自民党の一部議員の手で日銀法の改正案がまとめられ、連立与党の同意を得て議員立法として今国会での成立を目指す、との報道がある。
新日銀法の施行からわずか4年、今なぜ重要な内容を含む法改正を急ぐのか。朝令暮改との疑念をぬぐえない。さらに掘り下げれば、財政が危機的状態にある中で、無理な政策協力を強く求め、日銀がこれに主体的立場から抵抗するというせめぎ合いが繰り返された。そこから生まれた政治家たちの不満と不信が動機となって今回の法改正の動きとなったのは明らかな事実である。
自民党案の骨子は(1)政府の経済政策の基本方針と整合的な金融政策を日銀に求める(2)インフレ目標値の設定を明記する(3)政策決定会合への日銀側の出席者は総裁に限る(現在は副総裁を含む3人)(4)買いオペ対象を有価証券一般(外貨債を含む)に拡大する――に要約される。一見無難な内容のごとくだが、その底にある狙いを正しく見据える必要がある。まず、マクロ経済政策の両輪が整合的な動きをするのは当然だが、金融当局を政府に対する従属的地位におとしめる結果となるのは断じて認められない。
インフレ目標値の設定は改正案の核心部分、日銀の抵抗を抑え込む意図は明白だ。(3)金融政策決定にかかる日銀当局の票が3から1になれば発言権の低下は必至、それが発案者の狙いにほかならぬ。ただ、一時伝えられた総裁の罷免権は見送られている。(4)の買いオペ対象の拡大を頭から拒否するものではないが、その選択は日銀の判断に委ねるべきだ。
以上要するに、この改正案は日銀の独立性という法の根幹部分を揺るがしかねない危険をはらんでいる。原案がそのまま国会を通過する事態は絶対に回避すべきだ。関係者の良識ある判断と対応が望まれる。 (幸兵衛)