(回答先: UFJ:法定準備金1兆円取り崩しなど正式決定 臨時株主総会〔毎日新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 2 月 14 日 22:11:21)
誤解されている人は少ないとは思いますが、法定準備金1兆円がどこかに保管されていて、それを日々の事業活動のために持ってくるという話ではありません。
資本金や準備金は、大事に保管されているわけではなく、事務所を借りる補償金に使ったり、貸付に使ったり、給与として支払ったりされているものです。
雑ぱくにいうと、「資産勘定項目の合計−負債勘定項目の合計=資本金+準備金」といった性格のものです。
“取り崩す”というのは、そうしないと「資産勘定項目の合計−負債勘定項目の合計−資本金=準備金」の準備金が従来の準備金からマイナスになってしまうので、バランスシートを書き換えるということだけです。
すごく単純化した例で説明してみます。
設立当初で考えれば、資本金が現金で1千万円用意されたとすると、バラスシート上は資産が1千万円で資本金が1千万円になります。(以降、資本金を法定準備金と考えてもらってもここでは基本的に同じことです)
この1千万円のうち700万円で国債を買っても、資産が現金300万円と有価証券700万円になり、資本金が1千万円であることは変わりません。
(このように、いざ事業活動が始まると、資本金というのはたんなる数字だけの話になります。もちろん、借入金といった負債と違って、株主の有限責任でチャラにできますから返す必要がないという特典はあります)
ところがある事件が起き、700万円を投じた国債が時価0円の紙屑になってしまいました。
そして、そのまま期末決算を迎えてバランスシートを作成しなければならなくなりました。
時価が0円の国債は0円ですから、資産は300万円になります。
この状態で、資本金を1千万円のままにしておくと、左右のバランスがとれません。
バランスをとるためには、減資して資本金を300万円にするしかありません。
例え700万円増資して資本金を1千7百万円にしても、資産(現金)が1千万円になるだけで、資本金の1千7百万円とはバランスが採れません。
今回のUFJの場合は、利益も上がらないなかで、暴挙と言える株主配当などを行う(公的資金注入に対応する優先株への配当は“義務”ですからね)ためと言ってやるようですが、それに1兆円も必要かどうかは疑問です。
不良化した資産をバランスシートから消す目的も入っているならば、まず、従来からの貸し倒れ引当金を減らすことになるでしょう。今期利益が上がっていれば、“銀行優遇税制”もあるので、利益のある部分を貸し倒れ引当金に積み増し(これも単にバランスシート上の数字の話)、そこから消却することができます。
今回UFJが法定準備金の数字を減らすということは、引当金だけでは、どうしても処理しなければならない不良債権に充足できないために、法定準備金まで食い込んで減らさなければならない財務状況にあるのだと思います。
逆に言えば、資産として計上できるものがどんどん減少し、左右のバランスをとるためには、「資本の部」を減らさなければならない財務状況になっていることを意味します。
そして、このような財務状況であれば、実際は不良債権になっている資産も、そうじゃないと“思い込み”“言い張る”しか、債務超過を逃れることはできない財務状況にまで追い詰められているのかも知れません。
長々と書きましたが、資本金や準備金が、たんなる数字でしかなく、いざというときのためにどこかに保管されているものではないということだけ、ご理解いただければと思っています。
適当な説明でもわかるように私も詳しくはないのですが、会計的な話は、ごまかされやすいのでくれぐれも注意してください。