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(回答先: 「デフレと生きる」(20)日本再生させる最も確実な方法−スベンソン氏 (ブルームバーグ)2002年5月14日(火)7時30分 投稿者 招き猫 日時 2002 年 5 月 14 日 09:09:00)
スベンソン教授提言のポイントは、円安での為替ペッグ制であろう。
彼は、円安水準での為替ペッグ制が物価上昇と景気回復をもたらすと主張している。
円安での為替ペッグ制を考える前に、実質為替相場と名目為替相場の概念や“実験例”としての中南米諸国の流れをまず見ていく。
>実質為替相場は名目為替相場を国内物価で調整したものだ。国内物価に粘着性がある
>ため、名目為替相場が下落することで実質為替相場が下落し、輸出を促し景気を刺激
>する。
実質為替相場と名目為替相場についてはあまりなじみがない話かもしれないので、簡単に説明する。
実質為替相場と名目為替相場という乖離は、完全為替変動制では生じない問題で、固定為替制や管理為替変動制を採っている場合に起こる。
固定制のほうが簡単なのでアルゼンチンの例を用いる。
1ドル=1ペソの固定制を採っても、アルゼンチンと米国のインフレ率は異なる。
アルゼンチンのほうがインフレ率が高ければ、その変動率と同じ割合で為替レートが切り下がることで調整されるはずである。しかし、変動制であれば調整されるこの問題が、固定制では調整されない。そのような状況を、実質為替相場が“高い”と言う。
実質為替相場の論理を持ち出したのは、中南米諸国のハイパーインフレ抑制手法の裏返しとしてデフレ抑制手法にも用いることができるという発想であろう。
しかし、中南米諸国(破綻したアルゼンチン・ブラジル・破綻したメキシコなど)のハイパーインフレが収まったのは、為替相場の固定化ないし安定化政策で輸入物価が安定し国内物価全体が安定したという構図ではなく、為替相場を固定化ないし安定化させるための金融政策と財政政策を採ったことによるものである。
為替政策という枷があった“おかげ”だが、国内通貨の価値が保たれたことで物価が安定したのである。
(GDPに占める輸入の割合は、アルゼンチンとブラジルで10%弱、メキシコで15%ほどであり、為替相場で安定したとは言えない。ハイパーインフレ下で、為替相場の変動が物価指数代わりに使われてはいたが...)
固定的な為替政策を採ってもなお中南米諸国はインフレ傾向が強かった(およそ20%)から、変動制であれば相対的に高いインフレで為替レートが下がるものだが、下がらなかったために投機的な動きに翻弄され、アルゼンチンのようにドルの持ち逃げで破綻することになった。(ブラジルやチリなど固定制ではなく変動幅で管理している国の為替レートは、最安値にはりつくことになる)
インフレのなかでの固定的為替政策は、実質為替相場の上昇につながり、国際競争力の低下をもたらし、経常収支の悪化につながる。
固定的な為替政策でハイパーインフレは収束したが、アルゼンチンの破綻やメキシコの危機のような副作用をもたらした。
変動幅を設定した管理変動制を採用しているチリは、投機的な金融取引を抑制するとともに為替変動幅を拡大すること(当初±0.5%から±10%まで拡大)で実質為替相場の上昇を抑えてきた。