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【ワシントン中島哲夫】
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は19日、ブッシュ政権が20日に発表する包括的な対外政策文書「米国の国家安全保障戦略」の最終草稿を入手したとして、その全文を報じた。大量破壊兵器を開発している敵対国家やテロ組織への先制攻撃を容認しているほか、軍事力の圧倒的優位の維持、国際条約より自国の立場優先などの「ブッシュ・ドクトリン」を明確に打ち出している。
この文書は米国大統領が自らの対外政策の指針を議会に提示する恒例のもの。ブッシュ大統領としては就任後1年8カ月で初めてまとめた。
同紙が報じた全文はA4判33ページで、地球的規模のテロや地域紛争、大量破壊兵器の脅威への対処のほか、ミサイル防衛、国際刑事裁判所(ICC)、国際経済、貧困対策と民主主義拡大など、幅広いテーマに言及している。
日本については、経済の回復が米国のためにも極めて重要と指摘されているほか、米同時多発テロをきっかけにした「テロとの戦争」で前例のないレベルの軍事的支援をしたとの言及がある。また、米国と共通の利益や価値、防衛・外交上の協力に基づき、国際社会で指導的な役割を果たし続けると展望している。
◇軍事力重視、一方的外交続く
【ワシントン中島哲夫】
米紙ニューヨーク・タイムズが報じたブッシュ政権の対外政策文書「米国の国家安全保障戦略」は、同政権発足後これまでの間に多方面で散発的に浮上した特徴的な傾向を、そのまま反映している。この文書は政策の指針として議会に示されるだけに、軍事力重視の強気の姿勢やユニラテラリズム(単独行動主義、一方的外交)は今後も続きそうだ。
この「戦略」の最も顕著な要素の一つとして同紙が指摘するのは、世界最強の軍事力の優位性を維持し、他の国の追随を許さないという姿勢だ。文書には「潜在的な敵が米国をしのいだり並んだりしようと期待して軍事力を増強することを、思いとどまらせる」というくだりがある。
旧ソ連時代に冷戦のライバルだったロシアは、財政難で既に競争をあきらめ、米国の長期的な警戒心の対象は中国に移っている。しかし、米国の軍事力の圧倒的優位が崩れる事態は、今のところ想像さえできない。
ただ、敵対国家が敗北を承知で大量破壊兵器を用いたり、テロ組織に流したりすると、米軍の力でも完全には防ぐことができない。米政府が今、最も神経を使っているのはこの点であり、政策文書は「必要とあれば先制対応として自衛権行使を辞さない」と宣言した。これは要するに「攻撃は最大の防御」の思想だ。対イラク軍事行動の有無に直結するため、国際的に最も注目を集める部分と言える。
一方、外国から批判を浴びることの多いユニラテラリズム(単独行動主義、一方的外交)の傾向は、弱まる気配がない。
政策文書はイラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などが大量破壊兵器を開発・保有するのを防げなかった国際的な不拡散の枠組みを軽視し、国際刑事裁判所(ICC)にも協力しない方針を明記。地球温暖化防止のための京都議定書には直接的言及がなく、米国独自の対策に触れているだけだ。
超大国であるところから生まれた「ブッシュ・ドクトリン」は、米国をますます強大にすることで安保を確保しようと志向しているが、強すぎることの弊害を忘れがちなようだ。