金融庁が12日に発表する特別検査の結果の概要が明らかになった。市場の評価が著しく下がった大口債務企業149社を調べ、71社について貸手銀行の債務者区分を引き下げた。その効果で、今年3月期の銀行の不良債権処理に伴う損失額は約1.9兆円増える。大手行の不良債権処理損は計8兆円弱となる見通し。増加する1.9兆円のうち約9割が、建設、不動産、流通、ノンバンクの4構造不況業種向け債権だった。大手銀行の02年3月期決算はいずれも、赤字決算となるが、健全性をみる自己資本比率は国際基準の8%を上回る見込み。
特別検査は、株価や格付け会社の格付けが急落した企業のうち、大手行が100億円以上の融資残高を抱える企業を抽出。銀行が自己査定して決めた債務者区分や、貸し倒れ引当金の積み方が適正かを調べた。
構造不況4業種では、98社が対象となり、そのうち47社の債務者区分が、不良債権である要管理先や破たん懸念先などに引き下げられ、貸し倒れ引当金の積み増しを求められた。
特別検査の結果は、金融庁は当初、対象企業に株価が下がるなどの風評被害が出るとして、一切公表しない方針だった。しかし、金融庁検査の信頼の回復を図る狙いから、小泉純一郎首相が2月に公表を指示した。ただ、対象となった個別企業が類推されるようなデータは伏せられる。
政府は特別検査の結果次第で、公的資金の注入の是非を判断する方針だった。金融庁は、検査結果反映後の自己資本比率がおおむね10%台を確保することから、公的資金の再注入の必要性はないと判断している。
大手銀行側も12日に、特別検査の結果を反映した自己資本比率など、健全性にかかわる6項目の指標を公表する予定。