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自公維3分の2割れの衝撃。選挙予測のプロが読む、参院選議席予測
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2019.05.31 高野孟『高野孟のTHE JOURNAL』 まぐまぐニュース 選挙に向けたさまざまな人気取り作戦に余念がないなどと揶揄される安倍政権ですが、いよいよその命運も「風前の灯火」のようです。ジャーナリストの高野孟さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、今夏の参院選で自公維のいわゆる「改憲勢力」が、その発議に必要な3分の2議席を失うとの予測を紹介するとともに、これまで政権を支えてきた日本会議等が、改憲の機会消滅で安倍首相を見離すと記しています。 ※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年5月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。 プロフィール:高野孟(たかの・はじめ) 944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。 参院選で自公維合計が3分の2を割るのは必至──だからと言って同日選では衆院も喪失? 衆参同日選の憶測がますます忙しく飛び交っているが、それは所詮は安倍晋三首相がどうしたら政権を放り出さずに生き延びられるかという彼の自己都合から発していることで、国民にとっては踊りたくもない盆踊りに無理矢理駆り出されているだけの、大迷惑でしかない。 しかも、参院選単独なら自民党が単独過半数を割り、さらに公明・維新と合わせたいわゆる改憲勢力も3分の2を確保できないのは確実であるという時に、だからと言って同日選にすればそれを食い止められるのかと言えばそんなことは全く以て不確実で、むしろ衆参共に3分の2を失って、安倍首相の「改憲」の旗印が千切れ飛んで、政権がダッチロールし始める可能性の方が大きい。 だから、同日選というのは安倍首相個人の保身のための自暴自棄、一か八かの捨て身の大ギャンブルでしかないのだが、前号「なぜマスコミは衆参ダブル選挙が『行われる方向』で報道するのか」でも論じたように、それが何やらまともな政治選択の1つであるかに言い立てて煽っているマスコミがおかしい。もちろん、こんな風にしていると、弾みで同日選もしくはその変形としての参院選直近の衆院選に転がり込んで行くことはないとは言えないけれども、ここは正気を保って、予定通り参院選が淡々と行われた場合にこれから先どうなるのかを考えたい。 三浦博史の獲得議席予測 予測で定評のある選挙プランナー=三浦博史の参院選についての最新の党派別獲得議席予測(「サンデー毎日」5月26日号)は、次のようである。 この表自体について、いくつかの注釈が必要だろう。第1に、左端の現有議席数は「党派別」であるのに対し、参議院公式ホームページの「院内会派別」で、両者にはズレがある。例えば、党派別では自民党=122であるのに対し、会派別では「自民党・国民の声」となり無所属の藤末健三が加わるので123となる。どうでもいいようなことではあるが、改憲発議に必要な3分の2以上を考えるという場合に「党派別」の議席数では自民+公明+維新+希望の党で162となり、定数242のギリギリ3分の2であるのに対し、「会派別」では163で1議席だけゆとりがあることになる。 第2に、今回は、現有242議席の半分の121議席が改選されるが、表の最下段の4列目、獲得議席予測の合計は124となっている。これは18年の公選法改正で定数を3議席を増やしたためで、非改選121と合わせると同5列目のように245議席となる。3年後にはまた同じことが繰り返され、改選が124、非改選が124なので、総定数は248となることが予定されている。 第3に、従って、改めて確認しておくが、今回選挙後の参院の新定数は245で、その過半数は123、3分の2以上は164である。その基準に照らして、自民党は単独過半数を獲得できず、自公はもちろん自公維でも3分の2を維持できないだろうということである。 第4に、三浦予測の元の表には、通常の予測と、1人区を中心に野党の統一候補調整がだいぶ進んだ場合の予測とを分けて示していて、上に引いたのは後者の数字である。 自民は単独過半数も失う 以上を踏まえて、三浦予測を見ていこう。まず第1に、自民党は現在は辛うじてギリギリ維持している単独過半数(122)を保てず、新定数による過半数(123)を10以上も下回る111議席に留まる。そのため安倍首相は恐らく事前に「自公で過半数を上回る」という低めの目標を勝敗ラインに設定し、「負けていない」と言い張るための予防線を張るだろう。 第2に、そうなると当然、改憲発議に必要な3分の2には、自公計の139だけではもちろん、維新の会・希望の党の15を加えても154で、到底届かない。つまり、安倍首相は、少なくとも次の参院選が行われる22年夏までの3年間は、改憲を発議することを断念しなければならないということである。ところが安倍首相の自民党総裁3期目の任期は21年9月までなので、宿願の改憲を何としても成し遂げようとすれば総裁4選を果たさなければならない。いくら野党が力足らずで、公明党が腑抜けで、自民の他派閥が無気力であったとしても、安倍4選はあり得ないので、当面、中身が何であれ改憲の機会は消滅した。 ちなみに、この自公と維新・希望とを合わせて「改憲勢力」と呼ぶのが慣わしだが、公明党は、自称では「加憲勢力」で、「指一本触れるな」という頑なな護憲派ではないという意味では「改憲勢力」に入るけれども(そんなことを言えば私自身も改憲派だ!)、しかし安倍流の「9条改憲」には反対で、つまり「9条改憲勢力」の範疇には入らない。そこで、維新の側からは安倍首相に対して「公明と手を切って維新と連立しよう」という悪魔のささやきが発せられるのだが(先週号掲載の日刊ゲンダイ参照)、公明を外して自民と維新で3分の2を超えるには維新が今の4倍ほども議席を伸ばさなければ計算が合わず、何の現実性もない。 第3に、改憲幻想が弾けてしまえば安倍首相の使い出はもうなくなるので、彼の精神的支えとなってきた櫻井よしこ始め日本会議的右翼から見離されて、政権が失速していくことになろう。 野党は1人区で前回なみの大健闘か 選挙結果を左右する焦点は、前回と同様、32ある1人区で野党がどこまで統一候補の調整に成功して共闘態勢を組めるかである。前々回13年が自民党が29勝2敗だったのに対して前回は21勝11敗、野党側から言えば11勝21敗で、これは野党選挙協力による大成果だった。 今回も、ほぼ前回なみの成績を上げる可能性が大きい。三浦予測によると、「青森、岩手、山形、福島など東北で野党が優勢で、長野、三重、愛媛、沖縄でも野党に勢いがある」。新潟も拮抗していて、それを含めて自民党から見て「22勝10敗」と見ている。しかし、これはまだ野党協力がそれほど進展していない段階での予測で、その後に、共産党が多くの区で独自候補を下ろす代わりに福井では共産党候補を野党統一候補とするというオール野党合意が成立したので、野党から見て10勝に止まらず前回なみの11、あるいはもう1〜2議席を伸ばす可能性が拓けつつあるのではないか。 三浦予測によると、32の1人区のうち13は、「共産党などが候補者を取り下げて野党共闘が実現した場合でも、大半の選挙区ではが逆転は難しい」。13とは、秋田、栃木、群馬、富山、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、鳥取・島根、岡山、香川、鹿児島である。これはその通りだろう。 32−13の残り19の1人区のうち16は、自民党が「激戦区」と呼んで重点区に指定している。内訳は、上記の三浦予測でも野党優位とされている東北6県、山梨・長野・新潟の甲信越3県、後は三重、滋賀、徳島・高知、愛媛、佐賀、大分、沖縄である。この中でも東北6県と沖縄での野党優位は揺るぎそうにないので、実際にはそれ以外の9区が本当の激戦区となるのではないか。そこで1つでも2つでも引っ繰り返すことができれば、野党は前回を少しでも上回る大善戦ということだろう。 参考までに、15日付東京新聞が掲げた「参院1人区、自民指定の16激戦区、野党一本化なら勝機」の記事によると、その16区について17年衆院比例得票を自公vs野党で集計すると、岩手、宮城、山形、新潟、長野、三重、大分、沖縄の8区で野党票が上回っている。そうでない場合も、例えば滋賀が自公28万1,896に対して野党28万420であるように、ほぼ拮抗しているところも少なくない。 野党側の闘い方、さらには複数区での候補者調整の進展次第では三浦予測を超えた成果を挙げて安倍政権を追い込むことも出来るのではないか。 image by: 安倍晋三 − Home | Facebook ※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年5月27日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。
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