年前だ。手術を受けたが、腫瘍(しゅよう)のすべてを取り除くことはできなかった。今後、設備の整った首都・バグダッドの病院で放射線治療を受けることになる。タクシー運転手のモハメドさんの肩に、交通費などの負担が重くのしかかる。
別の病室では、4人の子の母親のインアムさん(36)を、親類の女性らが見舞っていた。インアムさんに乳がんが見つかったのは10カ月前。以来、毎月同病院に3日間入院、化学療法を受けている。めいのヘジールさん(26)は「痛みがひどく苦しんでいます」と話す。
バスラ小児婦人科病院に入院するゼイン君(5)は5カ月ほど前、突然、腹部がはれ、白血病と診断された。ゼイン君は日に日に元気がなくなり、はしゃぐこともできない。母セマーヘルさん(25)は「米国は、戦争が何代にもわたって私たちを苦しめることを知ってほしい」と訴えた。
また、3年前に白血病と診断されたアッバース君(5)は、母ハムディさん(30)の横で静かに眠っていた。薬の影響で頭髪が極端に薄い。ハムディさんは「苦しむ我が子を救ってやれないのがつらい」と話した。この病院のジャセム医師(32)は「戦争の被害は一時のことではない。その後、将来にわたって罪のない人たちを苦しめる」と語る。
バスラの病院では体に障害を持って生まれてくる赤ちゃんが急増。そうした赤ちゃんのほとんどが誕生から数時間で息を引き取るという。
[毎日新聞12月17日] ( 2002-12-17-11:48 )