日銀の国債買い入れ増額決定は、政府・自民党内で渦巻いていた追加緩和要求を受け入れた格好となった。一九九八年四月に施行した新日銀法で政府からの独立性を強化した日銀だが、実際は政府や自民党との距離をなお測りかねる日銀の姿が浮かび上がる。
自民党デフレ対策特命委員会の提言、政府の総合デフレ対策は相次ぎ日銀に追加緩和を求めた。塩川正十郎財務相は二十六日の閣議後の記者会見で「日銀に月一兆円の国債買い取りを要求しようと思う」と発言。日銀包囲網が狭まるなか、日銀はほぼ要求に沿った決定を打ち出した。
政府が有効な追加経済対策を打ち出せないなかで、日銀が協力を見送ると、結果的に、政府・自民党内から日銀批判の大合唱が巻き起こるのは必至。緩和要求が激化する可能性がある。
新日銀法では旧大蔵省の監督権や、首相による日銀総裁の解任権を外し、理念として自主性を明記した。ただ、政治からの要求のクッションとなっていた旧大蔵省からの独立で、政治からの圧力や、その力学の影響を受けやすくなる。
政治力学の点で見ると、速水総裁との個人的関係から自民党内では日銀理解派とされる小泉純一郎首相の支持率が各種世論調査で急落したことも今回の決定と無縁ではない。
速水総裁は十九日に首相に金融機関への公的資金の再注入を直訴して追加緩和の流れを押し戻そうとした。首相に以前のように八〇%を超える支持率があれば会談が与える政府・自民党への衝撃はさらに強かっただろうが、実際には流れを変えるまでには至らなかった。
金融政策は国会の審議を経ないで動かせるため、財政や税制よりも機動的な側面がある。しかも、副作用がすぐに見えないので政治にとっては都合がいいのは確か。ほかの政策と同様に主張を足して二で割って利害を調整したりする政治とどう対話していくか――。日銀の苦悩はしばらく続きそうだ。(経済部 吉野直也)