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コラム2019年1月9日 / 11:41 / 16時間前更新
米政府閉鎖巡る対立、より怖い「本丸」の問題に波及も
Gina Chon
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[ワシントン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦政府機関の一部閉鎖は、財政運営を巡るより大きな政治的なぶつかり合いが待ち受けていることを示す不吉な兆しと言える。
政府機関閉鎖は、トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を建設する予算を議会に要求したことがきっかけだが、経済的な影響は恐らく非常に小さい。真の危険は、トランプ氏と議会の対立が連邦債務上限を巡る議論に波及した場合にやってくる。
18日間にわたって政府機関閉鎖が続き、事態は極めて不穏になっている。トランプ氏と議会民主党指導者らは、ホワイトハウスにおける会合で公然と言い争いを始めた。さらにトランプ氏は、何カ月でも何年でも政府機関を閉鎖するのを辞さない構えで、8日夜に国民に向かって自らの正当性を訴える意向だ。
政府の経常的経費のうち議会が承認していない25%にかかわる業務が停止し、およそ80万人の職員は自宅待機か、無給での勤務を強いられている。もちろん政府機関が再開されれば給料は支払われるだろうが、職員が痛みを受けるのは確かだ。
全政府機関が16日間閉鎖された2013年の経済的な損失は240億ドルだった。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、同年第4・四半期の国内総生産(GDP)成長率を年率で少なくとも0.6%引き下げたという。
しかしもしも与野党が対立する足元の構図が、債務上限の審議にまで持ち越されてしまうと、経済への悪影響はずっと大きくなりかねない。債務上限は近年、政争の具となっている側面が非常に強いのが特徴。通常は政府が既に借り入れたのとほぼ同額に設定されるので、3月初めに到来する今度の上限は、約22兆ドルとなる見通しだ。そこで議会は上限を引き上げるか、上限の執行を停止しなければならないが、今の政治情勢で与野党がそんなに協力的になるのは難しいのではないか。
米政府が期日通りに支払いを行うかどうかについての不透明感は、過去においてさまざまなマイナスの要素をもたらしてきた。2011年には、債務上限に関する政治対立によって、S&Pが米国債の格付けを「AAA」から「AAマイナス」に引き下げ、史上初の米国債の格下げとなった。
米財務省は現在、債務上限が引き上げられないとデフォルト(債務不履行)を引き起こすと警告しており、こうした前代未聞の出来事が現実化すれば、新たな金融危機を誘発するのはほぼ間違いない。オバマ前政権の当局者らも同じ見解を有していたが、当時よりも米国の財政状況は悪化している。
今後は、米政府がカナダ、メキシコと結んだ新たな自由貿易協定を議会が承認するかどうかなどの問題が、債務上限に対する政治的駆け引きの材料に使われてもおかしくない。そうなると、今の政府機関閉鎖と比べものにならないほど恐ろしい打撃を経済に与えるだろう。
●背景となるニュース
*トランプ米大統領は8日夜に行う国民向けのテレビ演説で、米・メキシコ国境の「危機」解決に向け、57億ドルを投じて国境の壁を建設することが緊急に必要であると主張する見通しだ。
*この問題を巡るトランプ氏と議会の対立で、一部政府機関の閉鎖が8日まで18日続いている。
*閉鎖対象となっているのは政府の経常的経費のうち議会の承認が得られていない25%に関わる業務。昨年12月22日以降、約80万人の職員が自宅待機、もしくは無給で働かざるを得ない状態にある。
1月8日、米連邦政府機関の一部閉鎖は、財政運営を巡るより大きな政治的なぶつかり合いが待ち受けていることを示す不吉な兆しと言える。ワシントンの米議会前で撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)
*一方で連邦政府は3月2日、議会が債務上限引き上げか停止に合意しない限り、新規借り入れができなくなる。米財務省によると、1月4日時点で上限枠の対象となる債務は21兆9000億ドル。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/us-shutdown-debt-idJPKCN1P305W
2019年1月10日 マイケル・フロマン前米通商代表部(USTR)代表
自由貿易破壊は「政治の真空状態」でどこまで進むか?企業に傍観の余裕なし
ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)は、脱落した人々の疎外感に付け入る。政治的リーダーシップの真空状態が続く中、民間企業が「われ関せず」を決め込むならば、脱グローバリゼーションの加速や不確実性、不安定性の高まりを招きかねないと、前米通商代表部(USTR)代表のマイケル・フロマン氏は警鐘を鳴らす。
2018年、さまざまな政策分野の中でも、とりわけ貿易が「破壊」された。
かつては古くさく、専門的で、正直なところいささか退屈だった貿易絡みの事案が、今では新聞の1面や雑誌の表紙の見出しに躍る。米ケーブルテレビ局HBOの(人気風刺番組)「ラスト・ウィーク・トゥナイト」で、(コメディアンの)ジョン・オリバー氏がコメディー調のドキュメンタリーに取り上げるまでになった。
伝統的に自由貿易協定(FTA)に反対だった層が今や一転してその価値を褒めそやし、自由貿易を尊重しているとは言い難かった中国、ロシア、フランスを含めた国々が、グローバルな貿易体制の擁護者に名乗りを上げている。
とはいえ実際、どの程度の「破壊」だったのかを検証してみることは重要だ。
ドナルド・トランプ米大統領は、確かに12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したが、残る11の署名国はその骨子を温存した協議を独自に重ね、米国にも将来の復帰に向けての門戸を開いている。
そして、より多くの国々が参加への関心を示していることは、TPPがやがて当初に見込んでいた規模を優に超えて発展する可能性を示唆するものだ。
加えて、北米自由貿易協定(NAFTA)――いまや米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)と改名したが――は、もともとカナダとメキシコを含んでいるTPPをひな型にして、幾つか重要な条項を加えたものである。
一方で欧州連合(EU)は、カナダやシンガポール、ベトナム、日本とFTAを結んでおり、オーストラリアやメキシコ、ニュージーランド、東南アジア諸国連合(ASEAN)、南米南部共同市場(メルコスール)他とも交渉中である。
マイケル・フロマン(Michael Froman)
環太平洋経済連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との自由貿易協定を手掛けるなど通商政策に精通。2013年、バラク・オバマ政権の米通商代表部(USTR)代表に就任し、TPPの交渉で米国代表を務めた。現在は、マスターカード副会長。Photo by AP Photo/Suzan Walsh/via AFLO
また、太平洋同盟(中南米4カ国による貿易自由化の枠組み)は中南米域内で貿易他の協定を拡大中だ。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)はアジア太平洋地域で急速に進行している。さらに、アフリカ連合(AU)も大陸自由貿易圏(CFTA)の発効に向けて着実に進んでいる。
要するに、結び付きを深め、貿易ルールを改善する世界的傾向は続いているのだ。
確かにトランプ政権は意表を突く貿易改善策で大いに物議を醸し、関税合戦に明け暮れ、輸入割当枠を引っ張り出し、世界貿易機関(WTO)の紛争処理制度を弱体化させた。
しかし結局、トランプ大統領によるNAFTA再交渉は、むしろ米国内で貿易への支持を高める一助となったかもしれない。なぜなら、最も忠誠心が強い彼の支持層の大多数は、そもそも貿易協定自体に懐疑的だったからだ。
とはいえ、これは「酒はまだグラスに半分も残っている」とする解釈だ。他方には、巨大な歴史的断裂が進行しているという解釈がある。
米国は、世界的なリーダー役としての役割を投げ出して最も親密な同盟国やパートナーたちからの信頼を失い、利敵行為をした…。
このシナリオによれば、EUか中国が世界的なルールメーカーとして米国に取って代わるか、あるいはルールメーカーがいなくなってしまい、国際的な秩序は成り行き任せになる。
後者の場合、他国が米国に倣って勝手気ままに行動し、国際的な義務は都合のいいときだけ果たすようになる可能性は十分にある。
どちらのシナリオが実現するかを断じるのは時期尚早だ。しかし、一つはっきりしていることがある。ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)、移民排斥主義、保護主義の台頭である。
経済的不安と高まる主権喪失の感覚は、かつてないほど政治的分極化を促している。それは米国に限ったことではない。
欧州が泡沫政党への支持の高まりに悩まされていることから、新興国で腐敗がまん延していることまで、どこの国の政府もより内向きになり、ますます大胆なリーダーシップを示せなくなっているようだ。いまこそまさに、技術や経済の急変がもたらす破壊的な影響に対処しなければならないときだというのに。
民間企業は「われ関せず」ではダメ
成長の果実を全階層で分かち合え
国際的にはリーダーシップの真空状態が生じ、内務的にはまひ状態に陥る中、民間分野が乗り出す必要は以前よりも増している。善意のためではなく、わが身の利害を守るためにだ。
(米資産運用会社)ブラックロックのラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)をはじめとする人々が指摘しているように、企業にとって、株主に短期的なリターンをもたらすことに専念していれば事足りるという時代ではもはやない。長期的なリターンや自社を取り巻く経済的、政治的な環境にも目配りしなければならないのだ。
企業の社会的責任や慈善事業も重要だが、それだけにとどまらない「社会的目的に奉仕」しつつ、商業的に持続可能なビジネスモデルを開発しなければならない。
善行をなして栄えることは、単なるキャッチフレーズにとどまらない事業哲学の指針でなければならない。それを支えるのは、民間分野が栄えるには健全な政治的、経済的環境が必要で、それは行動を通じて守らなければならないという認識だ。
この数十年の間、政府や報道機関、企業その他の主導的な組織に対する公衆の信頼は急落した。もしも実業界のリーダーらが事業環境の健全性から目を背け続けるのだとしたら、あるいは、その是正などよその誰かの仕事だと「われ関せず」を決め込むのだとしたら、今後のさらなる脱グローバリゼーションや不確実性、そして不安定性の危険を冒すことになる。
経済成長は、過去75年間の歴史的かつ世界的な成功を特徴付けてきた。グローバリゼーションは限界こそあるものの、10億人以上もの人々を貧困から救い、人間開発(人類の発展)のほぼ全側面に未曽有の向上をもたらした。
だが、それもまだ道半ばだ。後戻りしてしまうことを防ぐためには、より一層の成長の積み上げから、より包摂的(inclusive)な成長へと目標をシフトしなければならない。それはつまり、成長の果実はトップにいる者たちのみならず、全ての所得階層で分かち合わなければならないということだ。世界的大企業だけではなく、中小企業にも恩恵が行き届かなければならない。
ナショナリズムやポピュリズム、移民排斥主義、保護主義は、世間のシステムから取り残され、脱落した人々の疎外感に付け入る。それゆえに、われわれは、個人や家族が安定した暮らしを立てられ、その改善の機会を追求できるような、万人のための包摂性を経済ネットワークにおいて確保しなければならない。
この原則は、ケニアの農民にも、エジプトの繊維業労働者にも、ギグエコノミー(インターネットを介して単発の仕事を依頼したり請け負ったりする働き方)で食いつなぐ米国人にも等しく当てはまる。
現在の貿易政策の破壊が根深く長期的なものか、それとも表層的で一時的なものかを断じるにはまだ早い。やがて中庸の状態に戻るのか、それともパンドラの箱を開けてしまったのかどうかは、まだ分からない。
しかし、国際的にも国家レベルでもリーダーシップが不在となる状況において、民間企業はその帰趨に様子見を決め込むことはできない。
(翻訳/酒井泰介)
*本稿は、『週刊ダイヤモンド』12月29日・1月5日新年合併特大号に掲載された寄稿のオンライン・バージョンです。
*The future of Free Trade by Michael Froman Copyright: Project Syndicate, 2018.
https://diamond.jp/articles/-/190390
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