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(回答先: Re: 朝日はイラク戦争に必ずしも反対でないように感じる。 投稿者 布施印 日時 2002 年 9 月 10 日 00:21:06)
「アメリカジャーナリズム報告/立花隆著」にはこうあります。
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”アメリカのジャーナリズムがその活力を回復するのは、ベトナム戦争報道を通じてである。それまで、(準)戦時下意識の中で、ジャーナリズムたちの意識の中には国家との一体感、国家に対する信頼感があったが、それがベトナム戦争という国家的愚行の中で吹きとんでしまう。ジャーナリストたちは、本来の職業意識を取り戻して、現実のリアルな報道によって体制の虚構を撃つという仕事をはじめる。ここ数年、アメリカ・ジャーナリズムで名をあげたジャーナリストたちは、ほぼ例外なくベトナム戦争報道の中で自分をきたえあげた人々である。
いまだかつて、現に戦争を遂行している国家の中であれほど激しい戦争批判がジャーナリズムを通じてなされた例は、他にないだろう。”
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一例をあげれば、「ペンタゴン・ペーパー」の新聞掲載がありました。
1967年、国防省の官僚だったダニエル・エルスバーグはロバート・マクナマラ国防長官のオフィスで米国の北ベトナム侵略計画を練っていました。その時エルスバーグはその部屋の窓から、ペンタゴンの中に入ろうとした反戦運動家たちが棍棒で打たれ、逮捕され連れていかれるのを見ました。
エルスバーグはこの時のことを後にこう証言しています。
”私は自分の胸に聞いた。
「この人たちは自分の良心に忠実に生きている。私がそうしたらどうなるだろう」”
エルスバ ーグは政府の仕事から身を引き、世に言う『ペンタゴン・ペーパー』---アメリカが政府ぐるみでベトナムでやっていた腐敗した工作を暴露した文書---を世に明らかにすることにしたのです。
しかし、彼がそう決めただけではこの『ペンタゴン・ペーパー』が世に出ることはありませんでした。政府からの圧力を受け、文字通り会社の命運をも賭けて、それを断乎として紙面に掲載したニューヨーク・タイムスとワシントン・ポストらの記者らの真摯な努力がなければそれは果たせなかったのです。
部下の記者から、『ペンタゴン・ペーパー』の掲載を持ちかけられたニューヨーク・タイムスの幹部の一人は決断した後こう言ったそうです。
「経営資金に困ったら一階にある輪転機を二階にあげ、一階を売りに出す。次は二階にある輪転機を三階に上げ、二階を売りに出す。さらに三階にある輪転機を四階に上げ、三階を売りに出す。…そうやって最後の階まできたら、それも売り払う」
しかし、今のアメリカは、当時のジャーナリズムからいけば、恥ずべき事態なのかもしれません。