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※紙面抜粋
※2022年5月9日 日刊ゲンダイ2面
【対独戦勝記念日の虚勢】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) May 9, 2022
プーチン大誤算でもこの戦争は恐ろしい結末
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/MzYWelZJoO
※文字起こし
ロシアが9日、「節目の日」を迎えた。プーチン政権が最大の祝日と位置付ける対ドイツ戦勝記念日だ。
モスクワの赤の広場では午前10時(日本時間9日午後4時)から大規模な軍事パレードを開始。大陸間弾道ミサイル「ヤルス」や、ウクライナ攻撃に使われている核兵器搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデル」が登場し、上空からは最新鋭のスホイ57戦闘機や長距離戦略爆撃機ツポレフ160などが参加する予定と報じられたが、天候の影響で航空機は登場しなかった。それでもド派手なパレードだったが、虚勢を張っているようにしか映らない。
なぜなら、国威発揚の一大イベントに向け、ウクライナへの攻勢を強めたロシア軍の戦果は乏しい。首都キーウ攻略に失敗した後、東部ドンバス地方のドネツク、ルガンスク両州の完全制圧を目指したものの、ウクライナ側の反撃で目立つのは戦況の停滞ばかり。
国を挙げて愛国心を高揚させる“祝祭”の演説で、国民を直接鼓舞したかったプーチン大統領にすれば、象徴的な戦果を得られない現状は大誤算だ。それでも、この戦争はまだまだ続く。
米国は6日にウクライナに対し、追加の武器供与を発表。155ミリ榴弾砲の砲弾2万5000発、対砲レーダー3基、妨害電波を発信するジャミング装置などを含み、その額は約1億5000万ドル(約196億円)相当になる。
ドイツも慎重だった大型兵器の提供を進めるなど、欧米各国は軍事支援を加速。恐らくロシアが白旗を揚げるまで武器供与を続けるのだろう。しかし、ロシア軍もウクライナへの武器供与ルートへのミサイル攻撃を強めており、泥沼戦争に拍車をかけるだけだ。
4495発保有の世界一の核大国
すでに西側諸国からの重い制裁を科せられ、ロシア経済の傷は深まっている。バイデン米大統領は追加制裁に「常に前向きだ」と息巻いており、G7と連携して一段と圧力をかけていくのは、もはや既定路線だ。
重い制裁が長引くほど、ロシアの国力は衰え、名実ともに大国の座から転落する。米欧はそこまで追い込み、世界秩序を脅かす体力までもロシアから奪うつもりとしか思えない。
問題はたとえ、ロシアが決定的に弱体化し、国際社会で追い詰められても、一件落着とはいかない点だ。それどころか、ますます凶暴な存在となりかねない。
大国としての誇りを傷つけられ、劣等感にさいなまれたロシア国内では、西側諸国に対する被害者意識が高まるのは必至だ。その反動として、より西側に好戦的となり、今まで以上に挑発に出るリスクは高まる。ちょっとしたことで、予測不能な恐ろしい行動に出ても、おかしくないのだ。
かといって、侵略を続けるロシアに手心を加えるわけにはいかない。短期的にはロシアに侵略を断念させるため、重い制裁は必要だ。厄介なのは、いくら経済封鎖を続けても、プーチンの野望が静まるのか誰も予測できないことである。
西側諸国がウクライナに武器と弾薬をじゃんじゃん送り続け、最後までロシアと戦おうとすれば、核戦争に陥る恐れがあることも忘れてはいけない。
ストックホルム国際平和研究所によると、ロシアは4495発の核弾頭を保有する世界トップの核大国だ。プーチンが核兵器使用の「脅し」をみせる現状では、実際にそれを使う可能性は捨てきれない。
とことん、ロシアを追い詰め、大国の地位から転落しそうになるほど、プーチンが核兵器で世界をご破算にする可能性は強まっていくだけだ。
制裁と武器供与では核戦争は避けられない
「私たちはゼレンスキー(大統領)に戦闘機や高性能兵器を提供できるが、プーチンはウクライナに対する攻撃を急激に強め、高性能兵器の供給網を攻撃しうる。そして、すべてを完全に破壊する核戦争に陥る可能性がある」──。そう警告するのは、米マサチューセッツ工科大名誉教授のノーム・チョムスキー氏(言語学)。齢93歳の世界的な反戦知識人だ。
先月13日、米国の急進的政治メディア「カレント・アフェアーズ」の編集長との往復書簡による対談に応じたもので、過去にベトナム戦争を激しく糾弾した彼はこうも指摘している。
「明日ハリケーンが来るのに『ハリケーンは好きではなく』『ハリケーンを認めることはできない』などと言うばかりではそれを防ぐことはできず、何の効果もない」
そして核戦争回避のためには、外交交渉を通じた解決しかないと言うのだ。そのための具体的な妥協案として「ウクライナの中立化」、親ロ派分離主義勢力が掌握するドンバス地方に「高度の自治権を付与」を挙げ、「好むと好まざるとにかかわらず、クリミア半島は交渉対象ではないということを認めなければならない」と主張する。
いずれも「プーチンと少数の側近に退路を開くものであり、醜悪なものだ」と、チョムスキー氏自身も認めているが、人類にとって最悪の結末を避けるには、ロシアに譲歩せざるを得ないという意見である。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「ウクライナでのロシアの戦争犯罪を巡り、ICC(国際刑事裁判所)がプーチン氏の訴追も視野に捜査中です。死よりも恥を恐れるプーチン氏にとっては、ICCの訴追取り下げを確約する方が、ウクライナ領土の部分割譲よりも効果的かもしれません。いずれにしても、制裁と武器供与の継続だけでは核戦争の脅威は拭えない。ブチャ虐殺以降、停戦交渉は棚上げ状態ですが、実際に履行するかはともかく、現実的な交渉の落としどころを常に示しておくべきです。その限りにおいては、さすがのプーチン氏も核のボタンを押すのをためらうでしょう」
小型核なら「使いやすい」は危険な暴論
ところが、ロシアへの制裁とウクライナへの武器供与を主導する米国内では、その先のシナリオを示せないどころか、「核には核を」の勇ましい声が上がっている。
バイデン政権が3月末にまとめた「核戦略見直し」で、小型核を搭載できる海洋発射型の巡航ミサイルの開発中止を決めたことに、米軍幹部が猛反発した。
今月4日の米上院軍事委員会の核戦略についての公聴会で、グレイディ統合参謀本部副議長とリチャード戦略軍司令官は、核巡航ミサイルの開発継続が軍事的には最善かと問われると、そろって「イエス」と答えた。政権の判断に公の場で異を唱えるのは異例のことだ。
核巡航ミサイルの開発は、ロシアによる小型核の先制使用を抑止するため、2018年にトランプ前政権が決めた。プーチンによる核使用の脅しを踏まえ、米軍内で「使いやすい小型核」は有効な対抗手段との議論が再燃しているわけだ。
破壊力の強い戦略核(射程の長い核兵器)で対抗すればエスカレートを招くので実際には使いづらいが、小型核なら「使いやすい」として復活を望むのは、冷静に考えれば危険な暴論だ。
「勇ましいのは日本の自民党も一緒です。岸田政権も防衛費倍増や敵基地攻撃能力の保有に関し『あらゆる選択肢を排除しない』と言い放ち、事実上のゴーサイン。あらゆる口実で武器・弾薬に税金を投入し、購入先の米国を喜ばせるのが、政治の使命とでも思っているのでしょう。特に核共有や核保有論に口火を切った安倍元首相は、ロシアの入国禁止63人リストからも外れ、今もプーチン氏とのパイプは生きているはず。『核には核を』と核軍拡をあおる前に、率先して和平を担う役割を果たすべく、汗をかくべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)
核の抑止力も、誰かが先に核のボタンを押せば泡と消える。現状のままだと、この戦争の恐ろしい結末は誰も止められやしない。
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