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(回答先: >「 投稿者 Ddog 日時 2003 年 1 月 11 日 14:35:21)
QUICKエコノミスト情報VOL.77 「12月のエコノミスト情報T」 2003/01/07
低迷を続け、デフレの出口が見出せない日本経済。どこに問題があり、どんな方向に進むのか。今はどういう時代なのか。エコノミストとは別視点から複数の有識者に現状と展望を伺った。今回は、香西泰・日本経済研究センター会長です。
「"Ever Moving時代" デフレ対応の提言」香西泰・日本経済研究センター会長
【問】デフレが終息しそうにありません。
【答】デフレ圧力は非常に強い。デフレには19世紀後半の欧米の緩やかな物価下落の持続のようなじわじわとくるデフレと、1930年代の大恐慌や1990年代後半のアジア通貨危機に見られる金融機関の連鎖倒産によるデフレスパイラルがあり、原因も処方も違う。今起きている緩やかなデフレは、技術革新とアジア諸国の台頭によって内外価格差が修正され、国際価格へ否応なしに収斂していくという構造的要因を背景とするものだ。世紀全体とまでは言わないが、緩やかなデフレはかなり長期に続くだろう。
【問】脱却策はありますか。
【答】例えば、円安にしてデフレ圧力を和らげるべきとの意見もあるが、円とドルの関係はGDPベースの購買力平価でみても140円から160円台だ。購買力平価と市場為替レートの差は縮小している。問題は、日本とその周辺諸国との価格差、つまり、円/ドルではなく円/元だ。為替調整は、先進国同士なら2割程度のもので済んだが、対中国ではそうはいかない。かなりのレベルの為替調整が必要だ。しかし、中国は労働力無制限供給の段階だから、完全雇用が実現するまでは通貨を切り上げようとはしないだろう。金融政策も効かない。日銀が市中銀行に供給しているベースマネーは、2割、3割増加しているが、市中銀行が企業に対して供給しているマネーサプライは2%、3%しか増えていない。貸出にいたっては4%程度のスピードで減少している。緩やかなデフレは貨幣的現象にとどまらない根深いものがあり、日本経済はゼロ金利でも効果が出ない流動性の罠に陥っている。デフレを簡単に阻止することは出来ないだろう。
【問】インフレターゲット導入が議論の俎上にあります。【答】無理にインフレを起こせば、かつての英国のように不況で物価が上昇するスタグフレーションになるだろう。下手をすればブラジル型のインフレになるリスクもある。今はデフレ我慢を続ける時だ。むしろ、それが比較的安全な道ではないか。
【問】デフレを容認するということでしょうか。
【答】デフレ対応型の政策やビジネスを積極的に展開していくべきだ。実際に、公務員給与引き下げや失業保険引き上げなどの動きが政府レベルで見られる。年金システムもデフレ対応型になっていく可能性がある。
私自身は、本来、デフレ対応として先ず取り組むべきは金融システムの強化だと思っている。金融システムが強固であれば、今の緩やかなデフレで止まるだろうが、金融システムが弱体化したら、大恐慌的なデフレスパイラルもあり得ないことではないからだ。1930年代の大恐慌にせよ1990年代後半のアジア通貨危機にせよ、デフレスパイラルが起きたのは、過度の金融引き締めや銀行の連鎖倒産で金融システムが破綻した場合だ。デフレスパイラルの回避には、金融の量的緩和以外に金融システムを強化していくことが必要だ。
【問】具体的にどう強化すべきでしょうか。
【答】既往の不良債権を抜本的に処理し、銀行経営を強化することが急務だ。不良債権を処理してもそれだけで景気が上向くことはないし、貸し渋りや貸し倒れなどの傾向が短期的には強まることが懸念されるが、処理をしないと金融システムは不安定化して不況がさらに深刻化する。デフレ圧力の中で不良債権を処理するには、公的資金の投入も有効であろうが、金融機関がリスクプレミアムに見合って貸出金利を引き上げることが重要だ。金融機関が不良債権を処理するだけの利潤を持てば、それが不良債権への償却原資となる。自己資本は保全され、金融システムは安定化する。
【問】不良債権処理が解決すれば銀行はビジネスモデルを変えられるでしょうか。
【答】増資や不良債権処理に本格着手するなど銀行のビヘイビアは変わってきてはいるが、かなり心配な面もある。「デフレだから不良債権が増えるのは仕方がない」などの傍観的意見が未だにあるが、それならばデフレを予測していなかったのかということになる。予測していたのならデフレでも困らないような貸出先を発掘しないといけない。土地担保制度に固執せず、もっと証券化を進めるとか従来手法を変えていかないと前には進めない。あるいは、ペイオフしないのだったら「保護対象分の預金保険料は預金者に負担してもらう。そうでなければ、預金は受け取らない」、などといったようにもっとドライに商売してよいのではないか。経営が強化され、儲かる仕組みができれば、銀行は、公正、自由な市場で活躍出来る。そこで初めて橋本改革(金融ビッグバン)は成就すると思う。
【問】2003年度の日本経済の見通しは。
【答】成長率は0%〜1%。1%を超えるのは難しいだろう。株式市場は、1990年前半に異常に高かった株価収益率は歴史的に上限とされる20倍以下の水準に回帰しつつあり、正常化してきている。株価は底入れに近づいている。しかし、米国経済の先行きに不透明感が増しており、景気動向や、金融・産業再生の行方次第では下落の可能性もある。
【問】21世紀はどういう時代とお考えでしょうか。【答】明確な解決策がなく苦しい状況が続く。かつての英国や米国もそうだった。英国は、第二次大戦の戦勝国となったが、国力を空洞化させ、サッチャー政権で経済が再生するまで失われた30年を経験した。日本もそれと似たようなプロセスに入った可能性がある。今の日本には苦難に耐え得る知性と根性が必要だ。現状を維持しようとするのではなく、立ち止まらずに必要なことは早め早めに解決していく。少しでも止まったら相当なショックが起きる。21世紀はまさに"Ever Moving時代"と言えるだろう。
(聞き手・QUICK岡村健一)