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消えゆく百貨店、生き残りに苦闘 「地域にゼロ」の県も
https://digital.asahi.com/articles/ASMCH6RKYMCHULFA02Z.html
2019年11月18日07時00分 朝日新聞
ショッピングセンターに改装される西武所沢店=2019年9月、埼玉県所沢市
経済インサイド
大都市はもちろん、地方でもある程度の規模の街の目抜き通りには店を構え、にぎわいの中心となってきた百貨店。しかし、郊外のショッピングセンター(SC)やネット通販の攻勢にさらされ、人口減や高齢化で顧客基盤が揺らいでいます。大手百貨店は地方・郊外店の閉鎖も相次いで打ち出しました。「よそ行きの買い物」をする場として親しまれた百貨店は、徐々に消えてしまうのでしょうか。
都心の店に客奪われ
「百貨店が複合型ショッピングセンターに生まれ変わります!」。東京のベッドタウンの埼玉県所沢市にある西武所沢店は14日、SC化してグランドオープンした。従来の百貨店は、個々のテナントの運営に百貨店の販売員が深くかかわり、包装紙も百貨店のものを使って店の統一感が高い。SCになると、個々のテナントから賃料をとって運営し、テナントごとの独自色が強くなる。
西武所沢店は西武池袋本店(東京都豊島区)から電車で30分ほど。品ぞろえが豊富な都心で買い物をする客が多く、「重複が悩みの種だった。所沢店が百貨店である存在意義は薄れていた」(そごう・西武の山田正樹執行役員)。
地元では西武所沢駅の駅ビルの存在感も増しており、そごう・西武は「何もしなければ下降曲線をたどるのが目に見えていた」(山田氏)とSC化に踏み切った。婦人服は高級ブランドを中心に一部残し、食品や化粧品は、百貨店らしい品ぞろえを維持する。それでも売り場全体の雰囲気は大きく変わる。
新たに入るテナントは、ビックカメラ、低価格衣料ブランドのジーユーや、手芸のユザワヤなど。専門店が売り場の75%を占める。SC化後の所沢店全体の売り上げは、以前の1割増を見込む。
そごう・西武は10月中旬、全国15店のうち、そごう川口店(埼玉県)や西武大津店(滋賀県)など5店を閉鎖するなどの大規模なリストラ策を発表。所沢店のSC化は、残される地方・郊外店のてこ入れ策の一つで、他の大都市周辺の店にもその手法を広げていく。
ベッドタウンの悩み
地方にある百貨店の店舗の苦境は、埼玉だけの現象ではない。同様に東京のベッドタウンの千葉の店も苦しんでいる。
三越伊勢丹ホールディングスは昨年3月、伊勢丹松戸店(千葉県松戸市)を閉店した。跡地には今年4月、新しい商業施設がオープン。家電量販のノジマなどがテナントとして入り、ショッピングモールに変わった。地元では百貨店の存在を惜しむ声も根強かったが、赤字続きの松戸店を三越伊勢丹が自力で残す余裕はなかった。
千葉県内では2016年以降、そごう柏店、三越千葉店と、閉店が相次いだ。県内で残る百貨店はそごう千葉店、東武百貨店船橋店、高島屋柏店のみだ。
ちばぎん総合研究所の下出直樹調査部副部長は「郊外のSCやモール、EC(電子商取引)の存在感が高まるなかで、都心へのアクセスがいい千葉では、百貨店ならではの品ぞろえが充実している都内店に行く県民も多く、県内では各エリアの一番店のみに集約されてきている」と分析する。
回復の見込みなく撤退
岐阜県大垣市。明治創業の呉服店が前身の百貨店、ヤナゲンは8月末、JR大垣駅近くで53年の歴史がある本店を閉めた。9月下旬には郊外店も閉じ、百貨店業から完全に撤退した。今後は不動産賃貸業だけを続ける。「百貨店業の毎年の赤字が何とか好転するように努力を続けてきたが、回復の見込みはなかった」(小林雄二・管理統括部長兼経営企画室長)
売り上げは1991年をピークに落ち、営業赤字を不動産賃貸業の利益で補っていた。百貨店業の先行きは見通せず、親会社のスーパー・平和堂(滋賀県彦根市)が従業員を引き取り閉店することになった。
本店はかつて商店街の中核だったが、今は若い世代は郊外の大型店で買い物を楽しむ。駅前でもスーパーやモールとの競争が激化し、大垣では「百貨店の存在意義はなくなってしまった」(同)。
大垣から電車で10分ほどのJR岐阜駅近くにある高島屋岐阜店(岐阜市)。岐阜の狭い商圏でヤナゲンと競ってきた。ヤナゲンの閉店は競争相手が減ったことを意味する。同社の外商顧客の一部は高島屋に移り始めているといい、さらなる獲得に向け営業を強化している。岐阜駅前で相次ぐタワーマンションの建設で地域住民が増えるのも追い風だ。
しかし高島屋岐阜店も苦しい。運営する岐阜高島屋は2019年2月期、2期ぶりに営業赤字に陥った。閉店時間を早めるなどのコスト削減で早期の黒字回復を目指すが、収益増に欠かせない「売り場改革」はなかなか進んでいない。
ライバルは「身内」にあり
ヤナゲンというライバルが一つ消えたところで、郊外の大型店やネット通販は依然として脅威だ。そして最大の脅威は身内にある。岐阜から大都市の名古屋までは電車でわずか20分ほど。高島屋の村田善郎社長は「最大のライバルは、(自分のところの)JR名古屋高島屋だ」というほどだ。
高島屋は10月中旬、港南台店(横浜市)の閉鎖と米子店(鳥取県米子市)の事業譲渡を発表した。村田氏は残る地方・郊外店について、「赤字と黒字をいったりきたりしているからと言って、即撤退はしない。地域のインフラ(社会資本)でもあり、存続に向けて手を尽くす」と強調する。
しかし比較的規模が小さい地方店の存続は容易ではない。高価格で中高年向けの百貨店の品ぞろえは90年代後半から支持されなくなってきた。地方では人口減による経済の低迷が拍車をかけている。
そごう・西武は10月中旬、地方・郊外店の大規模なリストラを発表し、そのなかには、そごう徳島店(徳島市)の閉鎖もある。来年8月末に同店が姿を消すと、徳島には百貨店が一つもなくなる。
テナント誘致で店舗活性化
百貨店の苦しさばかりが目立つ地方。ただ熊本市では、少し様相が異なっていた。中心部の商店街は、2016年の熊本地震からの復興を目指し、「負けんばい熊本」の看板が掲げられてにぎわう。
商店街の中核が地元の鶴屋百貨店(熊本市)。百貨店らしからぬ珍しい取り組みで注目されている。
昼過ぎ、館内の広場にはドレスに着替えた女性従業員が登場し、来店客にコーラスを披露する。車椅子の客には従業員が個別に買い物に付き添う。
総営業面積6万平方メートル超。「広さはローカルの強み」と久我彰登社長。その広さを、店舗をうまく使い分けて活用する。
本館には高級ブランドが軒を連ねる一方、東館などはSCのように東急ハンズやユナイテッドアローズなどをテナントとして積極的に誘致。幅広い客層の取り込みを図る。
高級店より利幅は小さいが値頃な価格が集客力を高める。「まずは顧客のニーズ。それに合わせてコスト構造を変えるのが小売りのやるべきことだ」(久我社長)。
同時に心がけているのが、百貨店ならではの「おもてなし」による手厚い接客だ。人件費はかさむが、コスト構造の改革で対応している。
今夏には人材派遣会社を設立。これまで雇用していたアルバイトや定年退職者ら30人ほどが登録している。同社から派遣された従業員は百貨店の催事などに携わり、百貨店の従業員は待機時間を少なくして複数の仕事を担う。効率的な従業員の配置につながっている。
地域密着に活路見いだす
コスト改革により、2020年2月期は3年連続で純利益を確保できる見込みだが、売り上げは2年連続で減少の見通し。熊本地震後の復興需要が一段落し、熊本でも地方経済の疲弊の影響は拭えなくなってきている。
地方経済総合研究所の小田正事業統括部門長は「(復興需要での)需要の先食いと人口減のダブルパンチで、県内消費は今後、下降曲線をたどるおそれがある」とみる。
人口減による経済の停滞に加え、地方でも浸透するネット通販が、百貨店でモノが売れない状況を加速させている。地方経済の地盤沈下が、熊本でも今後浮き彫りになってくるのは必至だ。
久我社長は強調する。「売り場で大切な人と時間を共有することで人間関係を深めるという百貨店の存在意義は、どんな時代にもなくならない」。コーラス部隊や、従業員が買い物客に着こなしやマナーなどを講義する「鶴屋ラララ大学」など、地元百貨店ならではの親しみやすさや、客との距離の近さに磨きをかけ、生き残りに挑む。(佐藤亜季)
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