「とりあえず引き落とし遅延についてはようやく解消することができたけれども、一連のシステムトラブルに関する問題がすべてクリアされたわけではないのです。むしろ根本的な問題は何ら解決されていないのが実情なのです」
みずほグループ経営中枢幹部がこう言ってみせる。
4月18日、みずほフィナンシャルグループの持ち株会社、みずほホールディングスは、顧客口座からのクレジットカード代金や公共料金の引き落とし作業の遅れをすべて解消したと発表した。
そもそもこの引き落し遅延は、今月5日には最大の250万件にものぼっていたが、17日には約13万件にまで減少し、18日になって午前中の段階ですべての遅延解消作業は終了した、としている。
もっとも、口座振替(口座引き落とし)を委託した企業に対する入金や引き落としデータの通知については、依然、大幅な遅れをみせているのが実情で、みずほグループサイドでは「5月1日までには正常化させたい」としている。
ところが気にかかるのは、冒頭のコメントで登場してきた「根本的な問題は何ら解決していない」という部分だ。これはいったい、何をさしているのだろうか。
「多くのマスコミは全く誤った報道をしていますが、問題となっている一連の口座振替遅延トラブルは、ATMトラブルと全く別次元のシステム障害なのです。つまり、ATMトラブルが旧3行の基幹システムをつなぐリレーコンピューター(中継接続コンピューター)で発生したトラブルが原因であるのに対し、口座振替遅延トラブルは、口座引き落としをする上でそれを委託した企業が持ち込んだ請求データを振り分けるシステム上で発生したトラブルなのです」(みずほグループ経営中枢幹部)
そしてこう続ける。
「つまり一連の口座振替遅延は、3つの異なる勘定系の基幹システムを無理やりつないだことで発生したトラブルではない、ということです」(前述同)
みずほグループが利用している口座引き落としシステムは、日立製の『STEPS』と呼称されるものだ。
振替委託企業からマグネットテープ(MT)や電送の形で持ち込まれたデータは、この『STEPS』を通じて旧3行の基幹システムに振り分けられることになる。
「ところが委託企業が持ち込んだ請求データの中で『STEPS』が読み込むことが出来ない、つまりはじいてしまうデータが大量に出てきてしまったのです、これが引き落とし遅延につながったのです」(前述のみずほグループ経営中枢幹部)
みずほグループサイドは、まさに“人海戦術”をとる形で、持ち込まれたデータを再加工し直した上で『STEPS』を通過させる作業を行っていたのである。
つまり、こうした一連の“作業”が昨日完了した、ということなのだ。
「ところが問題なのは、なぜ『STEPS』がデータをはじいてしまったのか、今日にいたるも全く解明できていないのです。旧行時代は同様のデータを読み込んでいたし、このシステムでもこれまで通りに読み込めるようにシステムが設計されていたのです。にもかかわらず読み込めないデータが大量に発生してしまった。その原因がどこにあるのか。現段階では全く分からない…」(みずほグループ経営中枢幹部)
このコメントを聞く限り、問題は何も解決されていない、と言えるだろう。