昨日発売された「ニューズウイーク日本版4・10」の特集は、“2002年版世界経済入門−グローバル経済を読み解く基礎知識”である。
そのなかに、リー・ブランステッター(コロンビア大学ビジネススクール准教授)が担当している「日本経済」の項がある。
ブランステッター氏は、ケインズ派経済学者のようで、亀井静香元政調会長のアドバイザイーをつとめるとうってつけのように思える。
書かれている「デフレ不況」打開策については容認できないが、現状認識と「小泉改革」の評価に関しては参考になる点もあるので紹介する。
<P.50〜51の見開き記事>
「29年〜34年のアメリカは鉱工業生産が半分に減り、物価は24%下落。失業率は20%を超えていた。
この破滅的な状況に比べれば、日本が直面しているデフレや景気低迷も軽症にみえる。それでも、当時の米政府当局者やエコノミストの反応と、今の日本で巻き起こっている政策論争の間には、気がかりな類似点がある。
今は20年代後半のバブルが残した過剰投資を「清算」するために、必要な調整局面である−大恐慌が本格化しはじめた30年代初めのアメリカでは、多くの「専門家」がこう考えていた。アンドルー・メロン財務長官もジョセフ・シュンペーターのような一流の経済学者も、生産性の低い企業や産業、労働者を淘汰しなければ景気回復は望めないと訴えた。
こうした「清算論者」に言わせれば、不況の痛みを和らげるための景気刺激策は、本来ならば倒産するはずの企業を延命させ、真の景気回復に欠かせない構造改革を遅らせるものでしかなかった。
<中略>
確かに、清算論者の主張にも一理ある。バブルに沸いた20年代後半のアメリカや80年代後半の日本では、ずさんな投資が増加した。そのため経済システムに贅肉がつき、生産性の向上を鈍らせた。
とはいえ、深刻な景気後退を改革の追い風に利用するのは、電動のこぎりで手術をするようなものだ。確かに改革を実行すれば、非効率部門はスリム化する。だが、同時に効率的な部門も縮小してしまう。経済全体がやせ細れば、資源の再分配はかえって困難になる。」
この後には、米国の30年代初めに必要な政策が「財政支出」や「通貨供給量の増大」であったのに、フーバー大統領は「財政の健全性」にこだわったことを取り上げ、現在の日本政府が同じような立場にあると述べている。
そして、日本「国債の多くは実質的に日本政府が「保有」する形になっており、政府のバランスシートにプラス効果をもたらしている。市場はそれを認識しているのだ」と書き、「日本にはまだ、赤字覚悟で景気刺激策を打ち出す余裕が十分ある。<中略>日銀は、国債などの購入を通じて積極的にマネーサプライを増やすことができる。日銀から公共部門に流れた資金の一部は、公共投資に回る。そうなれば需要が喚起され、物価が上がり、デフレは収まる。インフレになれば、実質的に金利が下がり、経済を活性化する・・・という好循環が生まれるはずだ」と続く。
最後に、「歴史から学ばない者は、同じ過ちを繰り返す。日本が自国の歴史から学ばず、アメリカが犯した過ちを繰り返すとしたら、悲劇としか言いようがない。」と結んでいる。
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■ 国債の多くは実質的に日本政府が「保有」する形?
ブランステッター氏が説明している「国債の多くは実質的に日本政府が「保有」する形になっており、政府のバランスシートにプラス効果をもたらしている」というのが、説明がないままなのでどういうことを指しているのかわかりません。
推測できる方がいらしたら、ご教授ください。
■ 日本は財政支出拡大で不況脱却を既にはかる政策をとった
「公共投資に回る。そうなれば需要が喚起され、物価が上がり、デフレは収まる。インフレになれば、実質的に金利が下がり、経済を活性化する・・・という好循環がうまれるはずだ」というのは、91年から96年まで日本で継続された政策だが、それでも好循環は生まれなかった。
■ 大恐慌から始まった米国の大不況は資産家や法人への課税強化で脱却できた
ブランステッター氏は、歴史に学べと言われているが、アメリカの“大不況”は、財政支出拡大の「ニューディール政策」ではなかなか脱却できなかった。
富裕税を創設したり、戦争に突入して法人税を50%に引き上げることでようやく終息に向かったのである。
■ 戦前まで遡らなくても“レーガノミックス時代”と“繁栄のクリントン時代”を比較することで様々な政策の是非は問える
“繁栄のクリントン時代”は、「ニューズウイーク日本版4・10」の特集(景気)のタイトルでも使っているように「根拠なき熱狂」とも呼ばれているが、それなりの根拠はちゃんとある。
『“活力”重視の「小泉税制改革」は『デフレ不況』をさらに悪化させる』
( http://www.asyura.com/2002/hasan8/msg/781.html )
※ 上の参照書き込みからもジャンプできるが、細かい税制の話に興味のない方は下記の書き込みを直接参照してください
『クリントン時代の「経済的繁栄」と「財政赤字」は“高額所得者増税”から始まった』( http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/374.html )