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日本経済とハイテク企業の復活シナリオに赤信号が灯り始めた。米国経済の失速に端を発し、先行きの不透明感やエンロンショック、通信大手ワールドコムの粉飾決算など、二重、三重と積み重なった株安要因に揺さぶられ続けている。完全に下げ基調に入った東京株式市場も「一時的には株価1万円割れは避けられない」(大手証券)状況を迎え、回復に向けてのシナリオ再設定に待ったナシの状況が追い込まれてきたようだ。
●米ワールドコム・ショックの余波〜個人投資家も資金引き上げへ
「この株安は複合不況の現れ。世界経済は2番底をたどることになる」。ある外資系証券のストラテジストは景気の動向をこう占う。今回の米国における株安は、長期化の様相を呈する。なぜなら、いくつもの要因が絡み合っているからだ。そのひとつが“ワールドコム・ショック”。ワールドコムを舞台とした粉飾決算疑惑は、破たんしたエンロン同様、投資家の企業会計への不信感を増幅。機関投資家だけでなく個人投資家も市場から資金を引き上げている。市場の需給悪化が顕在化し始めたわけだ。
2つ目が企業業績の悪化だ。その象徴がIBM。同社はITの勝ち組企業の代表格であったものの、ここにきて売り上げが鈍化。とくにハードウエア部門の不振から4〜6月期の業績見通しを下方修正している。期待された「在庫調整完了」から「設備投資拡大」という景気回復に向けた循環にはほど遠く、民需主導の景気回復は難しくなっている。
3つ目が実体経済の先行き不透明感だ。昨年、絞りに絞った在庫の反動で、今年は在庫投資が増加しており、この増加分が米国のGDP(国内総生産)を押し上げてきた。しかし、今後は企業業績の悪化から雇用や消費の伸び悩みが懸念され、みずほ証券では「下期にかけて民間最終需要が低迷する“W字型の回復”になる」と分析。期待していた米経済の完全回復は「はかない夢」と消えそうだ。
●崩れた回復の大前提〜深刻な金融機関の不良債権増
日本の場合はどうか。政府による景気底入れ宣言がなされた日本だが、この宣言を撤回せざるを得ない可能性もある。米国発の世界同時不況の影響が日本経済に重くのしかかる。米国以上に民需主導の景気回復が困難な日本において、唯一の頼みが米国経済の早期回復。輸出増が企業業績の回復をもたらし、雇用や所得の増加につなげ、引いては実体経済の回復を目論んでいた日本だが、その前提が崩れ去ろうとしている。ワールドコムが飛べば、融資していたわが国の金融機関はさらなる不良債権を抱え込む一方、同社株が組み込まれたファンドを購入している事業会社にも甚大な影響が出る。米国のゴタゴタ劇は対岸の火事では済まされない。
●悲鳴上げるしかないハイテク業界
米国経済の失速で、もっとも悪影響を受けるのがわが国のハイテク業界だ。「円高」というよりむしろ「ドル安」の恐怖が襲い掛かるからだ。
今期の想定為替レートは、輸出依存度が高いソニー<6758>や東芝<6502>で「1ドル=130円」。他社も概ねこの水準の為替レートを設定しているが、現在のような円高基調が続けば、期間収益の大きな下ぶれ要因として浮上する。そうなれば、ただでさえ国内市場が芳しくない状況でドル安が追い討ちをかけ「V字回復どころの騒ぎではない」(ある総合電機関係者)。昨年度こそ円安で恩恵を受けた業界各社だが、今期は一転、数百億円に及ぶマイナス要因と化す。
松下電器産業<6752>は「黒字転換は社会的責務」(中村邦夫社長)と言い、日立製作所<6501>が「下期には回復基調に」(八木良樹副社長)と見栄を切ってきた大手IT各社。今期も昨年同様、業績修正という危険性が見え始めた。日本経済、そしてハイテク業界はまさにがけっぷちに追い込まれている。
(市川徹 井原一樹)
・「深層・真相」〜IT企業決算は“実体なき業績回復”か
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/30/20020430140016_76.shtml
・「過去最悪」の決算〜富士通とNEC、甘い読みで大きなツケ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/25/20020425172517_04.shtml