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古代火星の水質、生命の誕生や生存に適していたことが判明
海があった頃の火星は寒冷ではなく、温暖・半乾燥な気候だった 2020/03/18
https://www.msn.com/ja-jp/news/future/海があった頃の火星は寒冷ではなく、温暖・半乾燥な気候だった/ar-BB11mnae?ocid=ientp
火星に送られた探査機や探査車によって得られた情報から、かつて火星の表面には海ができるほどの水が存在していたと考えられています。今回、海が存在していた頃の火星は「温暖かつ半乾燥の気候だった」とする研究成果が発表されました。
■当時の火星は海ができるほどには温暖で、雨も降っていた
© sorae 海や湖があった頃の火星を描いた想像図(Credit: NASA / Goddard Space Flight Center)
https://www.msn.com/ja-jp/news/future/海があった頃の火星は寒冷ではなく、温暖・半乾燥な気候だった/ar-BB11mnae?ocid=ientp&fullscreen=true#image=1
現在の火星の表面はとても乾燥していますが、かつては海ができるほどの水が液体として存在していたと考えられています。液体の水が存在していた環境下で形成されたとみられる地形なども見つかっていますが、これらが「温暖な気候のもとで形成された」のか、それとも「寒冷な気候で氷河の一部がとけることで形成された」のかについては、はっきりしていませんでした。
今回、Ramses Ramirez氏(東京工業大学地球生命研究所)らの研究チームは、北半球に海があったとされる頃の火星の気候をシミュレーションによって再現しました。その結果、当時の火星は雪ではなく雨が降るほどには温暖だったものの、氷河が成長できるほどには水蒸気量が多くない「温暖だが半乾燥」で、現在の地球でいう「ステップ気候」のような気候だった可能性が示されたとしています。
シミュレーションでは、火星の平均気温が摂氏マイナス3度〜プラス7度の範囲にあった場合、現在見つかっている火星表面の地形などを形成するのに十分な量の雨がもたらされることが示されました。いっぽう、平均気温が摂氏マイナス3度を下回ると海が凍り、雨をもたらす水の循環が生じにくくなるため、火星に今も残る地形を説明するにはこの温度よりも温暖な気候でなければならないといいます。
従来の研究では、火星の水は標高の高い土地に氷床として存在し、気候も寒冷だったとされてきました。ところが、最近の火星探査では寒冷な気候では説明できない発見ももたらされています。研究チームによると、今回の研究では水が存在していたのと同じ時期に火星の巨大な火山が成長したと仮定し、噴火によって大気中に放出された二酸化炭素や水素の影響を考慮したところ、これまでの観測とも矛盾しないシミュレーション結果が得られたとしています。
■温暖・半乾燥な気候は数十万年から1000万年程度は続いていた可能性
研究チームでは、地球のステップ気候に似た火星の温暖・半乾燥な気候は、数十万年から1000万年ほど続いたと考えています。昨年10月に発表されたゲール・クレーターの水質に関する研究では、火星の温暖な期間が最低でも100万年ほど続いたとされており、今回の研究成果が示した期間におさまります。
研究に参加したBob Craddock氏(スミソニアン協会、アメリカ)は、今回の研究成果について、過去の火星で形成された地形や地質の特徴をうまく説明できる「初めての気候モデル」になったと語っています。
Image Credit: NASA / Goddard Space Flight Center
Source: ELSI
文/松村武宏
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古代火星の水質、生命の誕生や生存に適していたことが判明 2019-10-29
https://sorae.info/astronomy/20191029-mars.html
NASAの火星探査車「キュリオシティ」(MSL:マーズ・サイエンス・ラボラトリー)などの活躍により、かつて火星の地表には液体の水が存在していたことが確実視されています。今回、その水がどのような水質だったのかに迫った研究成果が発表されました。
■pHは7前後でミネラル豊富、生命に適した水だった
ゲール・クレーターを満たしていた湖の想像図(Credit: Evan Williams, with data from the Mars Reconnaissance Orbiter HIRISE project)
金沢大学の福士圭介氏をはじめとした研究チームが取り組んだのは、7年前からキュリオシティが探査を続けているゲール・クレーターにかつて存在していた湖の水質復元です。かつてゲール・クレーターにはクレーターの外輪山から流れ込んだ小川によって湖が形成されたと考えられており、今もその地表には当時形成されたとみられるひび割れた堆積岩らしき岩が残されています。
キュリオシティの探査によって得られた堆積物のデータをもとに研究チームが水質の復元を実施した結果、およそ35億年前にゲール・クレーターに存在していた湖のpHは6.9〜7.3の中性で、塩分は地球の海水の3分の1程度、そしてミネラルを豊富に含んだ水であったことがわかりました。
また、ゲール・クレーターの湖は流れ出る河川を持たず、地球の死海やカスピ海と同様に、流れ込んだ水が蒸発することで塩分やミネラルの濃度が徐々に濃くなっていったと考えられています。
そこで、湖水の塩分濃度が復元された値に達するまでの期間を推定したところ、100万年程度は継続して塩分やミネラルが供給され続けていたことも判明しました。つまり、最低でも100万年ほどは火星に温暖な期間があり、これらの成分を含む水が流れ込み続ける環境が維持されていたことになります。
■「地表に水があった惑星」から「地表で生命が誕生・生存し得た惑星」に
ゲール・クレーターの湖水(湖沼堆積物の間隙水)の水質復元結果を、地球の琵琶湖および海水と比較したもの(Credit: 金沢大学)
たとえ水が存在していたとしても、その水質が強い酸性やアルカリ性だったり、塩分が濃かったりすると、生命にとっては厳しい環境となってしまいます。今回の研究によって、過去にゲール・クレーターを満たしていた湖の水質が地球型の生命を寄せ付けないものではなく、生存に適したものだったことが初めて明らかになりました。
さらに、塩分やミネラルが長い期間に渡って濃縮する場所は生命の誕生に適しているとみられることから、ゲール・クレーターにあった湖はただ生存に適していただけではなく、そこで生命が誕生し得る環境だったとも考えられます。
発表によると、今回用いられた復元手法は、来年打ち上げ予定の火星探査車「マーズ2020」(NASA)や「エクソマーズ2020」(ESA/ロスコスモス)による探査結果でも利用可能とされています。ゲール・クレーター以外の場所における水質が明らかになれば、過去の火星全体の環境をより詳しく知ることにつながるはずです。
ゲール・クレーターに今も残る堆積岩とみられる岩(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
文/松村武宏
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