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何故日本円は暴落しないのか?
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1419.html
投稿者 中川隆 日時 2022 年 1 月 05 日 13:19:36: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 日本に借金なんか無い _ 日本政府の「隠し資産」はGDP比2倍もある 欧米メディアが指摘 投稿者 中川隆 日時 2021 年 11 月 22 日 20:58:17)


世界最大のヘッジファンド: 何故日本円は暴落しないのか?
2022年1月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18335


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを創設したレイ・ダリオ氏がMercatus Centerのインタビューでドルや円など為替市場について語っている。

債務は通貨を暴落させるか

これは前回のインタビューの続きである。

世界最大のヘッジファンド: 金融市場はランダムウォークではない
テーマはアメリカの負債に移る。アメリカは莫大な政府債務を負っており、しかも財政赤字も経常収支も増え続けている。

ダリオ氏の意見によれば、アメリカはドルが基軸通貨であったことによってこの状況を維持出来ているが、維持出来てしまっているがためにアメリカの負債は膨れ上がることになった。

そこで司会者は1つの疑問を挟む。ドイツや日本は通貨が基軸通貨でないにもかかわらずアメリカより低い金利で借金が出来ている。ではドルが基軸通貨であることはそれほど重要だろうか?

ダリオ氏はこう答える。

ドイツと日本は国外にほとんど債務を負っていない。

アメリカの債務が問題だとするダリオ氏の議論に対して、日本の方が負債は多いではないかと思う読者もいるかもしれない。

司会者も、「日本は途方もない債務を負っている、それは国内に向けられたものだが、それでも日本の国債は引き受け手を見つけることが出来る」と続ける。

ダリオ氏は次のように応答している。

しかしそれは国内の債務だ。別の言い方で言えば、日本政府は国債を購入する自国民を見つけることが出来る。日本は差し引きで債権国だ。そして米国は差し引きで債務国だ。

ここまでの議論が分かるだろうか?

政府債務と対外債務

まずアメリカと日本を含むいくつかの国の政府の純債務(GDP比)を並べてみよう。

アメリカ: 99%
日本: 167%
イギリス: 92%
スイス: 22%
オーストラリア: 34%
トルコ: 32%
しかしこれは単純に政府がいくら借金しているかという数字であり、貸し手や借り手が国内か国外かという話は考慮していない。

では次に対外純資産、つまりその国が国外に対してどれだけの資産(マイナスは負債)を持っているのかを並べると次のようになる。

アメリカ: -65%
日本: 63%
イギリス: -26%
スイス: 98%
オーストラリア: -41%
トルコ: -35%
ダリオ氏が「日本は差し引きで債権国、アメリカは債務国」と言う時、指しているのはこちらの数字の方である。

つまり、ダリオ氏によれば日本政府の莫大な借金にもかかわらず日本円が暴落しないのは、対外的には負債ではなく資産を持っているからだということである。そして言うまでもなくこの資産は高度経済成長期の産物であり、この対外資産は利子などの形で外貨を稼ぎ、日本の経常収支を押し上げている。

だがこの資産はどんどん使われてゆくだろう。家計の持つ資産の多くは高齢者が持つものであり、その大部分は相続税という形で日本政府が徴収し、日本政府はそのお金を好き勝手に使うだろう。資産保有者の高齢者への偏りを考えれば、日本に経常収支をもたらしていた資産は20年もすればかなり減っているはずだ。

つまり現状では政府債務が膨大でも対外資産があれば日本円はそれほど下落しなかったものが、20年ほどで莫大な政府債務と対外負債をかかえる国になる可能性がある。

政府債務と対外負債の組み合わせ

それがアメリカの現状だが、先進国で同じ状況になっている国は少ない。辛うじて近いのはイギリスとオーストラリアだが、上記のように数字はアメリカほどは酷くないのである。そして途上国で政府債務と対外債務の多い国がどうなっているかと言えば、トルコリラの現状を思い浮かべれば良いだろう。上方向がドル高リラ安である。


アメリカがこうなっていない要因の1つはドルが基軸通貨であるからで、基軸通貨であればドルを買う需要が一定数いつも存在するからである。

しかしそれでも限界はある。だから今アメリカではインフレが起こっているのであり、インフレが起こった(つまり貨幣価値が毀損された)にもかかわらずドルの為替レートが長期的に影響を受けないということは有り得ない。ドル円は株価に従って上昇しているが、これは短期的な動きである。


アメリカでは年間6%物価が上がっている。これはドルの価値が実質的に6%落ちたということであり、これはいずれ為替レートに適用される。だがそのタイミングは数年のラグがあるということは、以下の記事で論じている。

ダリオ氏とサマーズ氏のドル下落に関する論争
では為替レートにインフレが織り込まれてドルが下落するタイミングがいつかと言えば、株価の下落と似たタイミングとなるだろう。

マイナード氏: 来年の利上げは株価にとって危険
ガンドラック氏: 株価急落のタイミングはジャンク債が教えてくれる
不動産バブル崩壊の中国、値下げ禁止令で価格暴落に対抗
日本円はまだ無事である。しかし政府債務が167%の状態で高度経済成長期の遺産を食い潰したあと日本がどうなるか、一度は考えてほしいものだが、東京オリンピックとGO TOトラベルにもかかわらず自民党を再選させた日本人には何を言っても無駄だろう。日本国民は殴られても次の日には忘れている民族である。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18335  

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コメント
1. 中川隆[-14313] koaQ7Jey 2022年1月05日 13:37:05 : gLuUc59d7w : QmNPWm0wd2JUZEU=[5] 報告
ダリオ氏とサマーズ氏のドル下落に関する論争
2021年6月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14160


前回の記事ではBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のインタビューについてお伝えしたが、このインタビューにはもう1人優れた頭脳が参加している。経済学者のラリー・サマーズ氏である。

過熱するアメリカ経済

世界最大の運用資金を抱えるダリオ氏がヘッジファンド業界のトップなら、サマーズ氏は経済学者のトップであると言えるだろう。

この2人はコロナ相場における緩和バブルが何らかの危険な帰結をもたらすということでは同意している。サマーズ氏はアメリカ経済の状況を次のように表現している。

今、経済は時速100マイル(時速150キロ程度)で走っている。道は今は空いているが、常に空いているとは限らない。

事故がどのような形になるかは分からないが、時速100マイルで走ることは必ずしも目的地に辿り着く最速の方法とは限らない。そういう走り方では何らかの問題が生じるからだ。

サマーズ氏は事故がどういう形になるかは分からないと言う。

一方でダリオ氏の主張は幾分明快のように思える。ダリオ氏は前回の記事で、中央銀行が金利上昇を抑えるために緩和を拡大せざるを得ず、ドルが下落するというシナリオを明確にしている。

世界最大のヘッジファンド: 市場下落なしに緩和縮小はできない
ダリオ氏はドルの代わりに金利の高い人民元建ての資産に資金が集まると主張している。

ドルは下落するのか?

サマーズ氏の方は明確な予想をすることに慎重である。

問題が生産性や労働市場に起こるのか、金利高騰として起こるのか、ドルの価値が下落することで起こるのか、予想しようとは思わない。しかし経済は問題のあるコースを走っており、あらゆることが起こり得る。

金融市場を正確に予想することは誰にも出来ない。だが過剰な資金が市場に注ぎ込まれており、それを前提としたリスクテイクが過熱していることは確かなように見える。

特に興味深いのは、サマーズ氏が必ずしもドルが下落するとは思っていない部分である。彼はこう補足している。

1980年代には巨額の財政赤字が経済成長を促し、資本市場に流れ込んで強いドルに繋がった。

だから短期的な動きについては分からないが、わたしはレイほどは中国や諸外国の資本市場が長期的にドルよりも魅力的になるかどうかについては確信できない。

1980年代は1970年代に始まる物価高騰と引き締めのサイクルの後に大幅な利下げと財政出動が行われた時代である。

この期間にドルはどうなったか? 以下はドルマルク(ドイツの通貨ドイツマルク)のチャートにアメリカの政策金利を並べたものである。ドルマルクは上方向がドル高マルク安となる。


財政出動と利下げはともに1981年頃から行われているのだが、この期間においてドルは大幅に上昇している。1985年からは下落に転じているのだが、緩和とドル安の時期は一致しておらず、ドル安に向かったのは緩和開始から4年が経過した後である。

サマーズ氏は次のように続ける。

ドルの下落リスクは確かに高い。人々の言うことの中で一番奇妙なのは、今はグローバル化の時代で、インフレトレンドは急激には動かない、グローバル化のお陰で急激なインフレにはならないというものだ。

わたしは正反対だと思う。グローバル化のお陰でアメリカは以前よりいわば小国のようになっており、ドルはより困難に陥りやすく、ドル安の影響は数十年前よりも急激にインフレ上昇に反映されるだろう。

だからレイの言うような懸念も分かる。だがタイミングについては不確実性が存在するだろう。

市場で何らかの方向に賭けなければならないダリオ氏と、学者として様々なリスクを考えなければならないサマーズ氏の違いだと言うことも出来るだろう。

しかしサマーズ氏の指摘する1980年代において、緩和にもかかわらずドルは何故下落しなかったのだろうか? この辺りの事情については別に記事を書いて説明する必要があるだろう。

袋小路に陥るアメリカ経済

経済回復を祝うかのような中央銀行に対して、サマーズ氏の見通しは暗い。彼は次のように述べる。

金融政策が本当に難しいのは、リーマンショックの後や去年の春のように大幅な資金不足があり市場が暴落していて、資金を供給すべきだという風に金融政策の行われるべき方向性が完全に明らかな状況ではない。

金融政策における本当に難しいジレンマは、どちらに行くべきか明確ではない時だ。国債が大量に発行されており通貨が下落している一方で、経済は弱体化していて貧富の差が拡大し、景気後退の懸念がある時には、利下げをして後者に対応すべきなのか、引き締めをして前者に対応すべきなのか分からない。

そのように方向性が明確にならない時こそが金融政策にとって難しい時なのだ。そして今経済はそういう状況に向かっているのではないかということを恐れている。

利上げをしても利下げをしても問題が生じる。利上げをすればドルは救えるが経済は暗転し、利下げをすれば経済は救えるかもしれないがドルは暴落してゆく。

ダリオ氏の言い分もサマーズ氏の言い分も両方理にかなっているだろう。しかも興味深いのは、短期的な値動きについてサマーズ氏に分がありそうな点である。ダリオ氏は過去の基軸通貨の運命にドルも従うと主張しているが、それはもっと長期のトレンドだろう。

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
サマーズ氏の主張は本当に興味深く、時にはヘッジファンドよりもヘッジファンド的である。

アメリカ経済がどちらに行っても袋小路という懸念は債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏も詳しく説明しているので、そちらも参考にしてもらいたい。

ガンドラック氏: 追加緩和が来る恐怖、追加緩和が来ない恐怖

1980年代のドル下落のタイミングについてはまた別に記事を書くことになるだろう。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14160

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