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実に的確な指摘。「職業政治家 小沢一郎」の書評を山口二郎氏に頂きました。「統治システムのデザイナー」であり「政党再編のオーガナイザー」でもあるという小沢氏の最大特色を正確に読み込み民主党政権の挫折の原因もポイントを捉えています。新しい政治に挑戦しましょう! https://t.co/NBHzgyKtzA
— 佐藤 章 (@bSM2TC2coIKWrlM) September 11, 2020
合流新党結成のキーマン「職業政治家 小沢一郎」の挫折と希望
https://dot.asahi.com/dot/2020090800059.html
2020.9.11 08:00 dot.
山口二郎氏 (c)朝日新聞社
職業政治家 小沢一郎 佐藤 章
合流新党がついに結成へ……小沢一郎氏「最後の戦い」とは? 民主党政権はなぜ失敗したのか、その分析と反省。そして3度目の政権交代を目指す理由を激白した13時間を収録した書籍『職業政治家 小沢一郎』(佐藤章著)について、「一冊の本」10月号に掲載される、政治学者・山口二郎氏の寄稿文を特別に掲載する。
* * *
本書は、小沢一郎という政治家を通して見た日本政治の30年史である。小沢は、今でもプラス、マイナスの両側から強い反応を誘発する政治家である。それゆえ、小沢を通して政治の展開を描くことには意味がある。個人的な感慨を述べさせてもらえば、私が同時代の政治に関する批評、分析を始めたのは、小沢が自民党幹事長として大きな影響力を持ち始めた1990年前後であり、私にとっても大きな影響を受けた政治家である。本書を読むことは、自分の半生を振り返り、どこで何を失敗したかを考える作業ともなった。
小沢は統治システムのデザイナーであった。彼の主題は統治システムの改革である。官僚支配を打破して、政策決定、とりわけ予算編成を政治主導で行うことが小沢の宿願であった。いわば、その問題意識は1993年5月に出版された『日本改造計画』(講談社)で明快に打ち出された。この点は、私自身も同じ時期に出した本で同じ主張を展開していて、驚いたことがある。著者の佐藤章は、小沢の制度デザイナーとしての冷徹さと合理性を強調する。これは、小沢を理解するために不可欠な視点である。
政治主導の理念は民主党政権の柱とされ、国家戦略局という組織がその任に当たると思われていた。これが不発に終わった経緯を、著者は描いている。のちに、民主党を二分して争うことになる菅直人も小沢と同様の問題意識を持っていた。菅は、鳩山内閣の国家戦略担当大臣に就任した。予算配分こそ国家権力の行使そのものだが、首相、菅、小沢の間に食い違いがあった。菅は、国家戦略大臣が内政全般の総合調整を行えば二人目の首相が出現する事態となると、慎重な姿勢であった。膨大なマニフェストの項目を予算に落とし込むには政治的な調整が必要だが、内閣の中に当初構想したような権力核を作ることはできなかった。その結果、小沢が幹事長としてそのような調整機能を担い、幹事長室が事実上の国家戦略局となったというのが佐藤の分析である。これは、実に興味深い指摘である。
小沢は、選挙制度改革を突破口とした政党システムの再編に関しても、政界随一のデザイナーであった。新たな政党の立ち上げは、細川政権から新進党結成の時期の小沢の思想と行動の中心的テーマであった。この点について、以前から疑問があった。田中角栄の直弟子で選挙の勝ち方を誰よりも熟知している小沢が、小選挙区制を導入しただけで自動的に二大政党制ができると思っていたはずはない。小沢がモデルとしていたイギリスでは、保守、労働の二大政党が650の定数のうち、それぞれ200余りの牙城を持っている。自民党に対抗する政党は、風に乗って政界に入ってきた議員を集めるだけではできないことは、百も承知だったろう。選挙制度改革から新党結成にいたる戦略をどう考えていたのか、もっと詳しい話を聞きたかった。
小沢には、政党再編の中心に立つオーガナイザーという顔もある。彼は、自民党の最中枢で仕事をしただけに、従来の政党や統治システムの限界を理解しており、自民党という岩盤を破壊することなしに、システムの刷新はできないと信じていた。しかし、細川政権、小渕政権における仕掛けは失敗に終わった。あと一歩のところで止めを刺せないという悔しさを味わったわけである。この間の小沢の野望と挫折も、本書で明らかにされている。
2009年の民主党政権こそ、自民党を壊滅に追い込む最大の好機となった。先に紹介したように、小沢は政策調整の要として大車輪の奮闘をした。同時に、民主党の地域基盤を強化する課題にも取り組んだ。本書で紹介されている農業土木予算の大幅削減、地方からの陳情を党の県連を通すというルートの整備こそ、自民党との決戦の武器となった。
しかし、鳩山内閣、民主党執行部は戦略の共有ができていなかった。本書の解釈だと、小沢が有能で政務も党務も一人で抱え込んでいた一方、内閣に入った政治家の政治主導は空回りするばかりで、次の選挙に勝って民主党政権を続けるという問題意識を持っているのは小沢だけだったということになる。小沢の下に、かつての竹下派の七奉行のような有能な政治家のチームを作っていたらと悔やまれる。
消費税増税をめぐる対立が、民主党の分裂に至ったことは、政権交代のプロジェクトを振り出しに戻した大失敗であった。これについては、小沢にも責任があったと私は思う。この点について、小沢の本音を引き出すことも著者の課題である。続編を待ちたい。
安倍首相が退陣し、枝野幸男を指導者とする野党の塊ができることになった。次の総選挙は久しぶりに二大勢力が政権を争う選挙となる。小沢にとっては文字通り最後の一戦となる。この30年の試行錯誤の上に、政治の刷新を実現することが野党勢力の任務である。評価はいろいろあるだろうが、小沢の軌跡を検証し、その功績を共有することが次の戦いの必須条件である。
山口二郎プロフィール
法政大学法学部教授。著書に「民主主義は終わるのか」など多数。
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