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【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:「近代経済システム」における金利と物価の変動 〈その8〉 後半部 投稿者 あっしら 日時 2002 年 7 月 23 日 13:48:30:

(回答先: 【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:「近代経済システム」における金利と物価の変動 〈その8〉 前半部 投稿者 あっしら 日時 2002 年 7 月 23 日 13:47:10)

● 管理通貨制における物価変動

金利そのものが物価変動と大きな関わりがある。
名目金利はともかく、実質金利は、物価変動と金利との関係である。

金利と物価変動について、まず、現在の経済学が陥っているもっともわかりやすい錯誤の説明から始める。

経済学は、「高金利は物価上昇を抑制し、低金利は物価を上昇させる」という理論があたかも真理であるかのように語っている。
しかし、この理論は、通貨が価値実体で量的に制限されていない管理通貨制ではまったく適用できないどころか、その正反対の結果をもたらす。(金本位制での通用性は後で説明する)

なぜなら、

[高金利:好況期でインフレ率が高まったときの対処策と考える]

経済主体にとって金利負担の増大はコストの上昇そのものなので、これまでよりも高い金利で通貨を借り入れた経済主体は、同じ利益を確保するために販売する財の価格を引き上げなければならない。

まず、上昇した価格でも財の輸出が増加すれば、国民経済内の財供給が減少する一方で財に対する需要は変わらないので、金利負担増加に見合うレベルでの財の価格引き上げを実現できる可能性が高く、利息負担が増えた経済主体の利益も減少しないで済む可能性が高い。

上昇した価格では財の輸出が増加しない場合でも、インフレ傾向であれば、家計や経済主体は、現在の余剰通貨と将来の収入増加を睨みながら、余剰通貨を取り崩して財の購入に回してくれる可能性があるので、財の価格引き上げという目論見は実現されやすい。家計や経済主体の代わりに、政府が支出を増やしても同じである。

このような物価変動を認識した銀行は、実質ベースでの資本の増加を実現するため、さらに貸し出し金利を引き上げようとする。

しかし、財の輸出が減少したり、家計や経済主体に余剰通貨の余裕がなくなると、財の供給と財に対する需要のバランスが変わり、需要が財の価格上昇に追いつかなくなる。そのため、財の販売が減少し、経済主体の利益も減少することになる。

それでも、利益を確保するために経済主体が財の価格上昇に固執すると、販売量低下→資本化減少→需要減少という悪循環で不況が進行し、ついには財の価格も反落し、貸し出し金利も低下するようになる。

輸入の増加は、輸入された財が国内の経済主体と競争関係にあるものならば、資本化される通貨量を減少させることで需要が減るため、財価格の上昇を阻害し、経済主体の利益を減少させる。

財の価格上昇は、相手国民経済との相対的な比較になるが、自国通貨安になるので、競争関係にある相互が変動相場制であれば、輸出競争力を高める。


よって、インフレ対策としての金利引き上げは、一般的には、インフレ率をより高め、最終的には不況への転換をもたらす結果になる。

合理的なインフレ対策は、緩やかなペースでの貸し出し量の縮小とその後の金利の引き下げである。(好況期は通貨の回転数が上がるので、それを考慮した縮小が必要)

通貨の絶対量を減らすことがインフレを抑制するための優先的手段であり、それによって生じる財の価格下落で生じる経済主体の利益減少を貸し出し金利の引き下げで補うという政策を採るべきである。

[低金利:不況期でインフレ率が低下傾向にあったりデフレであるときの対処策と考える]

経済主体にとって金利負担の減少はコストの下落そのものなので、これまでよりも低い金利で通貨を借り入れた経済主体は、同じ利益を確保するためであれば、財の価格を引き下げてもいいことになる。
不況なのだから、価格競争力を上げて販売量を増加させようと考える経済主体が多いため、財の価格は現実にも下がることになる。

財の輸出が増加すれば、国民経済内に供給される財の量が減少するので、財の価格は下がりにくくなり、あるレベルを超えて輸出が増加すれば、財の価格は上昇に転じる。これは、低金利でコストを減らした経済主体に大きな利益=資本の増加をもたらす。

輸入の増加は、輸入された財が国内の経済主体と競争関係にあるものならば、需要の減少をもたらすので、財価格の下落をいっそう促し、経済主体の利益を減少させる。

財の価格下落は、相手国民経済との相対的な比較になるが、自国通貨高になるので、競争関係にある相互が変動相場制であれば、輸出競争力を低下させる。

また、経済主体間の競争が緩和的であっても物価は下落しにくく、それは特定の経済主体の利益増加に貢献するが、デフレ不況下で利益までが再資本化されることは稀なので、不況の解消にはつながらない。


よって、デフレ対策としての金利引き下げは、デフレ率をより高め、さらに不況を悪化させる結果になる。

合理的なデフレ対策は、貸し出し量の増大とその後の緩やかな金利引き上げである。

しかし、デフレが伴う不況下で貸し出し量を増大させるためには、生産する財に対する需要(内外)を増大させなければならない。その見通しがないなかで相対的に金利が高くなった通貨を借りようとする経済主体はいない。

(貸し出し量の増加ができないのだから、まずは、所得税の負担配分を変えることで労働成果財への需要を上げる政策が必要になる。低中所得者は増加した可処分所得を財の購入に向ける割合が高いが、高所得者は増加した可処分所得を貯蓄や金融資産取引に向ける割合が高い。高所得者なら、少々可処分所得が減っても、財に向ける通貨量は変わらない。このような論理で、低中所得者減税はグロスで財への需要を増加するので、貸し出し量が増える条件をつくることになる)

財の価格上昇は、相互に変動相場制であれば、競争関係にある国民経済通貨に対するレートを下げるので、通貨安になって輸出競争力が高まる。


これまでの説明を踏まえつつ、物価変動の論理をもう少し見ていきたい。

これまで何度か説明してきたことだが、通貨量が増えたからといって、物価が必ずしも上昇するわけではない。通貨量の増加に合わせて財の供給が増加すれば、物価は変動しない。
同じ就業者数という条件で通貨量が増加する場合も、それに合わせて「労働価値」が上昇すれば、物価は変動しない。
就業者数が増加している場合は、それに合わせて通貨量が増加すれば、物価は変動しない。

しかし、これに輸出入という外部国民経済との取引を要素に加えると、この論理が通用しなくなる。


就業者数や「労働価値」が不変であることを前提にすると、競争関係にある財の輸出入変動が及ぼす物価変動を次のように示すことができる。

輸出増減の評価基準は輸出価格で、輸入増減については、輸入価格ではなく、それが、他の財に転化したり、消費される時点の価格ベースであり、それまで国内で生産されていた財の最終価格からその生産に必要な輸入財の価格を際し引いた値が増減比較の基準になる。これは、国内でその財に転化された「労働価値」を意味する。

(原油など国内の経済主体の生産活動と競合しない財の輸入は、その価格変動が物価に影響するのみで量の増加は物価変動と無関係)


1)通貨量一定

輸出増加:国民経済内の財供給が減少するため、物価は上昇する。

輸入増加:競争財だから価格が安いから輸入されたわけで、物価が下落するとともに、その財の生産に関わっていた就業者が減少するので、結果として通貨量の減少につながり、物価をさらに下落させる。


2)通貨量増加

輸出増加:国民経済内の財供給が減少するため、物価は1)以上に上昇する。

輸入増加:輸入財の増加率と価格差率と通貨の増加の関係で、物価は下落・不変・上昇のいずかになるが、輸入の増加は失業者の増加につながるので、長期的には通貨量の減少を招く。


3)通貨量減少

輸出増加:財の供給減少と通貨の減少の関数で、物価は下落・不変・上昇のいずかになるが、輸出の増加は失業者の減少につながるので、長期的には通貨量を上昇させる方向に働く。

輸入増加:競争財だから価格が安いから輸入されたわけで、物価が下落するとともに、その財の生産に関わっていた就業者が減少するので、結果としてさらなる通貨量の減少につながる。

不変と前提した要素のうち就業者数は、就業者数の変動に見合う通貨量の変動であれば、物価を変動させないものである。

もう一つの「労働価値」は、「労働価値」の上昇ペースと就業者数で調整された通貨増加ペースが同じであれば、物価は変動しない。
(「労働価値」は、良心的な経済主体が余剰人員をそのまま抱えているという状況がない限り、下降することはない)

「労働価値」の上昇ペースよりも、就業者数で調整された通貨増加ペースが高ければ、物価は上昇する。
「労働価値」の上昇ペースに比較して、就業者数で調整された通貨増加ペースが低ければ、物価は下降する。


外国為替レートは、変動相場制であれば、比較して物価上昇率が高い方の通貨が安くなる。

前述の1)から3)の通貨量増減が就業者と「労働価値」の論理を加味されたものとして見直せば、輸出入変動による物価変動の説明になる。


インフレやデフレという経済事象がどうして起きるかを、通貨量の増加が就業者数と「労働価値」で調整されたものとし、輸出の増減を輸出価格ベース、輸入の増減は前述の説明によるものとした輸出入差の増減すなわち貿易収支黒字の増減で考えてみる。
但し、原油など国内で代替性のないものの輸入は除外される。
これは、中間財や最終消費財に限定した貿易収支と考えてもらえばよい。

また、通貨量の増減は、赤字財政支出の増減や非労働成果財取引に向けられる通貨量の増減によるものと考えてもらえばよい。
非労働成果財(金融資産)の取引に滞留する通貨の増加は、これまでに説明した通貨量の増減に関して、減少を意味するものである。


1)インフレになる

通貨量が一定であれば、貿易収支黒字が増加している。

通貨量が増加していれば、その増加ほど貿易収支が増加していない。

通貨量が減少していれば、その減少以上に貿易収支黒字が増加している。


2)デフレになる

通貨量が一定であれば、貿易収支黒字が減少している。

通貨量が増加していれば、その増加以上に貿易収支が減少している。

通貨量が減少していれば、その減少ほど貿易収支黒字が増加していない。


現在の日本は、「通貨量が減少していて、その減少ほど貿易収支黒字が増加していない」ことで、デフレ不況に陥っていると推測できる。
そして、統計で示される貿易収支の黒字値には、日本が恒常的に輸入しなければならない原油など原材料の輸入増減値も反映されているので、それを加味すると、通貨量の減少に較べて、ずっと貿易収支の黒字が不足していると思われる。

デフレを解消するためには、金融資産取引に滞留する通貨を減らすかその増加以上に通貨量を増加させつつ、原材料を除くベースでの貿易収支黒字を増加させなければならないことになる。


また、「需給理論に基づいて、通貨が高価格(=高金利)であれば、通貨への需要を減退させる」とい考え方については、借り入れ対象の通貨は、その通貨を使ってそれよりも多い通貨を手に入れるためのものであり、名目的に高い金利であっても、その通貨を使って生産する財が高く売れるのであれば積極的に借り入れをするものだから、一般論としては通用しない。
通貨は、限られた可処分所得で消費してしまうものを買うという一般の財とは異なる“商品”である。
また、名目金利が9%でも、インフレ率が10%であれば、実質金利はマイナス1%であり、インフレ傾向にあるのなら、ほとんど通用性がない考え方である。
この考えの通用性は、インフレ率低下状況やデフレ状況に限定される。


● 金本位制における金利と物価の関係

過去の経済システムなのだが、同じ「近代経済システム」なので、金本位制の金利と物価がどう関係しているかを考察してみたい。

経済主体が考えるコストと財価格の関係は、管理通貨制と変わらない。
違いは、通貨の貸し出し量が、中央銀行が保有する金の量で規定されているということである。

以下のどの場合も、国内向け紙幣発行量を規定する保有金量とし、輸出入を考慮外とする。


[金利上昇]

1)通貨量一定

中央銀行の保有金量が一定であれば、金利が上昇しても通貨量は変わらない。返済された通貨が新たな貸し出しに回るだけである。

この場合は、財への需要は変わらないから、財の価格を上昇させたことで財の販売量が減少したり、財の価格を上げることができないことになり、どちらであっても利息の増加で経済主体の利益が減少する。経済主体が財の価格上昇に固執すると、販売量低下→資本化減少→需要減少という悪循環で不況へ向かう。


2)通貨量増加

中央銀行の保有金量が増加し、金利を上昇させるとともに通貨量も増加する。
この場合も、財への需要は増加するがその分財の供給も増えるので需給関係は同じで、財の価格を上昇させたことで財の販売量が減少したり、財の価格を上げることができないことになり、“1)通貨量一定”の場合と同じ結果になる。


3)通貨量減少

中央銀行の保有金量が減少し、金利を上昇させたが総通貨量は減った。返済された通貨がそのまま中央銀行に残る。
この場合は、財への需要は減少するがその分財の供給も減少するので需給関係は同じで、財の価格を上昇させたことで財の販売量が減少したり、財の価格を上げることができないことになり、“1)通貨量一定”の場合と同じ結果になる。


このように、通貨量の変動は、増減いずれの場合でも同じ結果をもたらすが、経済主体が利息を支払うことで、一時的に再資本化できる通貨が減るので、利息がすぐに貸し出しが回らない限り、一時的には需要減少方向=物価下落に動く。
しかし、借り入れをした経済主体の利益が減少し、再資本化を増加させようとすれば、より借り入れに依存しなければらないため、経済活動は抑制すなわち不況に向かう。

[金利下降]

1)通貨量一定

この場合は、財のコスト低下で財の価格下落余地が生まれるが、通貨量は変わらないことから財の供給も財への需要も変わらないので財の価格も変わらず、経済主体の利益が増加することになる。
得た利益をすぐに資本化することで、財の生産量と販売量は増えるが、財の価格は変動しない。但し、この増加は、それほどの量ではなく、金利の下降傾向が止まればなくなる。
(銀行が受け取る利息の減少がもたらす効果である。これにより、失業者が減少する)


2)通貨量増加

この場合は、通貨量は増加したことで財の供給も財への需要も同じように増えるので財の価格も変わらず、“1)通貨量一定”の場合と同じ結果になる。


3)通貨量減少

中央銀行の保有金量が減少し、金利が下降し総通貨量が減少した。

この場合は、通貨量が減少したことで財の供給も財への需要も同じように減るので、財の価格も変わらず、経済主体の利益が増加することになる。得た利益を資本化すれば、財の生産量と販売量が増えるが、財の価格は変動しない。
通貨量が減ったことで失業者は増大しているが、これにより、少し緩和される。


このように、通貨量の変動は、増減いずれの場合でも同じ結果をもたらすが、経済主体が利息として支払う通貨量が減ることで、迅速な資本化が行われやすくなり、経済活動の活発化すなわち好況をもたらす。


金本位制であれば、経済学が語っている「高金利は物価上昇を抑制し、低金利は物価を上昇させる」という理論がある程度通用するとも言える。(余剰通貨を持つ経済主体や家計が多ければ、高金利でも物価が一時的に上昇することは、管理通貨制の場合と同じ)

しかし、冷静に考えればわかるように、輸出入を含めないここまでの想定であれば、インフレは通貨現象とするマネタリズムのほうが通用性が高い。

なぜなら、

高金利は利息として引き上げる通貨量を増やすことで、労働成果財に向けられる通貨量を減らし、物価を下落させる。

低金利は利息として引き上げる通貨量を減らすことで、労働成果財に向けられる通貨量を増やし、物価を上昇させる。

という論理になるからである。


次に輸出入を考慮に加えてみる。

どの場合も、輸出が増加すれば、財の価格上昇につながり、経済主体の利益を増加させる。輸出が大きく増加すれば、財の大幅な価格上昇や経済主体に大きな利益増加をもたらす。
(金利上昇によるコスト増加も、輸出増加による財の供給量減少により、財の価格上昇がスムーズになり吸収されやすくなる)

輸入の増加は、それにつれ輸出も増えるのであれば、金保有量を増減させないので、国内向け通貨量には影響を与えない。輸入経済主体が通貨を支払って正貨を手に入れ、減った正貨を輸出経済主体が補ってくれれば、輸入経済主体が支払った通貨を再度貸し出しに回るからである。(輸入増加が基本保有量の減少になれば、通貨量が減るため、国際借り入れをしないと不況になる)

しかし、輸入される財が国内の経済主体と競争関係にあるものならば、財価格の低下そして経済主体の利益減少に結びつき、その財を生産する資本=通貨の量を減少させていくので、物価を下落させる。

そして、相手との相対的な比較になるが、財の価格下落は輸出競争力を高め、財の価格上昇は輸出競争力を低下させる。(金為替本位制の固定レートだから、価格変動が変動制相場制とは逆に働く)


このように、金本位制も、物価と金利が直接結びつくわけではなく、輸出入の変動が物価の変動に大きな影響を与えることがわかる。


このように、通貨管理制でも金本位制でも、「労働価値」の上昇をベースにした競争関係にある財の輸出入差の増減が、本質的な物価変動規定要因であることがわかる。


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