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大村博士発見のイベルメクチンにコロナパンデミックを終息させる可能性
世界各地から「効果あり」の報告、日本はもっと積極的に取り組むべき
黒川清 政策研究大学院大学名誉教授
朝日新聞・論座
https://webronza.asahi.com/science/articles/2021020700003.html
大村智・北里大学特別栄誉教授が発見した寄生虫病の特効薬イベルメクチンが、新型コロナウイルスの治療と予防に効いているという医学報告が世界各地から多数あがっている。コロナパンデミックを終息させる切り札になるかもしれないという見方さえ出てきた。イベルメクチンの「発見国」の日本は、もっと積極的にこの薬の効能判定に関わり、世界に先駆けて処方(薬の使用法)を確定し、コロナ治療・予防薬としてイベルメクチン使用を進めるべきだと考える。
|米国の医師グループの驚くべき報告
2020年12月8日、米上院国土安全保障と政府問題に関する委員会で証言に立った「新型コロナ救命治療最前線同盟」(FLCCC=Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)代表のピエール・コリー会長は、「政府機関は早急にイベルメクチンの効果を評価し、処方を示すべきだ」と迫った。
アメリカを中心としたこの医師団は、昨年春から世界中で使用されているイベルメクチンの臨床試験の情報を集めて分析し、Web上(https://covid19criticalcare.com/)で公表してきた。委員会でのコリー会長の発言は衝撃的だった。イベルメクチンを投与した臨床試験の成果の部分だけをあげてみる。
@ 患者の回復を早め軽症から中等症の患者の悪化を防ぐ
A 入院患者の回復を早め、集中治療室(ICU)入室と死亡を回避させる
B 重症患者の死亡率を低下させる
C イベルメクチンが広く使用されている地域では、コロナ感染者の致死率が著しく低い
などだ。
さらに会長は、過去40年間にわたって抗寄生虫病として処方されたイベルメクチンの副作用はきわめてまれであり、あっても軽度であったこと、さらに世界保健機関(WHO)は「必須医薬品リスト」にイベルメクチンを入れてきたことなどを強調した。そのうえで、国立保健研究所(NIH)、米国疾病予防管理センター(CDC)、食品医薬品局(FDA)などは早急にイベルメクチン臨床試験を確認し、医師と医療機関に処方ガイドラインを発行するように求めた。
コリー会長らがまとめたイベルメクチンの医学報告は、論文サイト(https://osf.io/wx3zn/)から閲覧できる。
ここではその中からいくつかの報告をかいつまんで紹介する。
|エジプト、イラクなどから続々と「効果あり」
表1に、入院患者に対するイベルメクチンの有効性を評価した臨床試験の概要を示した。
例えば最初のエジプトの研究グループによる報告では、中等症と重症の患者200人ずつのうち、100人にイベルメクチンを投与し、残る100人は投与せずに比較したところ、イベルメクチン投与群は非投与群(コントロール)に比べて高率で悪化を防ぎ、死亡率も2%と20%というように大きな違いが出ている。
(表1 イベルメクチンの有効性を調べた臨床試験)
https://image.chess443.net/S2010/upload/2021020700003_8.jpg
2番目のイラクの例では70人にイベルメクチンとドキシサイクリンという抗菌薬を投与し、投与しなかった70人の患者と比べたところ、投与群の重度患者の死亡率はゼロだったのに対し、非投与群は27.3%だった。
3番目以降のインド、バングラディシュ、米国などの報告をみても、入院日数の短縮や死亡率の軽減に効果をあげている。
(中略)
|大村博士が発見してノーベル賞を受賞
イベルメクチンは主として中低所得国で広く使用されている抗寄生虫薬であり、すでに数十年にわたって延べ37億人以上の人々に投与されてきた安全で効果的な薬剤である。もとは北里大学特別栄誉教授の大村智博士が伊東市のゴルフ場周辺の土壌中の微生物が産生している化合物として抽出したもので、米国メルク社のウイリアム・キャンベル博士と研究して特効薬を開発した。二人はこの業績で2015年にノーベル生理学医学賞を受けている。
寄生虫病予防のためのイベルメクチンの服用は、年に一回、錠剤を水で飲みこむだけであり、極めて容易でしかも安価である。
さらに多くの試験管レベル(インビトロ)実験と動物実験でも抗ウイルス作用や抗炎症作用があることが報告されている。北里大学の調べによると、現在、新型コロナ感染症でのイベルメクチン臨床試験は、世界27か国、91件が登録されている(表2)。その多くがイベルメクチンは改善効果をあげていると報告しており、今後さらに検証していく価値がある。
(表2 公的に登録された、新型コロナへのイベルメクチンの効果を調べる臨床試験)
https://image.chess443.net/S2010/upload/2021020700003_3.jpg
北里大学は昨年秋から臨床試験に取り組んでいるが、人手不足と資金不足に苦しんでいる。臨床試験は、厳密な医学的な規定による効果測定であり、客観的な結論を得る研究現場である。しかし、いま重要なことは新型コロナとの闘いであり、時間との闘いであることを忘れてはならない。
|緊急対応という取り組みが必要
イベルメクチンは、特許権利も消滅しており、製造は自由である。抗寄生虫病の治療・予防の薬剤としてはその処方は確立され、安全性も問題ない。しかし、新型コロナに対して使うには、改めて新型コロナに対する効果を判定しなければならない。いま医学界が直面している課題は、世界の医療チームが取り組んできた新型コロナ感染症に対するイベルメクチンの臨床試験の評価である。医学的に本当に妥当な結果なのかどうかである。
前述の如くこれまで出ている臨床試験データをメタ分析した英国のローリー博士は高く評価しており、パンデミック防御の薬剤は「目と鼻の先にあった」とまで表明している。
だが、新型コロナ感染症患者にイベルメクチンをどのように処方するのがいいのかはまだ確立されていない。薬価はどうするのか、使用するにあたって誰がどのように供給できるのか、といった問題もある。これらには製薬会社の枠を超えた取り組みが求められる。
いま世界が新型コロナパンデミックで困難な状況にあるとき、「イベルメクチン発見国」の日本が率先してその効能を見極め、効果があると判断したら即座に処方を示すくらいの意気込みが期待される。外国がやった成果を待ってから動き出すのではなく、日本は世界に先駆けて処方を確定し、コロナ治療・予防薬としてイベルメクチン使用を進めるべきである。
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