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(回答先: 金日成主席は語る 投稿者 チェチェ研 日時 2002 年 10 月 02 日 21:06:50)
小田実『私と朝鮮』
たしかに今の「北朝鮮」を「南侵」の準備態勢にある国として見るには、きちがいじみた猜疑心と想像力を必要とするにちがいない。その猜疑心と想像力の現れが「北」がつくったというトンネルだろう。そんなことを言い出せば、「北」にもいくらでも言い分があって、板門店の会議場を案内してくれた「北」の将校は「南」がいかに協定に違反して武器弾薬を「非武装地帯」に持ち込んでいるかを証明した。
いや、そんなこまかな証明より、あのポプラの本一本を伐り出すためにヒコーキはおろか軍艦まで出動したという「板門店事件」がいい例だろう。あの死者二人を出すという不幸な結果を生んだ「事件」は、アメリカ合州国と「南」の合作の挑発によって始められたことには疑問の余地はないにちがいない。
金日成さんも板門店の会議場を案内してくれた士官も、私と話しているときに、自分たちは挑発にのせられたのだと正直に告げていたが、一日目の乱闘のあと、大挙して押しかけて来たアメリカ合州国と「南」側の連合部隊の行動に対して手を出さずに見ているということは「北」にとって、ことに現場の兵士たちにとって、たいへんに忍耐のいることだったと思う。私はその忍耐を高く評価するが、私が現場でそれを言い、そうした忍耐は人民軍の弱さではなくて強さをあらわすものだと言うと、彼らは今にも泣き出しそうな表情になった(私が「事件」以後、坂門店に初めて足を踏み入れた外国人だった)。
一日目の乱闘があってすぐ金日成さんの、挑発にこれ以上のるなという命令が来たそうだから、「北朝鮮」側の、挑発にのるまいとする気持ちはそれほど強かったということができるにちがいない。もちろん、これを「北朝鮮」側の軍事力の弱さとも見ることができるし、中国、ソビエトとも、もはや「北朝鮮」のうしろ楯となる気はなかったからだと、いかにも消息通らしいうがった観測をすることもできる。私ばこういうのを二つながらあまりにも原理原則からはなれた情報通の情報知らずの典型だと考えるのだが(「北朝鮮」の人が言っていた。べつに政府のえらいさんでもなくて、ちまたのインテリ──の数は、教育水準があがったり、「水曜学習」「土曜学習」をやったりしているので、豊富である──のような人物の発言だが、挑発にのったら「南侵」と言うでしょう、それでのらなかったら、「北朝鮮」は弱くなったという、どうすればいいんですかねと彼は笑った)、そういう半可通の情報が正しいとしても、「北朝鮮」が今はもう「南侵」するつもりはないという結論になる。