電子部品大手のローム(本社・京都市)は9日、来春入社の大学卒社員を原則として契約社員にする方針を明らかにした。長期雇用を想定しているが、労基法の規定のため契約は1年更新で、退職金もない。高度な技術、専門性が必要な職種は主に大学院卒を従来通り正社員として採用する。終身雇用に伴う長期固定の人件費が企業の重荷になっており、雇用形態の多様化が始まった。
営業職の一部を契約社員化した金融会社はあるが、大卒社員を原則として契約社員にする例は国内ではほとんどない。
大卒契約社員は「ゼネラルキャリア」と呼び、営業や工程管理などの職種が対象。管理職になることも出来る。一方、大学院卒レベルの正社員は「エキスパート」と呼び、研究や財務、知的財産、営業管理などの職種。大卒でも能力が認められれば、エキスパート職で採用する。来春の採用予定は各100人。
ゼネラル職は退職金がない分、初任給を高くする。営業職ならば月給約28万円で、営業職の大卒エキスパート社員より約8万円高い。福利厚生は正社員と同じ扱い。
雇用期間について同社は「ゼネラル職も貴重な人材で、1年で契約を解除する予定はない」としているが、一方で「中程度の専門性でいい層を終身的に雇用すると、経済状況の激変に対応できない」と、終身雇用ではないことを認めている。 【田畑知之】
企業が試される
人材派遣業、パソナの南部靖之代表の話 契約雇用は不安定なようだが、不満があれば転職が容易で、結果的に社員から企業が試される。ロームの試みは日本の雇用形態が過渡期にあることを象徴している。
人間の部分採用
評論家、佐高信さんの話 頭脳の部分は終身雇用で採用し、手足の部分は別に採る、人間の部分採用のような感じがする。社員の士気の維持を深く考えているのだろうか。企業を支える後継者が育つか疑問だ。
[毎日新聞3月10日] ( 2002-03-10-03:01 )