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日銀はデフレを望んでいる  (森永 卓郎)
http://www.asyura.com/2003/hasan21/msg/590.html
投稿者 TORA 日時 2003 年 2 月 11 日 21:17:03:

特集


日銀がインフレターゲットの導入を頑なに拒むのはなぜか。
それは、日銀自らがデフレを望んでいるからだ。


もりなが たくろう 森永 卓郎
(経済アナリスト)


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日銀はデフレを望んでいる
 昨年4月の「月例経済報告」で、政府は景気の底入れ宣言を行った。景気回復の実感はなかったとは言うものの、生産が増え、在庫は順調に減っていた。景気の水準としては最悪だったが、方向としては明らかに改善に向かっていたのである。

 ところが、この景気回復への小さな芽は育つことがなかった。昨年10月頃をピークに、景気は後退へと向かってしまったのだ。

 「政府と日本銀行とが一体となってデフレ克服に取り組む」。政府も日銀もそう言っているのに、日本経済がデフレから脱却する気配はまったく見えない。一体、なぜなのだろうか。


「逆噴射」という暴挙

 ここに興味深いデータがある=図。日銀による資金供給の姿勢を示すマネタリーベース(現金プラス日銀当座預金)の前年同月比伸び率だ。景気の底入れ宣言をする昨年4月まで、日銀は資金供給の伸び率を増やしていった。それが景気回復の一因となったことは間違いない。

 ところが、景気の底入れが確認された昨年4月の36・3%をピークに、日銀は資金の伸び率を急速に絞り始め、今年1月にはついに13・4%まで絞ってしまったのだ。景気回復初期に資金を絞るという逆噴射をしたのである。これはマクロ経済政策の一翼を担う機関として、許されない暴挙である。だが、実は日銀による金融政策の逆噴射はこれに始まったことではないのだ。

 小渕内閣の財政出動は効果がなかったとする論者が多いが、データをみるとそれは間違っている。1999年度の日本経済はプラス成長となり、2000年1月には日経平均株価が2万円を超えた。小渕政策で景気回復のチャンスが巡ってきたのだ。このときのマネタリーベースの伸び率は23%だった。

 ところが、同年8月11日に行われたゼロ金利解除に備えて、日銀は年初から急速に資金を絞っていった。23%あった資金の伸び率は、急降下して12月にはマイナスに、そして01年1月にはついにマイナス6%まで絞られたのである。景気回復初期の強力な金融引き締めの”効果”は大きかった。これをきっかけに日本経済は深刻なデフレスパイラルへと転落してしまったのだ。

 景気が回復しようとすると、金融を引き締めて景気の芽を摘むことを繰り返す。果たしてこれは、単純な判断ミスなのだろうか。

 そのことを考えるうえで重要な日銀の行動がある。

 90年、バブルを破裂させるため、日銀は強力な金融引き締めに出た。公定歩合は、8月30日に6・0%にまで引き上げられた。そして10カ月にわたる金融引き締めの後、バブル崩壊を確認して、日銀は金融緩和に出た。91年7月1日に公定歩合を5・5%に引き下げた後、小刻みの引き下げを重ね、92年7月に公定歩合は3・25%まで下げられたのである。

 バブル崩壊後は、景気を重視して、日銀は機動的な金融緩和に転じた。公式にはそういうことになっている。

 ところが、これを資金供給の面からみると、様相は全く違ってくるのだ。日銀が金融緩和に転じた後、マネタリーベースの伸び率は、91年11月から92年10月まで、1年間マイナスを続けているのだ。

 金融緩和をしていると言いながら、実際には資金を絞る。バブル崩壊後の深刻な景気後退をもたらしたのは、日本銀行の隠れた金融引き締めだったのだ。

 日銀はデフレを望んでいる。そう考えると、政府の要請にもかかわらず、日銀が強硬にインフレターゲットに反対する理由も明らかになってくる。

 そもそも、いま検討の俎上にのぼっているインフレターゲットは、消費者物価指数で1〜3%を目指すというマイルドなものだ。

 消費者物価指数には算定上、1〜2%の上方シフトがあるので、インフレターゲットはゼロインフレ、すなわちインフレでもデフレでもない状況を実現しようとするものだ。つまり、日銀の責務である「物価安定」に数値目標を設定しようとするだけのものである。

 ところが、日銀はインフレターゲットの導入を頑なに拒否している。当然だ。もしインフレターゲットを導入されたら、デフレ期に金融を引き締めるといった逆噴射政策がとれなくなってしまうからだ。


デフレ願望の理由は何か

 それでは、日銀はなぜ、デフレを続けたいのだろうか。日銀は口が裂けてもデフレを続けたいとは言わないから、本当のところはわからない。しかし、いくつかの可能性を考えることはできる。

 第一は、天下り先の確保だ。日銀職員の天下り先は、地銀や信用金庫に集中している。

 もしデフレが解消して金利が上昇すると、国債の価格が下落する。国債を持つ金融機関に大きな評価損が発生するのだ。

 都市銀行の場合は、国債と同時に株式を大量に保有しているので、デフレ解消に伴う国債の評価損は、株式の値上がりで相殺することができる。しかし、株式をあまり保有していない地銀や信用金庫の場合は、国債の評価損をそのまま被ってしまうのだ。もし、デフレ解消で地銀や信用金庫の破綻が相次げば、日銀の天下り先が減ってしまう。天下り先の確保を何よりも優先する役人の行動原理から考えれば、日銀がデフレ解消をためらう動機としては十分だろう。

 第二の可能性は、責任の回避である。デフレは金融問題であり、世界中でデフレに陥っているのが日本だけであることを考えても、デフレの責任の大部分が日銀にあることは明らかだ。ところがわが国には、なぜかデフレの発生に関して中央銀行の責任を追及する習慣がない。一方、インフレになれば中央銀行の責任は厳しく追及される。だったら、デフレを放置しておいたほうが、保身になる。

 速水優総裁は「インフレタゲーゲットは、経済や金融を不安定化させる危険な賭けだ」と繰り返し発言している。インフレターゲットの効果は認めながらも、一度インフレに火がつけば、それを抑えられなくなる心配をしているのだ。

 確かに大蔵省の支配下にあった時代には、金融引き締めに対する政治の介入があって、思うような引き締めができないことがあったのは事実だ。しかし、98年に改正された日銀法で、日銀総裁には完全な独立権が与えられた。また景気停滞下でのゼロ金利解除という金融政策の逆噴射を実行しているのだから、インフレ高進時に引き締めができないはずがない。だから単に「リスクを取りたくない」と考えていると理解するのが妥当だろう。今のように何の仕事もしなくても、日銀総裁は首相並みの高い給与をもらえるのだから。

 第三の可能性は、日銀が「物価は下がれば下がるほどよい」と思い込んでいるということだ。

 日銀は「日本銀行券」という商品のメーカーであるから、自社製品が値上がりするデフレは生理的にうれしいだろう。長らくインフレファイターとして仕事をしてきた実績もある。

 しかし、それ以上に、物価が下がるほどよいというのが一種の「教義」になっている可能性が強いのだ。


 「良いデフレ」論のまやかし

 さすがに今は言わなくなったが、つい最近まで日銀は「良いデフレ」論を繰り返していた。今のデフレは、安い中国製品の輸入やIT革命の進展によるコストダウンが原因で、良いデフレだというのだ。もちろん、それは間違っている。デフレは一般物価の問題で、仮に安い輸入品が入ってきたり、コストダウンがあったとしても、十分な金融緩和を行えば、需要増や円安がもたらされて、デフレを阻止することは可能だからだ。

 ただ限定的だとはいえ、日銀がデフレを容認する発言をしてきた事実は重要だ。物価が下がるほど望ましいと考えていなければ、そんなことを口にする可能性はないだろう。

 第四の可能性は、構造改革派との暗黙の共謀である。

 デフレは需要よりも供給が大きいから発生する。だから、デフレの解消方法には金融緩和で需要を増やす方法と、供給を削減する方法の二つがある。

 日銀はこれまで、事あるごとに、構造改革や不良債権処理の必要性を主張してきた。マクロ経済政策の担い手が、なぜ越権行為で構造改革や不良債権処理というミクロ政策に口を出すのか。それは、負け組企業を市場から退出させれば、供給力が減少して、需給がバランスすると考えているからだろう。

 弱者を市場から退出させ、高生産性企業に生産を集中させれば、生産性の上昇と需給バランスの回復が同時に達成できる。それは小泉内閣の経済政策の基本理念でもある。

 もし金融緩和による需要増によって景気回復を達成してしまったら、非効率企業を市場から退出させることができなくなる。

 リスクを取りたくない日銀と「改革」を進めたい小泉政権の間で、デフレ継続の暗黙の共謀が成立しても不思議ではない。

 これまでにみてきた動機のうち、どれが最も支配的なのかを検証することはできない。ただ、日本銀行が本気でデフレと対決しようとしていないことだけは明らかだ。

 だから、デフレを脱却するために一番良い方法は、デフレと対決できる総裁を、これまでの日銀の教義に縛られない、純粋な民間から選ぶことだろう。


日銀はなぜ失敗を繰り返すのか
 Richard A. Werner
 リチャード・ヴェルナー
 (プロフィット・リサーチ・センター取締役チーフエコノミスト)

 日本銀行は1980年代に、銀行に不動産投機家への貸し出しを急増させるため、超法規的かつ非公式な金融政策ツールを利用した。いわゆる「窓口指導」である。これがバブルを生み出し、邦銀が巨額の不良債権を抱える原因となった。巨額の不良債権を抱えた銀行はリスクを回避するようになった。そのため90年代に邦銀は貸し出しをストップし、これが景気低迷をもたらす結果となった。統計によると、戦後の全期間を通じて銀行貸し出しは日本のGDP成長率の主な説明変数となっている。銀行貸し出しは新たな取引に利用できる新たなマネーを創出するため、金利やM2+CDなど他の変数は銀行貸し出しと比較すると取るに足らない要因である。

 90年代の日銀による適切な金融政策は全体的な信用創造量を確実に拡大させることだった。これは銀行の全資産が不良化していても、中央銀行がお膳立てできることである。例えば、45年には邦銀資産の100%近くが不良債権だった。当時の日銀は景気を刺激したいと考え、適切な手段を講じた。第一に、マネーを創造し、自ら国に対する銀行としての役割を果たした(債券と手形を購入し、政府と企業に融資した)。第二に、銀行の不良債権を簿価で買い取った。その結果、金融問題は解決し、信用の伸びは急速に高まり、経済成長率は一気に加速した。


政治家になりたい日銀

 日銀は90年代にどのような政策をとったのだろうか。必要なことは一切行わなかった。つまり、銀行貸し出しの不足を補うのに十分な信用の注入を行わず、銀行からの不良債権の購入を拒否した。92年、93年、95年、99年という重要な転機に、日銀は経済から信用を積極的に引き揚げることさえした。日銀の政策は景気低迷、倒産、失業率の上昇をもたらした。

 日銀はこうした政策をとった理由を隠そうともしていない。何年間も日銀の広報担当者は日銀が経済成長と物価の安定化を実際は望んでいなかったと述べている。金融刺激策とそれに続く景気回復は「痛みを緩和する」と99年に日銀金融研究所長の翁邦雄氏は述べた。痛みが少なくなると「構造調整の進展を一段と遅らせかねない。景気が回復すると、不良債権は回収可能になり、過剰な在庫は解消され、過剰設備は操業可能になる」と翁氏は説明した。速水優総裁自身、なぜこれを回避しなくてはならないのか説明した。「現在のように景気が回復すると、安心感から構造改革に対する努力が軽視される可能性が高い」。日銀幹部は政治家になりたいのだ。彼らは日本の経済社会構造を改革するという政治課題を追求している。景気が回復してしまったら、人々は日銀が計画している社会革命は必要ないと気づくだろう。

 したがって日銀が不適切な政策をとった理由は、政府の政策目標の達成失敗に説明責任がないことにあった。98年まで日銀法は、中央銀行は政府の政策を支援しなければならないと述べていた。小泉首相以前のすべての政権は景気を刺激することを望んだ。しかし、日銀はそうした政策を故意に妨害した。新日銀法でさえ、中央銀行は物価の安定を確保しなければならないと述べている。

 しかし、物価は何年にもわたり下げ続けているが、誰も日銀を罰しない。日銀のバブル生成と破綻政策の主な実行者である福井俊彦氏(富士通総研理事長)は現在、日銀総裁の「第一候補」と考えられてさえいる。インフレなき安定成長という政策目標の達成に失敗した場合に中央銀行を実質的に罰するメカニズムがないならば、日銀が目標を果たすと期待する方が無理であろう。

http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/economist/030218/1.html

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