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米国の政策基調はドル高 − ドル安は米国の交易条件を改善しない −
投稿者 あっしら 日時 2002 年 12 月 16 日 20:32:54:

(回答先: アメリカはドル安にしていいんですか?>あっしらさん 投稿者 楽観派 日時 2002 年 12 月 16 日 19:09:32)


楽観派さん、お久しぶりです。
まず、米国がドル安政策を採ろうとしているとは思っていません。

● ドルレートの適正水準

ドル安かドル高かを識別する基準である適正ドルレート水準がいくらかということについてははっきり言って不明です。
購買力平価で見れば1ドル=160円〜170円になるのでしょうが、サービス・流通や農産物など内国向け供給品目が数多く含まれた値ですから、それを基準に国際交易や国際投資のレートを考えるのは非合理です。

国際競争力がある産業が限られ、国際競争関係にある産業はさらに絞られてしまうので、自動車や半導体の価格変動(生産性変動)で比較するのがもっともらしいと考えています。
米国車が日本市場において真の意味で競争力があるかという問題はあります。
航空機は欧州との競争で限られ、娯楽産業やCPUは独壇場で、農産物は補助金と政治力で国際市場で戦っているのというのが現状です。
家電製品や衣料などの日用普及品は、日本や中国(アジア諸国)そしてメキシコなどに依存しています。


また、米国経済は年間4千億ドル(48兆円)もの経常収支赤字がありますから、それに相当する資本流入(資本収支黒字)が順調に行われない限り、ドル安圧力が掛かり続けることになります。

けっこう棲み分けができていると言うか、貿易収支赤字3千億ドルでわかるように民生用工業製品は援助してもらっているようなものです。(対米証券投資をしている人たちは援助しているとは思っていないでしょうが...)


ここ10数年のレート推移に基づき、1ドル=120円でもドル高水準だと判断しています。


● ドル安は交易条件を改善しない

>オニール氏が辞任してにわかにドル安になってきたが、しかし実際にドル安の効果が
>現れるのは少なくとも半年先だろう。それまではむしろ貿易赤字が増加するはず。

ドル安になれば、70年以降の過程を顧みればわかるように、米国の国際収支は悪化します。

貿易収支の赤字が3千億ドルあるということは、米国の供給力はとてつもなく不足しているということですから、ドル安が交易条件を改善するわけではありません。

強みは原油などの原材料がドル建てで取り引きされていることです。
しかし、自動車産業にしても、産業ロボットや高品質鋼板は日本からの輸入に依存しており、半導体産業も、製造装置は日本に依存しています。これらは、ドル安により、高い価格で購入しなければならなくなります。

より大きな問題は、平均的勤労者が購入する日用工業製品の輸入依存度が高いことです。ドル安により、それらの価格が高くなります。
それを補填するために給与を上昇させれば国際競争力は劣化し、それを補填しなければ、必要度の低い商品の売上が低迷することになります。


● 経常収支及び財政の赤字ファイナンス

ご指摘のように、株式市場動向や債券利回りの問題を除外しても、ドル安傾向であれば、利ざやを稼ぐ目的での対米証券投資は低迷します。

ブッシュ政権は、「ドル安になりアメリカへの資金流入が細ってもいい」とは考えていないはずです。
ドル安が不可避のものであれば、これまでのようなドル還流手法以外でドルを還流させることを考えているでしょう。

「まさか日銀がTBを大量購入する予定という可能性は?」も、日銀が円高(ドル安)に対して介入を行えば、自動的に米国財務省証券を積み増すことになります。

メガバンクの国有化→米国資本買収という「竹中プロジェクト」も、米国の国際収支や財政の赤字をファイナンスする中長期的な手段として位置づけられていると考えています。

2000年に米国のバブルが崩壊したわけですから、ドルレート如何を問わず、従来とは違ったかたちでファイナンスをしなければならないと考えているはずです。

ドル安になることで、財政赤字が増大し、経常収支の赤字も増加することは、「プラザ合意」以降の推移を見れば明瞭です。


● 中国を「米国の工場」にする理由

米国が人民元安情況を放置し対中輸入を増大させているのは、“国際買い物コスト”を引き下げる目的だと考えています。
同じ3千億ドルの貿易赤字でも、より多くの財が手に入る条件を求めているはずです。

もちろん、その結果が米国にもデフレという経済災厄をもたらし、米国の供給力はますます劣化することになります。


● ドル高が政策の基調

戦後一貫したスタンスであり、国内向けの投資や貸し出しが不調という現状ですから、米国政権は、対外投資や対外貸し出しを有利に行うために、ドル高であることを望んでいるはずです。

95年以降のバブル期のドルレートはそのようなドル流入を反映したものですから、バブルが崩壊した現在においては、経常収支の赤字幅拡大と相俟って、それを下回る水準になるのが経済論理に適合したものです。

ドル高を望む米国政権(米国金融資本)と経済論理のせめぎ合いのなかで、ドルレートは動いていくと考えています。
(願望が経済論理に打ち勝つことはできませんから、ドル安になった水準で相対的なドル高を実現するのが精一杯の政策になります)


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