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【信用リスク再考】(21)「敗者復活」へのシナリオ―社債巨額償還に挑む(東京7月17日ブルームバーグ) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 7 月 17 日 12:12:58:

国内社債市場で、過去に発行された普通社債(SB)が大量償還される。日本証券業協会調べによると、今年度の償還額は6兆3476億円、前年度比8960億円の増加となり、過去最高という。

社債の大量償還を迎えて、いわゆる「リファイナンス・リスク」が大きいと言われる企業の対応を追った。また、こうした企業群を、投資家はどのようにみているのか。発行体と投資家双方の論理も探った。

低格付け債は14.5%

償還資金をどのように手当てするか――。これは企業の信用力を左右するほか社債市場の発行額や条件設定などにも影響を与える。資本市場での資金調達が比較的難しいと言われる低格付け債(BBB格以下)が、償還額全体の約 14.5%も占めており、社債市場への影響も大きい。

ブルームバーグ・ニュースの調査によると、BBB格企業で、社債の償還を、新たな社債発行による借り替えで行うことを計画している企業は非常に少ない。手持ちのキャッシュフローか、売却可能資産の処分で対応しようとする企業が多く、財務リストラを優先させている企業の姿が目立つ。それでも、償還資金を確保できない企業は金融機関からの借入れで対応しようとしている。

一体どうなるのか?

「一体、どうなるのだろう」 。外国系証券のアナリストはいぶかった。内外の格付け会社から「ダブルB」以下と投機的等級に格付けされているプレハブ住宅大手、エス・バイ・エルの今年度270億円の社債償還に対して大きな懸念を抱いたからだ。

しかも、5月17日に、同社が、資本の欠損補てんに充当するために資本準備金の一部と利益準備金の全額を取り崩すと発表したことも、市場関係者の不安を一層、大きくした。

格付けが投機的等級では社債を発行しても金利が高くなるだけ。市場全体に「信用リスク」の懸念が高まっている状況では買い手もつかない。最近では銀行も、格付けなど信用リスクに応じた貸し出し金利の設定に動き始めている。企業に対する融資姿勢を「選別化」していることが背景となっている。

エス・バイ・エルの財務部担当者はブルームバーグの取材に対して、社債償還は、みずほ銀行などからの借り入れで行うと語った。今のところ、みずほ銀などから、金利の引き上げ要請はない、という。

今後の資金調達では、できる限り、社債発行は抑制し、資産の流動化によって調達する方針という。同社は5月8日、有利子負債削減の圧縮、「量(売上)より質(利益)」を重視した経営などを骨子とした経営構造改革を発表し、業界での生き残りを模索し始めた。

格付け会社の「警告」

エス・バイ・エルに対するアナリストの目先の懸念は、まずは杞憂(きゆう)に終わった。だが、低格付けの企業にとって、社債償還への対応は生死にかかわる課題であることには変わりがない。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5月に「日本の鉄鋼メーカーの信用力に関するリポート」を発表した。そのなかで、「各社は高水準の有利子負債を抱え、今後、数年内に多くの社債償還を控えている。手元資産の処分による償還や社債市場での借り換えが、何らかの形で困難となれば、鉄鋼業界の間接金融への依存度が高まる可能性がある」と指摘した。

社債償還のための資金調達要件が「鉄鋼業界と日本の金融機関との従来の良好かつ強固な関係が継続されるか否かの試金石となる可能性もある」としている。特に、S&Pは、格付けの低い住友金属工業と神戸製鋼所を注視するという。

神戸製鋼所と住友金属工業は、社債償還対策について、営業キャッシュフローや自己資産の売却などによって対応することを明らかにしている。両社とも、米国の格付け会社2社から、投機的等級と認定されており、信用力向上のため身を削る思いだ。

神戸鋼は約1兆1500億円にものぼる有利子負債を返済するための一環として、このほど、カナダで持つアルミ精錬プロジェクト権益を、ケベック州政府の公営企業に売却した。事業の選択と集中の一環として選んだ結論だ。

財務リストラ

沖電気工業に対する市場関係者の懸念も大きくなっている。ムーディーズと格付投資情報センター(R&I)が6月に相次いで格下げを行ったからだ。R&IがBBBからBB+に引き下げたことで、沖電気は内外の格付け会社から投機的等級と断定されたことになる。

沖電気の前田肇副社長は「格下げによる影響はない」と強調した。社債発行の予定がないうえ、銀行との信頼関係が厚く、銀行からの格下げを受けた利上げ要請はない、とも指摘した。

沖電気は、今期226億円、来期に401億円と多額の社債償還を控える。前田肇副社長は社債償還について「手持ち資金で対応する。上半期の資金調達はシンジケートローンで足りなければ、コミットメントローンの枠320億円を使うとしている」とコメントした。

「信用力は向上する」

これまでみてきたように、社債償還を控え、格付けの低い企業は社債の借り換え発行はせず、営業キャッシュフロー、自己資産の売却などによって対応する傾向が鮮明となっている。企業は依然として「財務リストラ」に力を入れているのだ。

このような傾向に対して市場は概ね積極的に評価しているようだ。日興ソロモン・スミス・バーニー証券債券本部コーポレート・ボンド・リサーチの阿竹敬之バイスプレジデントは「業界全体が財務リストラに力を入れていることは、信用力にとって、前向きに評価できる。BBB格についても、残存2―3年の銘柄の需要が戻ってきている」。

メリルリンチ日本証券の後藤文人アナリストも「社債償還で、売却可能資産の売却などによって対応しながら、最終的に営業キャッシュフローが改善すれば信用力は向上するだろう」との見方だ。

まずは借金の返済

それでは投資家は、社債償還を外部負債に頼らずに、自己資産で対応するなど、「財務リストラ」を推進する企業努力を、どのように評価しているのだろうか。

三井住友アセットマネジメント債券運用部の桝屋博チーフポートフォリオマネージャーは「ここ数年、日本企業は財務リストラを積極的に行ってきたが、この傾向は投資環境という観点からは、絶好の追い風といえる」。銘柄を選別したうえで、BBB格企業の社債にも投資していくという。

企業にとって、事業に投資して、付加価値のある新製品を生み出し、利益を稼ぐことこそが、市場で生き残る条件だ。それが株価を押し上げることにもつながる。企業家にしてみれば、これは当たり前の論理だ。

だが、桝屋氏のコメントは、「債務不履行」という究極の信用リスクを絶えず意識しているクレジット投資家の意見を代表するもので、企業家の常識とは根本的に異なる。

借金を多く抱えている人は、まずは借金を健全な財務水準といえるまで返済してから、新たな新規投資、新商品開発に本腰を入れる。これは、企業でも人間でも同じことだ。

「手を出しにくい」銘柄

「財務リストラは絶好の投資環境」という。しかし、すべての銘柄が買えるものでもない。大量の社債償還を控えるなか、投資家は銘柄選別、信用リスクの見極めをこれまで以上に推し進めることが重要で、これが、社債投資のポイントとなる。

例えば、沖電気。内外の格付け会社から投機的等級まで格下げされたこの銘柄は買えるだろうか。 ムーディーズとR&Iが格下げした6月中旬以降、沖電気のSBの国債スプレッド(金利上乗せ幅)は急激に拡大。国債+2.80%だったのが、現在は2倍の+5%まで跳ね上がっている。

日興ソロモン・スミス・バーニー証券・コーポレート・ボンド・リサーチの水野辰哉バイスプレジデントは「沖電気の中長期的な改善のシナリオが明瞭には見えないことから、現状では手を出しにくい」と語った。

総合商社も多額の社債償還を控え、そのリファイナンスが注目される。メリルリンチの後藤アナリストは「金融会社と同様、基本的に債務の大半をリファイナンスしていくことを前提としている商社にとって、リファイナンス・リスクこそが最大のリスクと考えられる」 と断言する。

注目集まる丸紅

特に、過大な債務を負っている丸紅の動向に注目する向きが多い。同社の格付けはムーディーズでは、1998年のA3からB1へと7段階。R&Iでは、同期間にAA−からBBB−と6段階、引き下げられた。BBB−は投機的等級の一歩手前だ。

丸紅は経営計画を矢継ぎ早に変更。2005年度の純利益を700億円から500 億円に修正したほか、株主資本も5000億円から約4000億円へ下方修正。実質有利子負債を2兆円にする目標は未達成の可能性も否定できない、との指摘もある。

今年度の社債償還も2100億円と大きい。同社・広報IR部報道課では、社債発行は考えていないという。返済原資は、現預金の取り崩しが1200億円、債券運用の償還・売却、営業債権の回収、事業の統廃合などによる、とコメントした。

「残存2年まで投資妙味がある」

このように、格付けや財務指標が悪く、多額の社債償還を控える丸紅の社債は買えるだろうか。東京三菱証券投資戦略部の三島拓哉チーフ・クレジットアナリストは「期間内償還だけでなく残存2年セクターまで投資妙味があると考える」ときっぱり。

三島アナリストは、その根拠として、「全般的な業績の不確実性、経営計画未達成の可能性はすでに、格付けやスプレッドに十分に織り込まれている」と説明した。これを裏付けるように、丸紅債の社債スプレッドは縮小傾向にある。

さらに、具体的に、1)利益額・率ともに従来実績に比べて概ね良好な水準を維持できると予想、2)負債額・比率も改善傾向が続く見込み、3)今期 90円に迫った株価も130円超に復活、4)コミットメントラインも公募債残残高にほぼ見合う――などを挙げた。

適正リスクのプライシング

大量償還を控えて、企業は財務リストラを加速させている。全般的に、負債圧縮という観点から企業の信用力にプラスに働き、クレジット・アナリストも投資家も、その姿勢を評価する。低格付けでも、残存期間の短いSBへの投資意欲も盛り返している。

しかし、社債市場にBBB格企業の社債が枯渇している状況に対して疑問を呈する向きもある。三井アセット・マネージメントの桝屋マネージャーは「BBB格の企業も、資本市場に出て、自らのプライスを問い、投資家に価値判断を仰ぐべきではないか」と語った。

社債の大量償還問題で、企業の財務リストラを評価しながらも、市場は低格付け債の登場に期待を抱いている。ドイツ証券・クレジット調査部の島義夫部長は「低格付け社債はリスクが適正にプライシングされている限り、魅力的な投資対象であり、一度、クレジットが低下した企業には、敗者復活のための資金とチャンスを市場は与えてくれる」。

【社債償還を迎えるBB-BBB格企業コメント】
(格付けはムーディーズ、S&P、R&I、JCRの順)

●三菱自動車工業(IR室)(Ba3/BB-pi/BB+/BBB−)
2003年3月までに、800億円の社債償還がある。償還資金は、売上債権、土
地売却など自己資産の売却や金融機関からの借入れで賄う。社債による調達
も選択肢のひとつと考えている。2002年5月に200億円の社債償還があった
が、自己資金を償還原資とした。

●いすゞ自動車(広報部)(−/−/BB−/BB)
2003年度には、社債で520億円、借入れで680億円の償還がある。社債につ
は、有価証券売却や在庫の圧縮などの資産売却や営業利益によって賄う。長
期借入金については、金融機関へリファイナンスを要請している。みずほコ
ーポレート銀行(当時、第一勧業銀行)との間で設定したコミットメント・
ライン500億円については、350億円程度を使用している。

●日産自動車(Baa3/BBB−/BBB+/−)
2002年度の社債償還額は826億円。7月5日に募集した850億円の国内普
通社債については、社債償還と投融資資金に充てる。以前1兆円超あった有
利子負債を2004年までにゼロとする。

●ミノルタ(広報・IR部・吉開裕大阪CC課課長)(B2/Bpi/BB/−)
有利子負債削減の一環として、社債の償還資金は、手持ちのキャッシュフロ
ーでまかなう。2002年3月で2400億円弱だった有利子負債は、2003年3月
には2100億台まで削減する方針だ。

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