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(回答先: 中国人民銀、金融リスク増大を警告 監督強化 金融機関の13%超「高リスク」中国財政省、ドル建て債で高めのプレミアム提示−… 投稿者 鰤 日時 2019 年 11 月 26 日 17:48:32)
中国経済が抱える2つの深刻な構造問題、金融危機は回避できるか
関 辰一:日本総合研究所 調査部 主任研究員
政策・マーケット DOL特別レポート
2019.11.26 5:00
6%台の成長を続けていても、不安は拭えない。中国経済が抱える2つの構造問題とは(写真はイメージです)
6%台の成長を続ける中国
政府の対策が景気を下支え
中国経済は、米国との貿易摩擦が重石となる一方、政府による景気対策が下支えとなり、6%台の成長を続けている。米トランプ政権が合計3600億ドル規模の中国製品の関税率を引き上げたことから対米輸出が減少したほか、先行き不透明感の強まりなどから中国企業が設備投資を抑制している。
一方で、中国政府は政策金利を引き下げ、2兆元(約31兆円)規模の企業向け減税と社会保障費負担軽減、地方債発行拡大によるインフラ投資促進などの景気対策を実施。こうした景気対策が、米国との貿易摩擦による景気下押し効果の一部を相殺している。
アリババによる「独身の日」バーゲンセールをみても、中国経済はまだまだ勢いを保っていると思われる。11月11日午前0時に開始したバーゲンセールの取引額は、わずか1分半で100億元(約1560億円)を突破。1日の取引額は、前年比25.7%増の2684億元(約4兆1870億円、中国の年間消費額の0.7%)に達した。
米国との貿易摩擦は続いているが、アップル、ナイキ、エスティローダー、オレイの米国4ブランドの取引額は、いずれも10億元を超え、根強い人気が浮き彫りになった。越境EC部門「天猫国際」では、日本の美容・健康機器メーカーのヤーマンが販売トップとなり、花王とムーニーもトップ10入りした。
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拡大する企業債務
中国経済の構造問題(1)
拡大する企業債務
しかしながら、中国経済が抱える深刻な構造問題も見落としてはならない。所得格差や環境汚染も大きな問題だが、筆者は中国企業の過剰債務や中国金融機関の不良債権問題に最も注目している。
中国政府は2018年のリーマンショックに対応するため、4兆元の景気対策と大規模な金融緩和を講じた。これに加え、多くの企業と金融機関が、政府の保証を前提にリスクを軽視した経営判断を続けてきた。政府が国有企業や銀行を経営破綻から守るため、国有企業は返済能力を上回る規模の債務を抱えるようになり、国有銀行も融資先企業の経営と自社の経営に対するチェックを甘くしている。
この結果、中国の企業債務は危機的な水準へと膨張した。国際決済銀行によると、中国の企業債務残高は10年間で105兆元増え、2018年末には136兆元(GDPの152%)に達した。企業債務残高全体(136兆元)の3割は、融資平台(Local Government Financing Vehicles)と呼ばれる特別目的会社の負債である。
融資平台は、インフラ投資や不動産開発投資を目的に、地方政府による資金調達を担う組織である。なお、中国の金融機関の平均貸出金利は足元で年率5.7%なので、これに債務残高を乗ずると、企業の利払い負担は年間7兆7520億元(121兆円、名目GDP比8.6%)と試算される。
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上昇する不良債権比率
中国経済の構造問題(2)
上昇する不良債権比率
不良債権問題も深刻だ。中国政府の公式統計によると、全国商業銀行の不良債権比率は2011年末の1.0%から2018末に1.8%へ上昇した。中国政府は、一定のリスクはあるものの、銀行には損失を吸収する能力があると説明する。もっとも、金融機関は必ずしも経営状況を正確に公開しておらず、実際の不良債権比率ははるかに高い。
筆者は、上場企業約2300社を対象に2015年の財務データを使って不良債権を推計したところ、潜在的な不良債権比率は公式統計の5倍の結果となった。今後数年間で中国の中小銀行が破たんし、銀行間の相互不信から中国発の金融危機に至るというリスクシナリオを、我々は頭の片隅に置いておくべきと思われる。
これまでのところ、政府は金融危機につながりうるリスクを事前に処理してきた。今年5月、中国人民銀行は21年ぶりに商業銀行である包商銀行を接収(事実上の国有化)したことで、銀行間の相互不信は深刻化しなかった。しかし、IMFが11月に発表した対中4条協議報告書でも指摘されたように、包商銀行に類似した経営破綻に陥りかねない銀行は他にも多くある。複数の中小銀行では、引受手形が取引先から受け取りを拒否されている。
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中国政府がとるべき解決策とは
構造問題の解決策
政府保証の縮小
中国経済が金融危機に陥ることなく成長を続けられるか否かについては、見方が分かれるだろう。中国の経済水準は、依然として先進国に比べて低いことから、成長余地は大きいといえ、成長によって経済規模が拡大すれば、不良債権や企業債務の過剰感は薄れるという考え方がある。政治体制の違いにより、政府は金融機関に対し迅速に公的資金を投入することができると考えることもできる。中国の場合、金融仲介機能を主に国有銀行が担っているため、金融危機を政府主導で回避する上で他国に比べ有利といえる。
しかし、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授らの研究をまとめた書籍『This Time is Different』によると、1800年から2000年まで世界66カ国で発生した268件の金融危機は、あらゆる経済の発展段階において区別なく生じたことが示されている。加えて中国には、商業銀行、郵政貯蓄銀行、農村合作銀行、農村信用社など様々な形態の金融機関(総数は約4000社)が存在する。政府が全ての金融機関の不良債権の実態を正確に把握できているのか、また危機発生時に十分な公的資金を拠出できるのか、といった疑問も残る。
企業の過剰債務や金融機関の不良債権を減らすために、効き目があり、かつ手軽に実施できる処方箋はない。中国政府は、企業や地方政府、金融機関のリスク管理に力を入れているが、それらは対症療法であり、問題を抜本的に解決できるものではない。
中国政府がやるべきは、企業や銀行が享受している暗黙の政府保証や明示的な政府保証を少しずつ減らしていくことだ。実際には、国有企業や地方政府、金融機関の連鎖的な破綻に繋がる恐れを危惧してか、政府保証の縮小は大きく進展していない。中国の過剰債務・不良債権問題は、長期にわたって中国経済の下振れリスクとしてくすぶり続けるだろう。
(日本総合研究所 調査部 主任研究員 関 辰一)
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中国が豪州で工作活動との報道相次ぐ−両国間の緊張高まる
Jason Scott
2019年11月26日 16:07 JST
中国外務省は豪メディアの報道を「奇妙」だとして否定
安全保障の脅威となる敵対的な外国の情報活動続く−豪ASIO長官
オーストラリアの情報機関が、国内で中国による工作活動が行われ、連邦議会もその標的になっているとの疑惑を調べており、両国間の緊張が高まっている。
エイジ紙など多くの豪メディアは週末、中国の工作員として働いていた王力強氏が香港で軍事情報を担当する高官や香港と台湾、豪州での政治干渉活動に関する秘密情報の提供と引き換えに、政治亡命を求めていると報じた。
また、ナイン・ネットワークは中国の工作員とみられる複数の人物がメルボルンの高級車ディーラー、ボー・ニック・チャオ氏に100万豪ドル(約7400万円)を渡し、議会選挙に立候補するよう促したと24日に報道。豪治安情報局「ASIO」に接触した同氏はその後、メルボルンにあるホテルの一室で遺体となって発見されたと伝えた。チャオ氏は32歳だった。
中国外務省の耿爽報道官は北京での25日の記者会見で、こうした疑惑は「奇妙」だとして、豪メディアの報道を否定。上海警察は23日遅く発表した声明で、「自称中国スパイ」だという26歳の王氏は詐欺疑惑で捜査対象となっており、中国・香港籍を示す書類は偽造されていると主張した。
豪政府は昨年、中国による内政干渉を阻止することを狙った法律を成立させ、安全保障上の理由から華為技術(ファーウェイ)が第5世代(5G)移動通信機器を豪州の通信事業者に提供することを禁じた。
豪州の議会や主要大学に対する一連のサイバー攻撃も中国によるものだとされているほか、中国政府が米州にも触手を伸ばそうと南太平洋での軍事基地建設を検討しているのではとの懸念も強まりつつある。
モリソン豪首相は25日、「外国の干渉から豪国民を安全に守るため政府はこれまで以上に強く決意している」と表明。その上で「こうした問題を巡り結論に飛び付く動きには警告する」とも語った。
ASIOのバージェス長官は「わが国と国家安全保障にとって真の脅威となる敵対的な外国の情報活動が継続している」と指摘し、ASIOは「豪州内における外国の干渉とスパイ活動に立ち向かい対抗し続ける」と述べている。
原題:China Spy Claims Deliver New Hit to Damaged Australia Relations(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-26/Q1JWIOT1UM0X01?srnd=cojp-v2
膨張する中国
二階氏「国賓待遇は当たり前」中国国家主席来日
2019.11.26 14:28政治政局
二階俊博幹事長(中央)=26日午前、国会内(春名中撮影)
自民党の二階俊博幹事長は26日の記者会見で、来春に予定される中国の習近平国家主席の国賓としての来日について「国賓待遇でそういう立場の人をお招きするのは当たり前だ」と述べた。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺への領海侵入や邦人拘束の問題が解決していないため、党内から習氏を国賓として迎えることに反発の声が出ている。
https://www.sankei.com/politics/news/191126/plt1911260016-n1.html
アリババ、香港新規上場 今年最大、資金調達分散
2019.11.26 11:29経済金融・財政
香港デモ
アリババグループのロゴ=11日、中国杭州(ロイター)
中国のインターネット通販最大手アリババグループは26日、香港証券取引所に株式を上場し、取引を始めた。新株は5億株発行し、公開価格は176香港ドル(約2450円)。初値は187香港ドルで、公開価格を上回った。香港市場の新規株式公開(IPO)としては今年最大規模になる見込み。
アリババは2014年、ニューヨーク市場に上場しており、重複上場となる。米中貿易摩擦の激化によって米国で中国企業への規制が厳しくなる中、香港でも上場して資金調達方法を分散する狙いがある。中国本土の投資家も引き付けたい考えだ。(共同)
https://www.sankei.com/economy/news/191126/ecn1911260008-n1.html
「中国はウイグル自治区に国連監視団受け入れよ」 英が要求
3時間前
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中国の「再訓練」施設
イギリス政府は25日、中国西部の新疆ウイグル自治区に、国連監視団が「即時かつ無制限にアクセス」できるよう、中国政府に求めた。
この要求は、中国の公文書が流出し、何十万人ものイスラム教徒のウイグル人が、新疆ウイグル自治区の収容施設で虐待されている状況が判明したのを受けたもの。
英外務省の報道官は、「新疆における人権状況と、中国政府の弾圧強化を深く憂慮している。とくに、100万人以上のイスラム教徒のウイグル人や他の少数民族の人々を、法にのっとらずに拘束していることを懸念している」と表明。
「イギリスは中国に対して引き続き、国連監視団が即時かつ無制限に新疆ウイグル自治区にアクセスできるよう求めていく」と述べた。
裁判なしで100万人収容か
BBCパノラマや英紙ガーディアンなど17の報道機関が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した公文書には、収容施設に入れられた人々が監禁、教化、懲罰の対象となっている模様が記されている。
収容施設には、イスラム教徒のウイグル人を主体とした100万人近くが、裁判を経ずに収容されているとみられている。
中国の劉暁明・駐英大使は、こうした報道はでっち上げだとしている。
後頭部に電気ショックを……中国のウイグル人収容所で
「悔い改めと自白を促せ」
ICIJが「中国電報(The China Cables)」と呼んでいる流出文書には、2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安当局のトップだった朱海侖氏が、収容施設の責任者らに宛てた9ページの連絡文書も含まれている。
その連絡文書では、収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう指示。以下の点を命じている。
「絶対に脱走を許すな」
「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」
「悔い改めと自白を促せ」
「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」
「生徒が本当に変わるよう励ませ」
「宿舎と教室に監視カメラを張り巡らせて死角がないことを(確実にしろ)」
中国の「思想改革」収容所 「犯罪予備軍」を教化
流出した文書はまた、収容者の生活が細かく監視、管理されている状況も示している。
「生徒のベッド、整列場所、教室の座席、技術的作業における持ち場は決められているべきで、変更は厳しく禁じる」
「起床、点呼、洗顔、用便、整理整頓、食事、学習、睡眠、ドアの閉め方などに関して、行動基準と規律要件を徹底せよ」
1週間で1.5万人が入所
別の文書からは、ウイグル人の拘束と収容の規模がわかる。
ある文書は、2017年のわずか1週間の間に、新疆ウイグル自治区の南部から1万5000人が収容施設に入れられたとしている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当責任者ソフィー・リチャードソン氏は、流出文書は検察当局に活用されるべきだと話す。
「これは訴追に使える証拠で、甚だしい人権侵害が記録されている。収容者は全員、少なくとも精神的拷問を受けていると言っていいと思う。自分がいつまでそこにいるのか、まったく分からないからだ」
中国・新疆の消えた子どもたち 親から離され……
「中国に対する中傷だ」
流出した文書からは、外国の市民権をもつウイグル人の逮捕や、外国で暮らすウイグル人の追跡に関する明確な指示も読み取れる。
世界規模で捕獲網を張り巡らせるため、中国の大使館や領事館が役割を果たしていることも暗示している。
中国の劉暁明・駐英大使は、中国の施策は新疆ウイグル自治区の人々を守るためであり、同自治区では過去3年間、テロ攻撃は1件も起きていないと述べた。
「当該地域は現在、社会的に安定し、民族集団もまとまっている。人々は満足と安全を以前よりずっと強く感じ、生活を楽しんでいる」
「西側には、そうした事実を完全に無視して新疆について中国を熱心に中傷している人々がいる。彼らは、中国の国内問題に介入し、新疆における中国のテロ対策を妨げ、中国の順調な発展を妨害する口実を作ろうとしている」
「いっそ妻と母を撃ち殺してくれ」 亡命ウィグル男性
(英語記事 China 'must give UN access' after prisons claims)
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Video 国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判
2018年09月11日
Video 「いっそ妻と母を撃ち殺してくれ」 亡命ウイグル男性
2018年02月2日
https://www.bbc.com/japanese/50554897
ビジネス2019年11月25日 / 19:28 / 1日前更新
台湾、米国からの輸入拡大へ 為替操作国指定の回避狙い=関係筋
Reuters Staff
1 分で読む
[台北 25日 ロイター] - 関係筋によると、台湾の中央銀行と経済部は、米国からの輸入拡大を推進するための組織を立ち上げた。対米貿易黒字を縮小し、為替操作国に指定されるのを避けることが狙いという。
台湾は、1992年12月公表の米財務省の為替報告書で、為替操作国に指定され、2016年と17年には「監視リスト」に入った。
台湾の対米貿易黒字は今年、200億ドルを超える見通しで、予想の通りになれば「監視リスト」入りの条件の1つを満たすことになる。
また、別の条件として、GDP比で2%以上の経常黒字も挙げられているが、台湾の経常黒字はGDP(域内総生産)の11%に達している。
https://jp.reuters.com/article/taiwan-economy-usa-idJPKBN1XZ133
ワールド2019年11月25日 / 17:58 / 1日前更新
豪内政への干渉疑惑、中国は「でっち上げ」と否定
Reuters Staff
1 分で読む
[北京 25日 ロイター] - 中国の情報機関が豪連邦議会へのスパイの送り込みを画策していたとされる疑惑を巡り、中国外務省は25日、中国は他国の国内問題に干渉しようと試みたことはなく、その意図もないなどとして疑惑を否定した。
一部の豪テレビ局や新聞は24日、中国の情報機関がメルボルンの高級車ディーラーの男性に対して、連邦議会選への出馬と引き換えに100万豪ドルを提供すると持ち掛けていた、と報じた。[nL4N285141]
豪保安情報局(ASIO)はこの問題を以前から把握しており、積極的に捜査を進めていると表明している。
中国外務省の耿爽報道官は、25日の定例記者会見で、一部の豪メディアは中国の干渉をでっち上げたと強調した。
報道官は、豪州の一部の政治家・組織・メディアが中国に関する問題で「妄想に取りつかれている」とし「いわゆる中国のスパイが豪州に潜入しているといった話を常にでっち上げている」と発言。
「どれほど突拍子のない話であれ、どれほど装いを変えても、嘘は嘘だ」と述べた。
*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/china-australia-espionage-ministry-idJPKBN1XZ0TL
香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと
上久保誠人:立命館大学政策科学部教授
国際・中国 上久保誠人のクリティカル・アナリティクス
2019.11.26 11:30
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香港区議会選挙で初の過半数獲得を果たしたことを喜び合う民主派の人々 Photo:Billy H.C. Kwok/gettyimages
香港の区議会選挙で
民主派が初の過半数獲得
11月24日、香港区議会(地方議会)選挙が実施された。デモ隊と香港警察の対立が激化し、選挙が中止になることが危ぶまれたが、当日は大きな混乱は起きなかった。投票率は前回(2015年)の47%をはるかに上回り、中国返還後に行われた選挙で最高の71%に達した。
そして、民主派が452議席の約9割に達する390議席を獲得する歴史的な勝利を収めた。民主派が過半数を獲得したのは初めてで、改選前に7割の議席を占めていた親中派との立場は完全に逆転した。民主派は、あらためて「五大要求」の実現を要求し、抗議行動を継続すると表明した。しかし、香港政庁とその背後にいる中国共産党が容易に折れるとは考えられない。今後の問題は、民主派がどう要求を実現していくかだ。
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日本の“識者”のいいかげんさが露呈
「デモに対する支持率が低下」と語る
日本の“識者”のいいかげんさが露呈
日本では、テレビや新聞、雑誌、インターネット等のメディアで、「識者」と称する人たちが「デモによる暴力で、香港経済や市民の生活にダメージがあり、デモに対する支持率が低下している」というコメントをすることが少なくない。しかし、それはまったく現地のことを知らない人が、日本語でいいかげんなことを言っているだけということが、明らかになった。
香港で行われている世論調査では、民主主義を求める若者に対する支持はまったく下がっていなかった。だが、この事実は、なぜか日本のメディアで取り上げられることが非常に少なかった。
今回の選挙で、香港市民は民主派を圧倒的に支持していることが明らかになった。「デモによる暴力」を批判していた日本の識者の皆様には違和感がある結果だろう。筆者は、彼らに言いたいことがある。
筆者は、選挙の前に香港の「民主の女神」周庭(アグネス・チョウ)さんとSNSのメッセンジャーでやり取りをした。その際、強い印象が残ったのは、彼女が「私がこの運動が始まってからよく思うのは、民主主義と自由がある国の人たちが、自由のない生活を経験したことがないのに、『暴力はダメよ、支持しませんよ』というのは、ちょっと傲慢なのではないか」「私たちだって、暴力を使いたくないですよ」と言ったことだ。
この連載では、中国共産党が「香港の中国化」を目指し、圧力を強めることで、香港市民が自由を奪われ、暴力を使うことでしか民主主義を守る手段がないところまで追い詰められたことを、詳述してきた(本連載第213回)。
雨傘革命後、筆者がアグネスさんら民主派の若者たちに初めて会ったとき、彼らは「香港の選挙は『AKB48の総選挙』のようなもの。民主的に行われているように見えて、実は秋元さんが全部決めている。香港の選挙も中国共産党が全部決めている」と言い、この状況下では「暴力しかない」と訴えかけてきた(第116回)。
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「暴力はいけない」と言うのが浅はかすぎる理由
それでも彼らは、「デモで選挙制度は変えられなかったが、将来を自分たちで決めたいなら若者の政党をつくるべきだ」と訴えた。彼らは「活動家」から「政治家」に進化しようとした(第141回)。
そして、16年9月4日に行われた香港立法会選挙で、民主派の若者らが6議席を獲得した。彼らを含む「反中国派」全体で30議席を得て、法案の否決が可能になる立法会定数70議席の3分の1(24議席)以上を占める画期的な勝利となった。
しかしその後、彼らは中国を侮辱する言動を行ったとして、議員資格を取り消されてしまった。アグネスさんは18年4月の香港立法会議員の補欠選挙に、弱冠21歳の現役女子大生として立候補しようとしたが、当局によって立候補を差し止められた。
彼らの政治家になろうとする志は、香港政府とその背後にいた中国共産党によって、踏みにじられることになった。そして、この件に象徴される、中国共産党・香港政庁による民主派に対する一連の「弾圧」は、民主化運動の中心メンバーだけではなく、多くの若者を深い絶望に陥れ、「暴力」を肯定せざるを得ないところにまで追い込んだのだ。
この背景を理解することなしに、自由と民主主義を生まれながらに謳歌してきた人が、シンプルに「暴力はいけない」と言うのは、浅はかすぎると断ぜざるを得ない。もちろん、筆者も「暴力」は肯定しない。しかし、香港の「暴力」については、民主派の若者にまったく責任はない。彼らを徹底的に追い詰めた中国共産党・香港政庁にこそ、「暴力」の全責任があると、最大級の非難をしておきたい。
香港政庁・中国共産党が
区議会選挙の実施を恐れた理由とは?
香港区議会については、地域の法律や予算を決める強い権限は持っておらず、公共サービスや福祉といった地域の問題について政府に提言する諮問機関のような役割しかない。従って、今回の選挙の結果は、香港の情勢に大きな影響を与えないという人がいる。しかし、その見方は、正しいとはいえない。
香港政庁・中国共産党は、今回の区議会選挙を延期できないか、ずっと模索していたとされる。デモ隊と警察の衝突の激化で、選挙の安全な実施が困難だからと報道されることが多かったが、そんな単純な理由ではない。
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なぜ香港政庁・中国共産党は区議会選挙を恐れた?
香港政庁・中国共産党は、選挙当日になれば市民は皆、デモを行わず選挙に行くことを当然、予測できたはずだからだ。実際、衝突などまったく起きることはなく、整然と選挙が実施された。
香港政庁・中国共産党が本当に恐れたのは、今回の選挙結果が「香港行政長官選挙」に与える影響だ。香港行政長官は、不動産や金融など35業界の代表と立法会議員、区議会議員ら1200人で構成される「選挙委員会」の投票で選出される。
行政長官選挙に立候補するには「選挙委員」のうち、150人以上の推薦が必要であり、当選するには過半数の得票を得る必要がある。これまで、選挙委員は親中派が多数を占めてきたため、事実上民主派の候補者は立候補すらできない仕組みとなってきた。
しかし、選挙委員のうち区議会枠(総数117)は、区議会議員の互選で選ばれる。今回の区議会選挙で民主派が9割を占めたので、区議会枠は親中派から民主派に変わることになる。互選がどういう形になるかは不明だが、仮に117人の9割だとすると、民主派は105人いうことになる。
また、20年9月には「立法会選挙」が実施される。これは区議会選に比べて、民主派が躍進するには高い壁がある。定数70のうち直接選挙で選ばれるのは35議席だ。残る35議席は職業別代表枠で、間接選挙によって選ばれるが、ほとんどが親中派である。
その上問題なのは、直接選挙が「比例代表制」であることだ。区議会選は、勝者となる党派が実際の得票数よりも多くの議席を獲得する傾向にある「小選挙区制」だった。実際、今回の区議会選は、民主派が9割の議席を獲得したが、得票数は6割程度だったのだ。
「比例代表制」の場合は、シンプルにいえば6割の得票数だと、6割の議席を獲得することになる。仮に、民主派が今回と同程度の支持を集めたとすると、立法会選挙の直接選挙35議席中21議席の獲得にとどまる。定数70のうちの21議席なので、区議会の過半数には遠く及ばないことになる。
ただ、立法会議員はそのまま行政長官選挙の選挙委員となる。21人の民主派が立法会枠から加わることになると、選挙委員会1200人中、区議会枠と合わせて民主派は126人程度となる。すると、立候補者を出すために必要な選挙委員150人の推薦を実現するハードルが、かなり下がることになる。
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香港の状況を劇的に変えられる存在とは?
そして、ここまでハードルが下がってしまうと、中国共産党にとっての「不測の事態」が起こりかねなくなる。現在、親中派とみられる人たちも、民主化支持の世論を気にして、中国共産党と距離を置いているといわれる。
仮に22年の次期行政長官選挙の際にそのような状況になったら、選挙委員会の中から、親中派・民主派双方の幅広い支持を得られるような、開明的なリーダーが立候補して行政長官に当選し、中国共産党が香港の行政をコントロールできないという事態も起きかねない。だから、中国共産党は、そのきっかけとなる懸念がある今回の区議会選の実施を嫌がったのだといえる。
香港の状況を劇的に変えられるのは
「財界」である
しかし、それはあくまで中国共産党にとっての「不測の事態」であり、民主派にとっては「希望的観測」にすぎないだろう。リアリスティックに考えれば、香港の状況を劇的に変えることができるのは、「財界」である(第223回・P6)。
財界が民主派に寝返れば、行政長官選挙の「選挙委員」は民主派が圧倒的多数派になる。つまり、民主派の候補者しか当選できない制度に代わってしまうことになるのだ。
だが、アグネスさんに聞いてみたが、財界の動きは「分からない」という。財界について話題を振っても、反応が鈍い。おそらく、現在のところ民主派と財界の間に接点はないのだろう。財界は完全に親中派とみなされているので、民主派が安易に接触すると、動きが筒抜けになってしまう恐れがある。信用できないのだろう。
日本的な感覚で考えれば、民主派の若者の中に財界と交渉できるような「寝業師」はいないのかと言いたくなる。おそらく、いないのだろう。リーダー不在の「水の革命」(*)の難しさが露呈しているといえるのかもしれない(第214回)。
*香港出身のアクション映画スターであるブルース・リーが語った格言「Be Water(水のようになれ)」にちなんだ、今回の香港の民主化デモの通称。リーダー不在で臨機応変にデモ活動のかたちを変えることに由来する。
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香港財界を動かし得る米議会の法案
一方、財界側は民主派の抗議行動に対して、静観を貫いている。ただ、今回の抗議行動が始まって以降、中国共産党は、香港の民間企業に対する圧力を徹底的に強化している。例えば、中国政府はキャセイパシフィック航空に対して、デモにかかわった従業員を職務に就かせないように強く要求し、実際にデモに参加した操縦士2名が解雇された。また、同社のルパート・ホッグ前最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれ。キャセイパシフィックの元操縦士で立法会議員のジェレミー・タム氏も、同社を退社した。
英公共放送「BBC」のカリシュマ・ヴァスワニ・アジア経済担当編委員は、「キャセイの話は、香港でビジネスをする企業が、中国が何を欲するかを勘案しないとどうなるかを示す教訓といえる」と指摘する(BBC NEWS JAPAN「香港デモ、苦しむキャセイ航空 『会社が恐怖に包まれている』」)。だが、静観を貫く財界は内心、中国共産党に対する強い不満を募らせているという。なにか、起爆剤となることが起きれば、財界は動くかもしれない。
香港財界を動かす可能性を感じさせる
米議会の「香港人権・民主主義法案」
そして、財界を動かす可能性を感じさせるのが、米議会が可決した「香港人権・民主主義法案」だ。現在、米中貿易交渉が佳境を迎えている(第211回)。ドナルド・トランプ米大統領は法案に署名するかどうか、態度を明らかにしていない。
だが、仮にトランプ大統領が拒否権を発動しても、上下両院の3分の2が賛成すればこれを覆すことができる。この法案はすでに、ほぼ全会一致で可決されており、大統領が署名しなかった場合でも、問題なく成立するとみられる。
香港人権・民主主義法は、米国務省が年1回、香港の「一国二制度」が保証され、香港の「非常に高度な自治」が維持されているかを確認し、米国が香港に通商上の優遇措置という「特別な地位」を付与するのが妥当かどうかを判断するものだ。
もし、香港で人権侵害などが起きた場合、その責任者には米国の入国禁止や資産凍結などの制裁が科せられる。そして、通商上の優遇措置が撤廃されれば、香港は中国本土の都市と同じ扱いを受けることになる。
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香港財界には歴史的な決断を下してほしい
これは、ただでさえ不調に陥っている中国経済に大打撃を与えることになると指摘されている。中国では、資本取引が全面的には自由化されていない。中国の対内・対外直接投資の6?7割は香港経由である。また、08年から19年7月まで、中国企業が香港市場で株式新規上場し資金調達した金額は1538億ドルで、中国市場全体の3148億ドルの約半分である。さらに、中国企業が18年に海外市場で行ったドル建て起債1659億ドルの33%を、香港の債券市場が占めている(岡田充「米中代理戦争と化した香港デモ。アメリカの『香港人権法』は諸刃の刃になるか」Business Insider Japan )。
中国経済における香港の重要度は以前と比べると下がっているといわれるが、いまだに多くの部分を依存しているといえる。もちろん、香港への優遇措置見直しは、米国経済にもダメージを与えるものだ。
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だが、貿易戦争は双方が不利益を受けるものであり、問題はどちらにより大きな損害があるかだ。米中貿易戦争でより大きなダメージを中国が受けたように、香港が中国本土と同じ扱いとなれば、中国がより深刻な損害を受けることになると考えられる。
区議会選が終われば、中国共産党は再び全国人民代表大会常務委員会が前面に出て香港への関与の姿勢を強めるとみられていた。デモの鎮圧には、より強硬な手段が講じられるとの懸念も出ていた。だが、米国が香港人権・民主主義法を発動するかどうかは、中国共産党に対する極めて強いけん制となるだろう。
そして、香港人権・民主主義法が施行されれば、香港の財界は中国共産党に従属する「親中派」のスタンスを変えざるを得なくなるかもしれない。
香港に対する優遇措置が維持されなければ、民間企業はビジネスを続けることができない。しかし、前述のキャセイパシフィック航空のように、中国共産党からの圧力に屈する姿を米国に見せてしまうと、一国二制度は維持されていないとみなされて、米国が法律を発動する懸念が出てしまう。財界もまた、従来通り「親中派」のままでいいのか、難しい判断を迫られることになる可能性がある。
要するに、香港政庁・中国共産党と民主派の間で膠着状態が続く香港の抗議活動を動かせるとすれば、それは香港財界と米国ということになる。この連載では、次のように論じたことがある(第223回・P6)。14年の「雨傘運動」は、行政長官選挙の選挙委員会を親中派が占めて、民主派は立候補すらできない制度の理不尽さに反発して起きた。だが、香港財界が民主派を支持すると決断すれば、雨傘運動の若者たちが目指したものの大部分が、長い戦いの末に実現することになる。このことをあらためて強く主張したい。香港財界には、一国二制度を守るために、歴史的な決断を下してもらいたい。
(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
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