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単なる景気後退なら長短金利差はゼロになるが、スタグフレーションなら長短金利差はマイナスとなる
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1484.html
投稿者 中川隆 日時 2022 年 2 月 07 日 10:14:35: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: スタグフレーションに備えよ! 投稿者 中川隆 日時 2021 年 10 月 21 日 14:19:17)

単なる景気後退なら長短金利差はゼロになるが、スタグフレーションなら長短金利差はマイナスとなる


急速にスタグフレーションを織り込む金融市場
2022年2月6日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19606


2022年1月から急落した株価がある程度反転して安堵している投資家も居るかもしれない。しかしそれは株式市場だけを見た場合の話であって、金融市場全体を見渡すと悲観が支配したままであることが分かる。

ここの記事を読むことの利点は、日本の個人投資家が普段見ないような市場の情報を掲載していることかもしれない。そしてそうした情報は特に今の相場では重要である。

何故ならば、現在の相場のテーマがインフレとスタグフレーションだからである。つまりは経済成長率と物価上昇率であり、そうした数字をテーマとする相場が株式市場の隣に存在する。債券市場である。

スタグフレーションと債券市場

債券市場には色々な債券が存在する。メインとなるのは国債であり、今はアメリカのインフレの話なので米国債の話となる。

国債には期限が存在する。10年物国債は、10年後に米国政府がお金を返すという契約である。2年物なら2年後となる。

まず2年物国債の金利はそれより期間の短い政策金利と競合する。アメリカの場合、政策金利はより短期の銀行間の貸し借りのレートなので、銀行は短期国債の金利が政策金利より高いと国債に乗り換えようとし、逆に低いと政策金利に乗り換えようとする。

したがって2年物国債の金利とこれから2年間の政策金利は競合し、2年物国債は今後の政策金利の市場予想を示すようになる。

一方でより期間の長い10年物国債や30年物国債はどうだろうか? 期間が長いほどお金が返ってくるかが不確かなので、通常の市場では短期国債よりも長期国債の金利が高くなる。より高いリターンがなければ、投資家はよりリスクの高いものには投資しないということである。

短期金利と長期金利の違い

まず今後の政策金利を予想して動く2年物国債の金利がどうなっているかを見てみよう。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-2-6-us-2-year-treasury-bond-yield-chart.png


このチャートも何度も出しているが常に右肩上がりが止まっていない。市場はアメリカで高騰する物価に従って今後の利上げ予想を上方修正し続けているのである。

ちなみに現状、債券市場は年内の利上げ回数を5回または6回と織り込んでいる。これはまだ増えるかもしれない。

さて、短期金利が政策金利に依存する一方で、長期金利はインフレ率と経済成長率に左右される。インフレ率が高ければ投資家はより高いリターンを債券に求め(インフレより高いリターンがなければ債券投資で実質的に損をしてしまう)、経済が成長していれば貸したお金が無事返ってくる可能性も高まるだろう。

よって長期金利は次の式に近似すると言われている。

長期金利 = 期待インフレ率 + 期待実質経済成長率


ではこの長期金利がどうなっているかと言えば、次のようになっている。


https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-2-6-us-10-year-treasury-bond-yield-chart.png

上がってはいるが、去年春の水準と今の水準がそれほど変わらないなど、2年物国債の一本調子の上げに比べて頭を抑えられている。

何故か。上の式を見れば、この間インフレ率は7%を超えるなど市場のインフレ期待は上がり続けているので、その分経済成長率の期待値が下がり続けているということになる。

予想される2022年の逆イールド

このようにインフレ対策の利上げで短期金利が上昇するにもかかわらず、景気後退懸念から長期金利が上がらないとき、短期金利が長期金利より高くなることがある。長短金利差の逆転、いわゆる逆イールド(イールドは金利の意)である。

これは金利が短期的には上昇するが、金融引き締めの行き過ぎが株価暴落や景気後退を引き起こし、その後下がるということを織り込んでいるとも見られる。

歴史上のチャートを見ると、単なる景気後退なら長短金利差はゼロになるが、スタグフレーションなら長短金利差はマイナスとなって逆イールドとなる。

以下の長短金利差(10年物金利から2年物金利を引いたもの)のチャートのうち、インフレ率が2桁まで上昇した1980年前後の部分を見てもらいたい。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-2-6-us-10-year-treasury-bond-yield-minus-2-year-treasury-bond-yield-chart.png


インフレ抑制のため短期金利を下げられない一方で長期金利が短期金利以上に急落するので、長短金利差が下に沈むのである。

また、ゼロに到達した他の期間においても、その後すぐに景気後退(灰色の部分)に突入していることにも注目したい。スタンレー・ドラッケンミラー氏は次のように言っていた。

資本主義者ドラッケンミラー氏、アメリカの金融緩和終了を歓迎
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19273


金利操作の時代以前には、債券市場と金利はわたしや95%の経済学者などよりも優れた景気見通しの予想者だった。

だが金利操作の時代においてもこれは素晴らしい的中精度だと言えるだろう。債券市場は株式市場と違い、非常に理性的な市場なのである。そこが債券の面白いところである。

スタグフレーションに近づく債券市場

さて、では景気後退を高確率で予想する長短金利差は、ここ何日かの株価反発でどう動いているだろうか? 直近のチャートを掲載しよう。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-2-6-us-10-year-treasury-bond-yield-minus-2-year-treasury-bond-yield.png


株価反発などお構いなしに下を目指し続けている。これが金融市場における本当に理性的な目であり、これが真実だろう。株価反発で安堵していた投資家も、これを見れば考えを変えるのではないか。景気後退まであと0.6%まで近づいている。

結論

ということで、金融市場は株価反発にお構いなく景気の墜落を織り込み続けている。株価だけが生き残るということは有り得ないだろう。年始の予想を継続する。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する (2022/1/6)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18367


問題は長短金利差が景気後退の水準(ゼロ)で止まるのか、スタグフレーションの水準(大幅マイナス)まで行くのかということである。長期のチャートをもう一度掲載しよう。


https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-2-6-us-10-year-treasury-bond-yield-minus-2-year-treasury-bond-yield-chart.png


筆者の予想は当然マイナスである。アメリカのインフレ率は7%を越えている。これはコロナショック(2020年)やリーマンショック(2008年)やドットコムバブル崩壊(2000年)とは違うのである。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18620


ちなみに債券市場では債券を売買することが出来るので、以下の記事からこのシナリオに賭け続けている筆者は利益を上げ続けており、しかもまだ利益の余地は大きい。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想 (2021/9/5)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/15210


現状はこの記事に書いたそのままの状況であり、去年の秋から今の状況は当たり前だったということである。

特に意見を変える要素は何もない。長短金利差は淡々と下がり続け、見事にスタグフレーションまで行ってしまうだろう。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19606  

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コメント
1. 中川隆[-13826] koaQ7Jey 2022年2月07日 10:18:20 : oCqatUkqPM : VzByNlhuRTcyRkE=[29] 報告
長期金利とテーパリングの関係
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1097.html
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1127.html

単なる景気後退なら長短金利差はゼロになるが、スタグフレーションなら長短金利差はマイナスとなる
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1484.html

金利上昇で下落するハイテク株、上昇する金融株
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1237.html

金利が上昇すると特に成長株の株価が下がる
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1451.html

米金利上昇でドル高・円安というのは市場の投機的な動きであり、長期的なトレンドを形成するものではない
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1239.html

2. 2022年4月05日 20:54:13 : H3M2f4UkNc : N1huZFFzeEgyWTY=[6] 報告
長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について
2022年4月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22559


予定通りと言うべきだが、先週アメリカの債券市場でついに2年物国債の金利が10年物国債の金利を上回る逆イールドが発生した。今回は長短金利逆転が株価と経済に持つ意味について解説してゆきたい。

長短金利逆転は何故起こったか?

そもそも長短金利差とは何かについてまず説明しておくが、国債などの債券は誰かに(国債の場合は政府に)お金を貸すという行為を証券化したものである。

よって何年間お金を貸すのかによって期限が設定される。2年貸せば2年物国債であり、10年貸せば10年物国債である。期限が来ればお金は政府から返ってくる。その間は金利を(マイナス金利でなければ)貰い続けられるということである。

期限が長ければ長いほどお金が返ってくるのかどうか不確かになるため、通常期間が長いほど金利は高くなる。より大きなリスクに対してより高い金利が払われなければ釣り合わないということである。

だがその長短の金利(一般的には2年物国債と10年物国債の金利)が逆転することがある。それが長短金利逆転とか逆イールド(イールドとは利回りの意味である)とか言われる。

この長短金利の逆転は何故起こるのだろうか。まず2年物国債がどのように動くかを解説しておくと、2年物国債は比較的短期の国債であるため、銀行などお金を持っていて資産運用をしている組織は他の短期の運用手段と比べながら2年物国債を買うかどうかを検討することになる。

2年物と10年物の違い

2年物国債と競合するのがアメリカの政策金利であるフェデラルファンド金利である。フェデラルファンド金利とは、銀行間が1日単位でお金を貸し借りをする場合(翌日物という)の金利で、アメリカでは中央銀行がこれをコントロールしている。

銀行などが考えるのは、ここから2年間、2年物国債を買って金利を貰い続けるのか、フェデラルファンド金利を毎日貰い続けるのかである。

だから、2年物国債の金利とフェデラルファンド金利(年率)はかなりの程度競合し、2年物国債の金利は今後2年のフェデラルファンド金利の予想値を反映するようになる。

つまり、2年物国債の金利は今後2年の政策金利の予想値に左右されるということである。

一方で、10年物国債は結構長い期間のお金の貸し借りである。不確実性も2年物より大きく、10年の間には政策金利も大きく変わるだろうから、毎日フェデラルファンド金利を借り換えることと比較することは不合理である。

よって10年物国債の金利はよりリスクの高い資産、例えば社債や不動産の利回りや株式の益回りなどと比較される。これらの比較対象は今後経済が好調なのかどうかによって利回りが変わってくるため、10年物国債の金利は今後の名目経済成長率(インフレ率+実質成長率)に左右される。

つまり、2年物国債は政策金利に、10年物国債は実体経済に影響される度合いが大きいということである。

長短金利逆転

政策金利と実体経済はどうなっているだろうか。アメリカでは物価が高騰し、インフレ抑制のために政策金利が上がり始めている。

3月FOMC会合結果は利上げ開始、政策金利は年内に2%以上となり株価暴落へ
一方で政策金利が2018年の世界同時株安を引き起こした水準以上に上がってゆく可能性が高くなり、強力な金融引き締めが経済の活気を奪う可能性がますます高くなっている。

これは政策金利に連動する2年物国債の金利が上がる一方で、10年物国債の金利はそれほど上がらない状況を示している。

ここでは、去年の9月に長短金利について予想した記事で次のように書いておいた。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想 (2021/9/5)
テーパリングが強行され、利上げが行われる場合、アメリカ経済は高い確率でそれに耐えられない。短期金利が利上げに連動して上がる一方で、長期金利はそれほど上がらないか、むしろ下がってゆくだろう。

恐らく1980年と同様の長短金利差逆転が起きると筆者は推測している。

当時、10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いた長短金利差は1%以上あった。その後長短金利差はどうなったかと言えば、次のように推移している。


予想通りである。

株価と実体経済への影響

長短金利の逆転の持つ意味について話す前に、そもそも長短金利の逆転は去年から明らかだったということについて話しておきたい。

現金給付や脱炭素政策のお陰でアメリカでは物価が高騰している。にもかかわらず、中央銀行は長らくインフレを無視したまま量的緩和を続けてきた。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
インフレが起こっているのに紙幣印刷を続けていたことの狂気が理解できるだろうか。少なくとも何処ぞの黒田氏には理解できないだろう。

結果としてインフレはますます酷くなり、後でより厳しい金融引き締め政策を行わなければならなくなることは自明だった。中央銀行や政治家などの金融の素人にとって自明ではなかっただけの話である。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
今回の物価高騰の結果行われる利上げと量的引き締めは、2018年の世界同時株安を引き起こした引き締め政策よりも強力にならざるを得なくなることは去年の段階で明らかだったし、それは現段階でより明らかになっていると言える。

例えば、今後の政策金利を示す2年物国債の金利は2.5%以上に上がっているが、これは2018年の政策金利の最高値を上回っている。


2018年にはトランプ政権の経済政策により経済は今よりもよほど力強かったにもかかわらず、政策金利がこの水準に達する前に株価は暴落したのである。今の2年物国債の金利はそれ以上の水準を織り込んでいる。

2018年の世界同時株安については当時の記事が役に立つだろう。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
結論

上記のように長短金利の逆転は筆者にとっては当たり前であり、予想した内にも入らないのだが、少なくともこの国債トレードが成功したことは素直に喜ぶべきだろう。

今後についてはほとんど言うまでもない。この長短金利の逆転が2018年の株価暴落の再来を示していないという人は、単に2018年の相場を勉強していないだけである。以下の記事を参考にしてもらいたい。

マイナード氏: 利上げで株式市場は2018年と同じ株価暴落へ
2018年の世界同時株安では何から順番に暴落したかを振り返る
ただ何度も言うように本当の問題は、2018年の危機ではパウエル議長が引き締めを撤回して株価は反発したが、今回はインフレが続く限り株価が暴落しても引き締めが撤回できない可能性が高く、株価が暴落しているにもかかわらず引き締めが撤回できなければ、株価は本当に底なしの下落に突き進んでゆく可能性があるということである。

2022年の相場は本当に面白い相場になるだろう。楽しみに待っていてもらいたい。

金融引き締めはインフレ率より先に株価を退治してしまうだろう
2022年の株式市場: パーティは終わっているのにまだ踊っている人がいる


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22559

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