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後藤田正晴の危惧が現実に 外交とはゴマスリではない 令和でも止まらない 日本の劣化
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/255166
2019/06/02 日刊ゲンダイ 見ているほうが恥ずかしくなる過剰接待(右は、後藤田正晴)(C)JMPA 「おい君、もしアメリカが日本か中国の、どちらかを選ばなければならなくなった時、どちらを選ぶと思う?」 もう、十数年前、まだ健在だった後藤田正晴から、いきなりこんな質問を受けたことがある。「同盟関係もあるから日本じゃないですか」と答えると、後藤田はこう言った。 「そうとも限らんぞ。アメリカから見たら中国は13億のマーケット。日本はその10分の1に過ぎない。国家がぎりぎりの選択を迫られた時、何を基準に判断するか。自国の利益、国益だ。外交とはそういう冷徹な論理で動くもの。日本もそのことをしっかり肝に銘じて外交をやらないと」 後藤田の危惧したことが今、現実の脅威となりつつある。 来日したアメリカ・トランプ大統領に対する安倍総理の、過剰接待、というか「ゴマすり」ぶりは、見ているほうが恥ずかしくなるほど。「日米は世界で最も緊密な関係」(安倍総理)というより、「日本は世界で最も忠実な米国の僕」であることをそれこそ世界にさらけ出したようなもの。まるで宗主国の君主をお迎えする属国の領主だ。 もっとも、振り返れば戦後の日本には、真の意味での「外交」などなかったともいえる。 中には田中角栄のように、アメリカを出し抜く形で日中国交正常化を実現した政治家もいるが、これなどは例外。東西冷戦構造の下、ひたすらアメリカに追随していれば事足りたわけだ。だが、その冷戦が終結した以降も日本の外交は以前のまま。と思っていたら、ふと気づけば、むしろ以前よりも急速に劣化しているのが日本外交ではないか。 もちろん、前民主党政権の3年間もひどかったが、では今の安倍政権の6年間の外交はどうか。一見、華々しい外交を展開しているように見えるが、では実績は? と考えると、ほとんどなにもない。どころか、「功」を焦るあまり、日本の国益を将来にわたって毀損する恐れすら感じる。北方領土問題では、2島返還での手打ちを模索しているかにみえるが、それは逆にいうと残りの2島の放棄でもある。国家が守るべきは国民の生命、財産と領土なのに。 「ドナルド」「ウラジーミル」とトランプやプーチンをファーストネームで連呼する安倍総理の外交姿勢を見ていると、「トップと仲良くすればうまくいく」といった「甘え」の発想が目につく。が、後藤田の言葉にもあるように、外交は国益を巡る「血の流れない戦争」だ。安倍政権が続く限り、外交の劣化は止まらない。 伊藤惇夫 政治アナリスト 1948年、神奈川県生まれ。学習院大学卒業後、自民党本部事務局に勤務後、新進党、太陽党、民政党、民主党の事務局長などを歴任。「新党請負人」と呼ばれる。執筆、テレビ・コメンテーターなど幅広い分野で活躍中。
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