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日経金融新聞
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http://www.nikkei4946.com/
「強いドルの時代は終焉(しゅうえん)するのか」――。最近のドル安傾向の背景には米国の経常赤字拡大に対する懸念と米国への投資資金の一極集中が陰りを見せていることがある。そんななか、ドルの行方を占ううえで、急速に膨らむ中国マネーの動向にも注目が集まりつつある。
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「米国経済は現在、非常に危ない状況にある」――。二十二日に東京で講演した中国国家発展計画委員会の王建常務副秘書長はこう言い切った。 中国当局者がことさら米国経済を気にするのは、貿易面だけではなく外貨資産でも対米依存度が高まっていることがある。国際決済銀行(BIS)によると、中国では一九九九―二〇〇一年の間に外貨準備高と外貨預金などを合わせて約千四百億ドルの外貨資金が発生、このうち八百億ドル程度が米国債券などに流れ込んでいる。
「中国は外貨資産の分散が大きな課題となっていることを意識している」と香港の国際金融筋は指摘する。
すでに中国は二〇〇一年末時点で二千億ドルを超えた外貨準備高の分散に手を付け始めた。外貨準備に占めるユーロの割合を約一五%から二〇%台まで拡大する方針。四月から上海外国為替取引センターでユーロと人民元の取引も始めた。
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この数年で急速に伸びてきた外貨預金にもドル離れの兆しが見える。二〇〇一年末時点の中国の外貨預金残高は千三百四十九億ドル。
六月からの増加額は九億ドルにとどまった。一九九九年から二〇〇〇年にかけて二〇%以上増加したことと比べ、伸び率は大幅に鈍化した。
二〇〇一年はドルの違法な持ち出しなどを含む「誤差・脱漏」も四十九億ドルと前年と比べて半減した。当局が頭を悩ませていた違法なドルへの資金逃避にも歯止めが掛かってきている。
クレディ・スイス・ファースト・ボストンの陶冬アジア担当チーフエコノミストは、ドルシフト鈍化の理由に人民元とドルの金利差を挙げる。二〇〇一年初めから米国が金融緩和に入った結果、元とドルの金利は昨年後半に逆転、ドルに資金をシフトする意味が薄れていると指摘する。同時に「元切り下げの思惑が払しょくされたことで、資金流出に歯止め掛かる可能性が出てきた」と分析する。
国際金融市場では四月以降、中国銀行などが邦銀などに対して積極的にドル資金の貸し出しに乗り出した。期間三カ月から六カ月の長めの貸し出しが中心だ。
欧米の銀行は米国金利の上昇リスクを考慮し、全般に資金を出し渋っているが「中国勢は、当面米国は利上げに踏み切れる状況にないと、米国債から新規資金の運用を銀行間貸し出しに移している」(大手銀)という。
ここでも中国勢の米景気に対する悲観的な見方が見て取れる。
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六月に中国は、企業や個人によるドルの保有に関する規制を緩和する見通しで、資本取引の自由化に向けて一歩踏み出す。日本同様デフレ圧力が強い中国では低金利が続くと見られ「中期的には資金はドルに流れやすい」(国際金融筋)との見方もある。
自由化により中国マネーは米国経済の先行きや金利動向に一段と機敏に反応し始める。国際市場での影響力が高まり、ドルの行方も左右しかねないかく乱要因であるのも間違いない。
(古川英治)