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経営再建中のダイエー<8263>は、UFJ<8307>、三井住友<8318>、富士の主力3行から5200億円の金融支援を受け再建を目指す「新3カ年計画」を発表した。1月18日に出した当初案の金融支援額に対し1000億円も上積みされた、今回の最終案。実は最終的に1000億円もの上積みを決めたのはダイエーでも主力行でもない、当の金融庁だった。国を挙げての“ダイエー救済”色が濃くなる一方で、「本当に大丈夫なのか？」と懸念する声も強まっている。ダイエーは生き残っていけるのか。あたかも「国が命運を賭けての大救済劇」は、後戻りできない“悲劇的要素”もはらんで突っ走る・・・。
●怒りの矛先はどこに向ければ・・・高木社長
「（1月にまとめた再建計画が）問題の先送りでないかとの外部の声に対しリストラを加速するために金融支援の上積みをしてもらった」。2月27日の新3カ年計画詳細発表記者会見。いつも冷静な高木邦夫ダイエー社長は記者の質問に時折、気色ばんで答えた。会見後の記者団の質問にも「だから、市場やマスコミはもっと（リストラの）スピードを上げろと促したということではないですか」とやり場のない怒りを噴出させたほど。再建が思うように進まない怒りの矛先をどこに向けていいのか分からない、といった風情だ。
もちろん、1月に発表した当初案に対しては「問題先送り」「不十分」という声が多く、わずか1カ月あまりのうちに、主力行に金融支援を上積みしてもらわなければならなかったことに対する悔しさもあったとみられる。しかし、高木社長の言動はダイエー再建の方向性について、自らが当事者としての扱いを受けず、金融庁と主力行で決め、計画が頭越しに進んでしまうこと対するジレンマの発露だったとみられている。
●支援額上積みめぐり3行が紛糾
実はダイエーと主力3行は1月の当初案発表以降、市場の「不十分」という評価を受け金融支援の見直しに入っていた。「4200億円では足りない。もっと増額して店舗の閉鎖などを前倒しでやるべきではないか」。主力3行の間でこうした声が上がった。そのため、主力3行は急遽、金融支援の上積みを協議したが、上積み額をめぐって紛糾した、という。
「ウチが出せるのは100億円どまり。これ以上は難しい」。3行が出した結論は「UFJが200億円、三井住友、富士が100億円ずつの計400億円という上積み額」だった。なんとも中途半端な数字だが、3行が出せる範囲の額を積み上げた結果こうなった。ダイエー側としても「もっと出してくれとはいい難い」（幹部）状況だった。
●結局、金融庁が増額を後押し？
「400億円程度の上積みで市場は納得しますか」。1000億円の上積みへと主力行の背中を押したのは、またしても金融庁だった。ダイエー再建は金融システム安定の一端を担う国家プロジェクト。一企業の再建に政府が介入するのは前代未聞だが、それがダイエー再建の実態だった。高木社長が会見の席でみせた怒りは、まず金融庁と主力行が頭越しで決める金融支援、さらに自分たちがそれをにベースにした計画策定に右往左往していることに対して向けられたものだったかもしれない。
ダイエーは今回の金融支援の上積みを受け、閉鎖店を当初案の50店から60店に拡大、本体で400人上乗せして1400人の人員を削減するなどのリストラを断行、2005年2月期の経常利益を単独で270億円、連結で540億円に引き上げる計画を作り上げた。
●大リストラしても苦しい今後〜売上高前年並みは確保できるか
60店を閉鎖すると全店舗数は220店前後。赤字をたれ流しているハイパーマートの閉鎖などで黒字既存店の収益貢献度が高まり、利益率が改善されるという図式を描く。ダイエーはこの3カ年、既存店の売上高を前年比100％と見込んでいる。前年並みの売上高を確保しなければ、計画の利益水準に到達しないからだ。
だが、この計画のハードルの高さは、イトーヨーカ堂<8264>、イオン<8267>のいわゆる勝ち組とされる総合スーパー（GMS）と比べても明白だ。デフレのなかイトーヨーカ堂、イオンともに既存店売上高が前年実績をクリアできていない。ダイエーの前期（2002年2月期）の既存店売上高は前年比9％減で終えたようで、計画していた同8％減にも届かなかった。この3年間で既存店が劇的な改善を果たせなければ、「再建」の2文字はただただ遠のいてゆく。金融支援を受け再起をかけるダイエー。本当の正念場はこれからだ。
（山科 静）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。