(回答先: 日本生命、東京海上などの保険財務力格付けを引き下げ=S&P[東京16日ロイター] 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 4 月 16 日 15:57:23)
格下げ
今回 前回
AA− AA 長期ソブリン格付け
据え置き
A-1+ 短期ソブリン格付け
アウトルック:ネガティブ
スタンダード&プアーズは15日、日本の長期ソブリン格付けを、構造改革の遅れを理由に上記の通り「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に引き下げた。アウトルックは引き続き「ネガティブ」である。
スタンダード&プアーズ、アジアソブリンチームを統括する小川隆平は、「小泉政権は民間部門と行政の改革を押し進めるものと期待していた。しかし、小泉内閣の支持率低下および閣僚や自民党幹部にまつわる問題を考慮し、スタンダード&プアーズは以下の3つの分野において当初の予想を下方修正した」と述べている。
第一に、スタンダード&プアーズは、日本の一般政府赤字が今後数年間は国内総生産(GDP)比8%のレンジで推移すると考えている。財政赤字と引き続き弱含みの成長見通しから、財政姿勢を持続することは不可能であろう。
第二に、4月12日に発表された金融庁による「特別検査」の結果はスタンダード&プアーズの期待を裏切る内容であり、その範囲と救済に向けた提案は限定的であった。現行の不良債権に対する引き当て基準は、報告ベースでも国際比較においても不適切である。従って、金融制度には株主による増資の形であれ、政府介入後の資本注入の形であれ、追加的な資本注入が必要となり、自己資本が適切な水準でない限り、金融部門は貸し出しの拡大に消極的で、その結果、成長を阻害し、金融政策を鈍らせる。
第三に、現政権が近い将来に年金と健康保険の受給を縮小したり、農業、小売りなど有利な規制下にある部門の門戸をより広く海外との競争に向けて開放したりする可能性は低い。
スタンダード&プアーズは、金融政策が政府にとって債務の流れを変えるために残された唯一の手段であると考えている。もし実質マイナス金利の期間を長期にわたって続けることがで出来れば、日本の債務水準を安定化することが出来る可能性がある。この第3の手法は3つの中で最も魅力には欠けるものであるが、日本銀行がより一層の金融緩和策を取ることで達成可能である。
日銀は2002年度政府財政赤字の40%以上を購入することになる。そのような購入による資金放出は価格への期待を変えることが出来る可能性がある。また日本の投資家や預金者が日本市場に大きく偏っていることから、債券や銀行預金の債権者が比較的軽微な実質的な損失を被る状況を作り出す可能性がある。
こうした調整の負担を、現在、公的歳出の利益を享受している既得権益を持つものから、すでに負担を強いられている貯蓄を持つものに移転させることにはリスクが伴う。それは、政治的コンセンサスに対するリスク、資本勘定の安定性に対するリスク、伝統的に高い貯蓄率の維持に対するリスクなどであるが、しかし財政および構造上の調整を除けば、日本の信用力を現在の水準で維持するために残された最後の戦略となる可能性が高い。