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(回答先: フェアではないのに競争社会。「夢を持て」は「もっと競争しろ」の裏返しだ 投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 20 日 13:10:30)
プラス思考で成功するどころか未曾有の地獄に
プラス思考と成功はリンクしていない。つらい現実を忘れさせるための現実逃避
2020.10.13
プラス思考は得体の知れないカルト宗教のように広がっていき、それを信じる人間がカルト教団の信者のようにそれを礼賛するようになった。プラス思考を持つのは心地良い。夢に浸れる。しかし、プラス思考は成功を約束するものではない。しばしば現実に粉砕される。(鈴木傾城)
コロナでどん底が広がっていく
プラス思考を持ったら、人生何でもうまくいくと勘違いしている人もいるかもしれないが、はっきり言おう。それは「嘘」である。プラス思考だけでは、何でもうまくいくわけではない。
世の中は運・不運も大きく影響してくるし、生きている場所・時代・環境によっても運命は大きく違ってくる。
1980年代に社会に出た人は日本のバブルの真っ最中で、私のようなプラス思考の欠片(かけら)も持ち合わせていない人間でも濡れ手に粟で金を儲けることができた。しかし、1990年代に社会に出た人はどうだったのか。
彼らはバブル崩壊の真っ只中に社会に放り出され、どんなプラス思考の塊の人であっても就職氷河期に巻き込まれて貧困一直線と化した。プラス思考は時代に勝てなかったのである。
現在の、コロナでどん底(ボトム)が広がっていく時代でもそうだ。非正規雇用者はどんなにプラス思考を持ったところで、それだけで人生が打開できるわけではない。自殺者も増え続けている。女性の自殺もひどいことになっている。(ブラックアジア:このままでは、日本の社会で女性の餓死者・自殺者が大量に出てもおかしくない)
「プラス思考などを持っても成功できない」という事実は、ニューヨーク大学で心理学教授をしていたガブリエル・エッティンゲン教授がすでにいくつもの実験を通して1991年に結論を出している。
エッティンゲン教授はプラス思考で成功できるどころか、場合によっては成功すらも遠ざける危険性があるということも指摘している。プラス思考で夢を見ると「人は頭の中でそれを達成し、現実世界の逆境を乗り越える行動力が低下する」と言うのだ。
つまり、空想で満足して行動力が鈍る。空想にエネルギーを使っていると、現実世界にエネルギーを使う余裕がなくなる人が多い。いくらプラス思考でも現実世界で行動できなければ何もならない。
プラス思考で空想の世界に浸っていて現実で成功できるのであれば、都合の良いことばかり考えて何もしない怠け者が最も成功するということになる。世の中はそうなっていない。
プラス思考で成功するどころか未曾有の地獄に……
当たり前だが、ひとつのことをとことん考え抜き、集中し、誠実に努力し、着実に行動している現実的な人が成功するのであって、適当に空想して行動もしない人間がいくらプラス思考を持っても成功しない。
しかし、欧米でも日本でもそうだが、このプラス思考(欧米ではポジティブ・シンキング)は成功者になるための必須の心がけだと言われている。そのため、エッティンゲン教授の実験データや検証や結論は掻き消された。
逆にプラス思考は得体の知れないカルト宗教のように広がっていき、それを信じる人間がカルト教団の信者のようにプラス思考を礼賛するようになった。
プラス思考を持つのは心地良い。夢に浸れる。「成功を夢描けば成功できる」というのだから、心地良い夢に浸りきってしばし幸せな気分になれる。しかし、プラス思考は成功を約束するものではない。現実に粉砕される。
たとえば、プラス思考で言えば南米(ラテンアメリカ)人は、類を見ないプラス思考の人々だと言われているが、それで南米人は世界最大の成功者になったのかと言えばそうでもない。南米の多くの国は経済破綻し、国民は極貧に落ちて為す術がない。
プラス思考と言えば、東南アジアではフィリピンのラテン気質が有名だ。彼らはどんなことがあっても「プラス」に考える癖がある。それでフィリピンはうまく回っているのか。いや、やはりフィリピンは経済的苦境を乗り越えられていない。
日本では奇しくもエッティンゲン教授が「プラス思考は効果がない」という結論を出した1990年代から、プラス思考ブームが始まっている。それで日本人は幸せになったのか。逆だ。プラス思考が広がるのと同時に、貧困も広がっていた。
日本は1990年代からバブル崩壊で多くの企業や個人が未曾有の資産縮小に見舞われ、自殺者が毎年3万人を超える時代に突入していった。バブル崩壊という時代の荒波の中で、プラス思考の流行が日本を良くしたという形跡はない。
時代の荒波が人々の夢や希望をいとも簡単に叩き潰すという現実ばかりが見える。今もそうだ。
つらい現実を忘れさせるための現実逃避
宝くじに当たった人は目立つが、その陰に数千万人もの外れた人が隠されている。それと同じように、プラス思考で成功した人は目立つが、その陰にプラス思考でも成功できなかった数千万人が隠されている。
YouTubeで能天気なプラス思考を吹聴している「インフルエンサー」に騙されている人も多いが、彼らはプラス思考を説いて人々に妄想を見させながら自分がせっせと金儲けしているだけだ。
プラス思考で成功するというのは貧困層の妄想だ。宝くじのようなもので、ほとんど当たらないものを当たると言って妄想を見させて妄想料を取る。今もまだこんなものにすがっている日本人もいる。
馬鹿げた話だ。2020年。消費税引き上げとコロナによって日本社会の苦境はますます深まっていき、生存環境はいよいよ厳しくなった。日本社会を劣化させる元凶である少子高齢化も放置されている。
若年層は非正規雇用に追いやられ、単身女性は3人に1人が貧困で、中高年は年収の低下やリストラに怯え、高齢層は生活破綻して次々と生活保護受給者となっている。それが2020年に起きている「現実」なのだ。
プラス思考が流行しているのだが、そんなものよりも現実の方が深刻化しすぎており、いくらプラス思考を持っても失敗する確率の方が高まっている。コロナで職を失った人間がいくらプラス思考をしても何の魔術も起きない。
「良いことを思えば良いことが起きる」みたいな下らないプラス思考を持っても、それだけでは何ともならない。
結局、プラス思考というのは「つらい現実を忘れさせるための現実逃避くらいの役割しかないのではないか」とやっと日本人も気づくようになった。いくらプラス思考をしてもビジネスは必ずしも成功しないし、金持ちになれない。
これだけプラス思考を説く書籍が売れ、インフルエンサーが馬鹿みたいな楽観論を説いているのに、日本人はどんどん貧しくなっているし、社会は悪化していく一方となっているし、自殺者がどんどん増えている。
プラス思考をしてもままならないほどの厳しい現実がある。
プラス思考と成功はリンクしていない
プラス思考で成功した少数に焦点を当てれば、プラス思考は素晴らしいもののように見える。しかし、プラス思考でも成功できなかった莫大な人々の群れの存在に気付けば、プラス思考は別に崇める必要があるわけでもないことに気づくはずだ。
プラス思考が好きならそれを取り入れても別に害はない。個人の趣味だ。しかし、それは成功とリンクしているわけではない。プラス思考をしても成功できない人間たちの群れを見て、一刻も早くそこに気付くべきだ。
プラス思考がなくても成功する人は成功するし、プラス思考があっても失敗する人は失敗する。プラス思考という「気の持ちよう」以前に、頭脳や努力や執念や行動力が重要であり、さらにそこに運があるかどうかも絡んでくる。
現実社会での成功は、プラス思考よりも、むしろ頭脳や執念や行動力で決まる確率の方が高い。
特に、現実が厳しくなればなるほどその傾向は強まる。
厳しい現実に震え上がりながら努力する人の方が、プラス思考の空想しているだけで何もしない人より生き残る確率が高いというのは、常識がある人なら誰でも分かる。
日本は少子高齢化も人口減も解決できなかった国である。そのため、社会環境は今後もじわじわと悪化していくことになる。足元は決して安定していない。
貧困も格差も解消できないし、日本を取り巻く社会的環境も悪化している。周辺国とは経済問題だけでなく、領土問題、歴史問題、民族問題で軋轢が生じている。日本にとって、ひどく厳しい時代になっている。
反目、対立、衝突、暴力、憎悪、格差、貧困……。
ありとあらゆるものが一気に押し寄せてきているのが今の時代であり、今の現状なのである。そんな厳しい時代で生き残るのに重要なのは、現実を直視して必死で努力し、もがき、その中で経験や実績を得て生きていくという泥臭いものであるはずだ。
客観的に見ると、地獄と化していく世界ではプラス思考はあまりにも無力であるし、場合によっては有害でもある。それよりも、現実的で合理的な思考を持つ方がまだ役に立つ。
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