(回答先: 「日本に重なる大恐慌の影」 《小泉政権の経済政策は、1930年代のアメリカと不気味なほどよく似ている》 [ニューズウイーク日本版4・10] 投稿者 あっしら 日時 2002 年 4 月 04 日 20:12:21)
http://research.php.co.jp/suggestion/jap_gov/99-7-1.html
一部抜粋
【主 旨】
国と地方合わせた公債発行の累計額は600兆円とGDPの1.2倍に達しており、不良債権処理額の拡大や追加的な景気対策の行方によっては、今後も増加していくことが十分予想される。
日本の財政は、公債の累計額から判断する限り、これ以上の借金を重ねると、破綻に追い込まれる危険水域に達していると考えられるのである。
日本では、政策に対する「説明責任(accountability)」が十分に果たされていないのである。政府の財政状況1つを取り上げてみても、それを判断できる十分な情報が開示されていないため、政府の真の財政状況を診断することが容易ではない。
欧米先進国で進行する公会計制度の改革の実態を調査・研究し、新たな公会計制度のもとで日本の財務状況の実態を把握することを目的に、昨年10月、跡田直澄先生(大阪大学教授)が発起人となって研究者5名からなる研究会(「政府会計改革」研究プロジェクト)を発足させた。
そこで、当プロジェクトが今回、政府の真の財務状況を把握・計測すべく、政府部門の貸借対照表を発生主義ベースで新たに推計し直した結果、資産から負債を差し引いた正味財産額は、マイナスの 368兆円に達し、現状で政府は債務超過の状況に陥っていることがわかった。これは、GDPの7割強に上る額であり、仮に今後25年で完済するためには、国民に対し、毎年14.7兆円(消費税で7%)の新たな追加的負担を求めなければならないことになると考えられるのである。
1.なぜ、公会計制度改革に取り組まなければならないのか
欧米先進国でも,かつて財政赤字の膨張に苦しみ,政府活動の非効率化に悩まされてきた.こうした危機を乗り切るため,公的部門の「構造改革」にこぞって取り組んできたが,改革に対する国民の理解を獲得する上で,「accountability」の充実・強化に努めることが不可欠であった.その手段として,現金主義に基づく旧来の「公会計制度」に発生主義を導入,バランスシートの作成を通じて,政府の財務状況をストック面からも把握できるよう,制度を再設計した(中央政府のレベルで,現金主義を採用する国は,日本とドイツのみとなっている).
現状の日本は、欧米先進国のように,狭義or広義のaccountabilityを十分達成できる制度的状況にはない.Accountabilityの達成を阻んでいるのは,現金主義をベースとする公会計制度である.すなわち、現状の公会計制度のもとでは,(A)ストックとフローとがリンクしていない,(B)政府活動のコストが厳密に把握できないという2つの理由から,公的部門の財務状況の実態や活動の妥当性が評価できなくなっていると考えられる.>
2.発生主義に基づくバランスシートの作成と評価
〜「政府会計改革」研究プロジェクト 試作〜
今回,試作したバランスシートは,経済企画庁の「国民経済計算年報(SNA)」で推計されているバランスシートを,発生主義をベースとする形に改良したものである.新たに,バランスシートを試作した目的は,発生主義会計に基づく形で、政府部門(中央政府,地方政府,社会保障基金の一部)の財務状況を推計・評価してみることが,狭義のaccountabilityの達成を目指す観点から重要であり,また,こうした試作作業を通じて,公会計制度をめぐる改革の論議が,各界各層で進展していくことを願ってのことである.
今回,新たに取り組んだ主な内容は,(A)インフラ資産のうち道路について,減価償却を実施し,インフラ資産の管理・運営に関するコストをバランスシートの中で明示的に取り扱った,(B)公務員共済の将来債務および公務員退職金の将来債務を,バランスシートに計上した,ということである.従来のバランスシートでは,インフラを含めた固定資産が厳密に計上されておらず,バランスシートの構成が,金融資産に著しく偏っていた.また,年金に関しては資産のみが計上され,将来,政府が支払いを確約している支出額(年金の将来債務)が計上されていなかった.
その結果,SNAのバランスシートにおいては,資産(asset)から負債(liability)を差し引いた正味財産が,424兆円のプラス(1996年度)で計上されていた.これをもとに,一般政府(中央政府,地方政府,社会保障基金)の財務状況は,さほど悪くないと考えられていた.
今回,われわれが新たに推計したバランスシートでは,1996年度で正味財産額が 212兆円と、SNAの約半分であることが判明した.これは,インフラ資産に減価償却を計上したこと,および公務員共済と公務員退職金の将来債務を計上したことで,正味財産額が圧縮されたことを反映したものである.
さらに,われわれは,政府が保有するインフラ資産等が市場で転売できない点を考慮し,政府が自ら処分できる資産と負債として定義される,「政府可処分正味財産(政府所有正味財産)」(正味財産?売却不可能資産)を推計した.それによると,政府は?368兆円の政府可処分正味財産を有しており,現時点で債務超過に陥っていることが判明した.
この額は,GNPの7割に相当するものであり,仮に高齢化がピークを迎える2025年までの25年間で完済することを目指すとすれば,毎年14.7兆円、消費税率7%の追加的負担を国民に求めなければならない計算となるのである.もちろん,いくつかの仮定のもとでの推計結果であり,政府の財務状況を100%正確に反映するものではないが,現状,得られる限りのデータをもとに推計したものであり,日本の政府部門の財政状況を判断する材料の1つになるものと自負している.